これまでの数日、自民対民主ではなく、小泉自民対造反組という構図での対決が報じられ続けていたが、ここへ来てようやくちょっと落ち着いてきた感じである。それはTBSの馬鹿番組「きょう発プラス」の見出しが「親友が語る杉田かおる離婚事実」とか、「母に若貴は」とか、番組の知的レベルにお似合いのくだらないものになっていることでわかる。
さて、その自民対造反組の対決を見ていてふと思ったのは、亀井氏は東京1区(千代田区、港区、新宿区)からの出馬だったらば、果たして郵政民営化に反対なのか、ということである。恐らく、亀井氏のみならず、造反議員のほとんどが大都市部での選挙戦であれば、自民党の公認を振り切ってまで郵政民営化には反対しなかったはずだ。このブログでは何度も書いているが、政治家の行動原理は「選挙で勝つこと」である。大都市部では郵政民営化反対では勝てない。
はからずも、先日アップした「
ホリエモン、何故か自民党本部で出馬表明」というエントリーで「自分の選挙区じゃないからどうでもいいけど」と書いたら、DKさんから「となると、憲法43条はやはり地域代表と読むってことかな?」というコメントがついたわけだが、現実問題として、日本の政治家の多くは地域代表といってさしつかえがないと思う。一方で憲法43条の記述は下記の通り。
参考:
第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
ここで書かれている「全国民を代表する選挙された議員」を、現行の選挙で果たして選出できるのだろうか。
国家としての行政を考えた場合、特定地域や特定産業の利益の延長線上には必ずしも国家としての利益は存在しないはずである。例えば全国くまなく新幹線や高速道路が整備されることと、外環道や圏央道など首都圏の慢性渋滞を解消を目的とした対策を急ぐことでは、優先順位をきちんとつけることが可能である。渋滞に並ぶことによって車1台あたり30分が失われるとして、そこに並ぶ車が10万台いればトータルで5万時間が浪費される。この5万時間がそっくり生産性のあることに利用される保証はないが、仮に30%が生産に利用されるとして、1時間あたりの平均付加価値額を2000円と仮定すれば3000万円が失われることになる。まぁ、これは仮定に仮定を重ねているので完全な机上の空論だが、それでもやはり、地方に高速道路を整備するくらいならもっと他にやることがあるはず。
しかし、現実には地元利益誘導型の選挙が当たり前になっている。これは今回の選挙に関して政治評論家が「落下傘候補は地盤がないのがマイナス要因」と述べていることからも明らかだ。評論家諸氏の指摘が的外れというのではない。それが当たり前になっている日本の状況が異常なのではないか、ということである。地元の利益を考えるのは本来自治体の首長の仕事ではないか。
現在の日本は、選出、再選を求める地元利益誘導型議員と、地元利益を優先する生活者の両者の相互作用によって堅固な地元利益誘導型選挙を形作っている印象だ。そして、それを誘発しているのが今の選挙制度ではないか。
地元利益誘導を解消する方法にはいくつかの方策が考えられるはずで、例えば出身都道府県からの出馬禁止、連続しての同一都道府県からの出馬禁止など、地域との癒着を分断することがぱっと思いつく。
「選挙民が地元の利益ばかり考えて近視眼的になっているから国政が良くならない」
という考えを僕は持っているが、これは地元との関係が薄い都市部住民が地方住民に対して抱いているものだと思う。この考えが典型的であるかどうかは不明だし、実際確認したこともないのだが、北海道の田舎に利用されもしない高速道路が中途半端に建設されていることが全国ネットの番組で放送されたりしている状態をみるにつけ、それほどマイノリティでもないのではないかと想像する。
しかし、選挙民達は自分達の生活が豊かになることを希望しているのだから、まず自分達の利益を考えるのは当たり前のことで、結果として「まずは国家としての財政再建を」という考えにならないのも仕方がない。また、政治家は地元の声を聞く必要がないのかというとそうではない。あくまでもバランスの問題で、そのバランスが地域に傾きすぎているのではないか、ということだ。地元の声は選挙で選ばれてから吸い上げることだって可能なはずで、それは国のあり方を考えた上でのことであっても良いはずである。
もちろん地域偏重に手をつければ次に浮かび上がるのは特定業界との癒着となるはずで、地域との癒着だけを解消すれば逆にアンバランスになる可能性もある。また、同時に今回顕著になった「著名人偏重」というカラーもより鮮明になっていくことが予想される。このあたりはこういうジャストアイデアではなく、きちんとした検討が必要だろう。
落下傘候補に対しても色々な意見があるようだが(僕個人としても料理研究家、しかも
自分で「私が立候補して万が一にも当選しても政治家として使いものになるのは少なくとも10年は勉強してからではないかと思います。」と書いているような人を出馬させるのはどうかと思うけど)、その良し悪し以前の問題として、選挙のあり方の良し悪しが浮かび上がってきていると思う。今回の選挙は政界再編のきっかけになると言われているが、政界を支えている選挙制度そのものについて、国民がきちんと考え直す機会にもなるはず。「造反議員に対するいじめだ」とか「有名人を担ぎ出すだけでいいのか」といった話に矮小化して好き嫌いで論じるのではなく、この機会を見過ごさずに選挙制度そのものについても議論を深めていく必要があると思う。
以下、個人的備忘録。
1.参議院廃止
2.衆議院比例区廃止
3.衆議院小選挙区は定員200人程度
4.同一地域からの複数選出不可
5.投票義務化(白票可)
6.インターネットによる選挙活動解禁
付録1.国民投票制度導入