2000年09月12日

農業少女

野田マップの番外公演「農業少女」観劇。

一人の農家の少女が田舎から東京に出てきて、色々な経験の末に農業に戻り、そこで失意のままに死んでしまう、という内容。これに中年男性の少女への恋、日本人のファッション気質、ファシズムなんていう要素を絡ませている。

ドラマチックな人生などない、というある種普遍的な原則を農業に喩え、そこを脱することを望んだ少女が結局不幸な結末を迎えてしまうという、野田演劇には珍しい救いのないというか、暗いストーリーだった。

少女役の深津がこの舞台では非常に健闘していて、舞台としては見応えがあった。また、毎度注目される小道具は、今回は携帯電話。これを色々な場面で繰り返し登場させ、効果をあげていた。

狭い劇場という番外公演の最大の特色を上手に料理し、客いじりを頻繁に使うことによって場内全体に緊張感を生み出していたのは、まさしく野田が企みどおりだったのではないか。笑いの一方で観客を「いつ自分がいじられるか」という緊張感の中におき、そこから徐々にシリアスな中盤に移行、さらに悲劇的な終盤へと非常に円滑に舞台は進行する。ストーリー的には賛否が別れるところだが、演出という点ではかなり高く評価されるのではないか。また、この劇を通して、「商業演劇ではなかなか実現が難しく、それでいて野田がやりたいこと」というのが明確になっていると思う。

ストーリー展開は、序盤で結末を提示し、そこにいたる道筋を徐々に説明していく、というもので、これが最近の野田作品によく見られるパターン。これは複雑なストーリー展開によって「難解」と評されてきた野田の大衆への回答なのかも知れないが、「またか」という印象を持たないわけではない。それが「マンネリ」と否定的に受け取られるのか、野田作品の言葉遊びと同様、「定番」と好意的に受け取られるのか、そろそろ明確になる時期かも知れない。  

Posted by buu2 at 22:43Comments(0)TrackBack(0)演劇││編集