こんなニュースが舞い込んできて、びっくりした。
かもい岳スキー場、管理者が破産申請
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/281688
かもい岳と聞いてすぐにピンとくる人は競技スキーに興味のある人に限られるだろうが、このスキー場は知る人ぞ知るアルペンスキーのメッカで、平昌五輪日本代表になった石井智也を筆頭に、数多くのアルペンレーサーを輩出してきた名門である。このスキー場の管理運営を受託していたのがかもい岳レーシングの主宰、斉藤博氏である。
もともとかもい岳スキー場は歌志内市の市営スキー場だったのだが、自前での運営が困難になり、斉藤氏の会社が管理運営を受託していた。
斉藤博氏とは僕が学生の頃からの知り合いで、かれこれ30年以上の付き合いである。
「なぜ?」という思いだが、管理者が破産したのは自転車操業状態にあって、経営が一層苦しくなったことによるようだ。負債額はそれほど高額ではないので、運営停止にまつわる給与や一時金の支払い原資が中心なんだと思う。では、なぜ運営を停止するのか。どうやら、老朽化が進んだリフトのメインテナンス費用が大きくなりすぎたらしい。加えて、数年後には架け替えが必要で、そのための資金確保の目処が立たないのだろう。
斉藤氏の本業はレーシング・スキー・チームの運営だったのだが、歌志内市がスキー場と、隣接する宿泊施設「かもい岳温泉」の維持・管理会社を募集した際に手を挙げて、運営者に名乗りを上げた。ただ、当時からスキー場の経営は苦しかったようだ。それでもなお火中の栗を拾うようにして運営会社となった背景には、かもい岳スキー場の存続を強く願う気持ちがあったと想像している。
僕は靭帯を切ってゲレンデに立つことができなかった一年を除いて、18歳から昨年までずっとこのスキー場で練習を続けてきた。その間、いろいろな角度から歌志内市を見てきたけれど、確実に言えることは、現在の歌志内市にはスキー場以外の税収増につながる産業がないということ。
歌志内市は最大4万6千人いた人口も激減し、平成31年2月末で3252人、うち、65歳以上の比率は50.68%である。
この状況でスキー場が閉鎖すれば、約50人の雇用が失われるだけでなく、再建の手段をほぼ失うことになる。
昔からの馴染みのスキー場がなくなるというのは個人的には大ショックだが、同時に、ひとつの市が、その寿命を終えつつあることにもショックを受ける。歌志内市の若者たちはこれで良いのだろうか。座して死を待つのみ、ということなんだろうか。
僕は数年前に歌志内市の市役所で、職員向けに講演をしたことがある。その縁もあって、歌志内市の再建に向けた方策をざっくり考えたことがある。スキーしかないならスキーで頑張るというのも一つの手だが、税収アップの手段は他にも考えられる。
それは大体こんな感じだ。
歌志内再生プロジェクト
法人市民税無料
法人税を無料にして、とにかく会社を誘致して、人口を増やす。帳簿上の会社になると意味がないので、一定の条件は必要。
マンション建築
雪かきの必要がないマンションを建てる。
砂川、札幌までのバス開通
片道1000円ぐらいで札幌まで行けるバスを運行する。スキー場と砂川駅の間にシャトルバスを運行する。
市内高速インターネット
LANを整備する。
石炭利用による陶芸村
スキー産業の振興
コストコ誘致
法人税の無料化を活用して、大きな郊外型ショッピングセンターを誘致する。
データセンター、コールセンター誘致
市内巡回バス
車椅子でも利用できる市内循環バスを整備する。
Uber解禁
近隣市と連携しつつ、Uberを誘致する。
地域振興券
ふるさと納税に連動する形で地域振興券を発行する。
ゲイカップルの結婚認可
同性の結婚を認める。
バリアフリー
障害者が1人でも外出できるように、市内のバリアフリー化を進める。
新規事業のフィージビリティスタディ
市外の企業が新しい事業を始める時の、モデル地域にする。各戸をネット化し、電子投票が可能にする。遠隔治療の実証実験などにも立候補する。
英語の第二公用語化
もちろん、できることとできないことがあるだろうし、できないことの方が多いかもしれない。できることも、いろいろな障害があるだろう。とはいえ、これくらいやらなければ、日本全体でも出口が見つからない少子高齢化への対応は不可能だろう。
幸いにして(?)、背に腹はかえられないという状況がある。やるかやらないかは市長と市議会次第である。ただ、やらない可能性は高いと感じる。もし市が「歌志内市には絶対にスキー場が必要。そして、スキー場の維持のためには、もっと市に人間を呼び込んで、人口を増やさないと」と考えているなら、多分、斉藤博氏は、何はともあれ、頑張ったはずである。彼にとって、シーズン途中での閉鎖は、異例中の異例なのだ。
歌志内市の将来は、一年後の選挙で選ばれる市長の手腕次第である。