2001年08月21日

どちらかが彼女を殺した

東野圭吾強化月間最終回は「どちらかが彼女を殺した」。三角関係のもつれからの殺人事件。容疑者は三角関係の当事者。本編では最後まで真相が語られず、伏線をもとに読者が推理するという趣向。コンセプトは面白いと思うのだが、まず物語の設定に無理があり過ぎて、「?」という感じ。被害者のお兄さんの行動に対してさっぱり感情移入できないのだ。また、コンセプトを重視するがために物語りにも無理が生じている印象。なんか、いかにも「悩んでくれ」という感じの作り。実はこの本、ハードカバーと文庫本では内容が少し違うらしい。ハードカバーでは一切の真相が語られないが、決定的なヒントが記述されている。文庫版はそのヒントが削除され、代わりに巻末に袋とじの種明かしが入っている。僕が読んだのは文庫版だけど、袋とじを開くのが前提になっている本の作りには疑問を感じざるを得ない。評価は☆。  

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2001年08月07日

名探偵の掟

東野圭吾「名探偵の掟」読了。

97年のこのミスで非常に高く評価されている作品である。様々な雑誌で紹介された短編を集めたものだが、それぞれ、本格推理小説の作者、作品、読者等を笑いにくるんだ針でちくりちくりと刺すような、ブラックユーモア作品集である。密室、アリバイ崩し、ダイイングメッセージといった推理小説の代表的な手法を揶揄することによって、作者の本格推理小説に対するシニカルな視点を垣間見ることができる。小品ばかりで、読みごたえという点ではイマイチだが、通 勤の際に軽く読むことのできる好著である。☆半。  
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2001年08月06日

秘密

東野圭吾「秘密」読了。

交通事故で大怪我を負った親子。母親が死ぬと時を同じくして奇跡的に意識を回復した娘。しかし、その精神は母親のものだった・・・。という、ありがちな絶対不可能設定小説。この不可能な設定をきちんと読ませていくところがこの作者の力量だが、残念なところも多々ある。出だしはともかく、主人公の性格設定がかなり特異で、設定と同様、「そんなことあるか??」と思わざるを得なかったりする。そういう点がとても引っ掛かり、序盤で、「うーーーん、なんか、つまらん」と感じてしまった。しかし、そこはもともと読ませる力のある作者だから、徐々に小説の中に引き込んでくれる。そして、無理な人物設定がだんだん気にならなくなって、さて、それからどうなるんだろう、と思ってるところで、「おいおい、そんなラストはないだろ?」という展開になる。読みはじめた直後から、「ラスト、こういうことになったらゴミ箱に投げ捨てるぞ」と思っていた展開。うわーーーー、それだけはやめてくれっ!!! そして、最後に明かされる一つの秘密で、小説は終わる。

全体のストーリー展開はとても良いし、感動的でもある。これが東野氏のデビュー作だったらば拍手喝采である。しかし、この小説は東野氏が小説家としてかなり名をあげて、色々な作品を世に送りだした後のものである。そう考えると、あちらこちらに「うーーーん」と思ってしまう部分があるのが何とも残念である。加害者の家庭との関わりや、ラストの時計屋からホテルに向かうタクシーの中のシーンの描写等々。クオリティがでこぼこで、「優」と「可」がかわりばんこにあらわれる、そんな印象の小説である。

一番の救いは、それほど長い小説ではない、ということ。同時期に書かれたレディジョーカーや理由といった超大作と同じような分量 でこの内容をやられていたら、やっぱり「ううううう」って感じだったと思う。

それで、この本はゴミ箱には行かず、ちゃんと本棚に収納された。評価は☆☆。  
Posted by buu2 at 12:23Comments(0)TrackBack(0)読書││編集

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