2005年07月13日

ラーメンビジネスの一側面に関する会話ver.2

面白い話だけどコメント欄を使っていると分かり難くなる(記述できる文字数に限界があるので)のでこっちに掘り起こします。もとのやり取りは「げんこつ屋ランドマーク店」です。(6月27日)

追記(7月13日)
たくさんコメントがついたので追記して、さらにそれに対してコメントしました。
あらすじ
元ネタで僕の記述の概要は「げんこつ屋のランドマーク店に行ったけど、結構美味しかった。渋谷東急文化会館横の店は駄目だったけど」と記述。

これについてうらかわさんが「文化会館の店はもうなくなりました」と記述。

以下、コメント欄から抜粋。なお、会話の相手の「しうさん」を勝手に紹介するとこんな感じ。
ラーメン博物館が主宰していたBBS「ラーメンネット」で活躍。並行して90年代前半に活発に活動した「ラーメンメーリングリスト」の主要メンバー。テレビチャンピオンの第4回ラーメン王選手権で石神氏に決勝で敗退するも、その後も各種メディアで情報を発信。ラーメン博物館の広報担当を経て現在もライターとして活躍中。しうさんのサイトはこちら→「しうの電脳麺記」

<ブウ*>
あぁ、やっぱりなくなったんですね。

でも、こういってはなんですが、あの店はなくしたほうが良かったかも。ちょっと、げんこつ屋のイメージを落とすような店でした。
<しうさん>
文化会館の店は、もともと立ち食いそば屋のあった店舗でしたからね。
真っ当なラーメン店のレイアウトを取るには狭すぎましたね。
<ブウ*>
物理的に制約があったということになると、そこでの出店を許した本部側の見識が疑われることになるわけですが。少なくとも、ランドマーク店レベルだったら十分に「良くやってるな」という感じでした。客数を考えれば渋谷の方が多かったでしょうから、あっちで食べて「げんこつ屋って駄目ジャン」って思われてしまったらげんこつ屋にとってもダメージがあると思うんですけどねぇ。

まぁ、僕は経営者じゃないからどうだって良いんですが。
<しうさん>
まあ本部の見識と言うなら、佐野実が有名になる前のあの時代に
あれだけのブランドイメージを作っておきながら、ロードサイド
FC店舗の大量展開に走った時点で充分疑われる訳です【笑】。

ラ博勤務時代、先輩や上司と「考えてみりゃ、げんこつ屋はご当人
ラーメンの走りだったよなあ。東京代表とかじゃなく、別の売り方を
展開すべきだったな」と慨嘆したのはもう4年くらい前です。

おなじく、折角のブランドイメージを無駄使いしてしまったのが
「むつみ屋」だと思ってたりします。
<ブウ*>
>FC店舗の大量展開に走った時点で充分疑われる訳です

確かにその通りなんですが、純粋に経営トップの利益だけを考えると、こっちで正解だったんじゃないでしょうか。人一人が得られる人件費の最高額の目安はイチローの5億円ぐらいという奴だと思います。では、それ以上のお金を稼ぐにはどうしたらいいかって、やっぱり大量に生産して大量に販売することです。

まぁ、ラーメンオタクの僕達からすると、何らメリットはないわけですが(^^;

>折角のブランドイメージを無駄使いしてしまったのが「むつみ屋」

全く同意です。香月とか。予備軍としては勝丸、一風堂、山頭火・・・

こういう話、どこかに発表したんですか?面白い話だと思うのですが(^^
<しうさん>
>それ以上のお金を稼ぐにはどうしたらいいかって、
>やっぱり大量に生産して大量に販売することです。

「げんこつ屋」の軒数からすると、微妙な線ではないかなと見ています。天下一品とかラーメンショップ、花月のように100店舗超ともなると完全にスケールメリットが出るでしょうが、「げんこつ屋」だとおそらく首都圏に10〜20店舗の間くらいかな? 「ハイレベルご当人ラーメン」路線を貫き、店主の「格」も前面に押し出せた場合の有形無形のメリットと比較すると、どっちに天秤が傾くか、ちょっと判りませんねえ。

>全く同意です。香月とか。予備軍としては勝丸、一風堂、山頭火・・・

この中では、もっとも巧く展開してるのはやはり一風堂。最近は出店ペースを抑え、ブランドの使い減りを極力防いでるように思います。また全店直営なのも他のチェーンとは一線を画してますね。更に最近では、「一風堂で修行した弟子の店」が多く出てきています。資本的には全く別なので「一風堂の展開」ではありませんが、「あの店の師匠」として「店を出さずにブランドを浸透させる」のに役だっているように思います。

※この弟子の店が、それぞれなかなか出来がいいんですわ。

こうやって一風堂ブランドを保持しつつ、上海への展開や、五行を着実に育て上げたり。河原さんのビジネス手腕はラーメン店主の中では出色です。

>こういう話、どこかに発表したんですか?面白い話だと思うのですが(^^

一風堂とは逆に、むつみ屋がどんなに無駄にブランドをすり減らせてしまったか、については自分の日記にちょいと書きました。今年の5月20日分。よろしければご覧下さい。どっちかと言えば「論」ではなく「慨嘆」ですが(^_^;)。


で、ようやく前振り終了(笑)さて、本文。

>「ハイレベルご当人ラーメン」路線を貫き、店主の「格」も前面に
>押し出せた場合の有形無形のメリットと比較すると、どっちに天秤
>が傾くか、ちょっと判りませんねえ。

しかし、今となっては前者に戻るのはちょっと困難ですよね。となると、一定のクオリティを維持しつつ、さらに拡大するというのが残されたルートでしょうね。

>この中では、もっとも巧く展開してるのはやはり一風堂。

一風堂のラーメンって、クオリティコントロールの難しいラーメンですよね。ラ博に良く食べに行っていた頃でも、「今日は調子が悪いな」と感じることが多々ありました。逆に横濱家なんていうのも最近徐々に増やしつつあるみたいですが、こっちはクオリティコントロールがかなり楽な部類だと思います。つまりは、豚骨寄りになるとコントロールが難しくなり、鶏が全面に出てくるとコントロールが簡単になってくるのかな、と。その一番顕著な例が天一なわけで(でも、できの悪い店は結構あるけど)。

で、そのQCの難しいラーメンできちんとやっているというのはなかなか大したものです。ただ、クイーンズスクェアの一風堂はいただけなかったですけど。

>河原さんのビジネス手腕はラーメン店主の中では出色です。

なるほど。考えてみれば僕は息子さんのラーメンは食べたことがあるけど、河原さんのラーメンは食べたことが無いのかな?

>一風堂とは逆に、むつみ屋がどんなに無駄にブランドをす
>り減らせてしまったか、については自分の日記にちょいと
>書きました。

読みました。なるほど。まぁ、最近のラーメン店の良し悪しは、ラーメンパークに出店しているかどうかで大体察しがついてしまいますね。でも、場所さえ良ければそれなりに客が入って、食べた客もそれで満足して帰っているんだったら別にそれでも良いんでしょうね。「あんなのが美味しいと思っているんですか?こっちを食べてみてください」とわざわざお客さんを誘導して、自分の贔屓の店を行列店にする義理はないわけで、って、これは僕の以前からのスタンスで、しうさんとはちょっと違う価値観なんでしょうが。

以下、7月12日のコメント
<しうさん>だいぶ間が空いてしまってすいません。鶏ガラと豚骨、どっちがクオリティコントロールがしやすいかは作り手じゃないと判らないけど、どっちかと言うと「セントラルキッチンを採用するか」と「化学調味料をどう使うか」の方が大きな要因じゃないかと思います。

>これは僕の以前からのスタンスで、しうさんとはちょっと違う
>価値観なんでしょうが。

ああ、これは違いますね【笑】。ブウ*さんの場合は、あらゆる要素よりもとにかく「いかに自分が美味しく食べるか」を最優先してるんじゃないかと思います。これは、T1で一緒にやってた頃から変わらない。その為には、店の造作とか店員のサービスよりも、とにかくラーメンの味が優先ですよね。

私は、自分を「ラーメンの応援団」だと思っています。美味い店を多くの人に知って貰えれば、世間のラーメンに対する認知・評価は上がるし、人々がラーメンにより多くの期待をするようになれば、客・店ともに幸せになれるだろうなと。別に無償奉仕とかボランティアではなく、折角こんなに面白い業界なんだから盛り上がって欲しい訳です。

「自分が美味い物を食う為に、より遠回りの種まきからしてる」とも言えます【笑】。

一つ、肝心な所を書き忘れた。

>しかし、今となっては前者に戻るのはちょっと困難ですよね。
>となると、一定のクオリティを維持しつつ、さらに拡大すると
>いうのが残されたルートでしょうね。

「げんこつ屋」ブランドの再生は困難でしょう。ブウ*さんが示したのが最も無難なルートだとは思うけど、(もし店主にやる気があるなら)セカンドブランドを建てると言う方策は充分「有り」です。

もともとコダワリ標榜のイメージはあるから、「こだわり麺匠 真・げんこつ屋【仮名】」を作れる素地はあると思います。基本はあのままに、素材・内装・イメージ戦略・サービスを徹底的に磨き上げればかなり勝ちの目はあるんじゃないかなあ。 

ついでに。

「再生困難になったブランドはそのまま維持し、後継ブランドで高級感を出す」と言うのは、まさに「むつみ屋」→「竹麓輔商店」がとった戦略です。「一風堂」→「五行」もそれに近い。

が、高級感を出すべき新ブランドをヴィジュアルジャパンのドサ周りに差し出すなんて、一体何を考えているのかと(^_^;)。その点「五行」は、漠然とした「高級感」だけでなく、明確な「酒の飲めるラーメン店」と言うコンセプトを堅持してます。やはり河原さんはただ者じゃないです。


>鶏ガラと豚骨、どっちがクオリティコントロールがしやすいか

僕が「QCが楽」と書いたのは、豚、鶏の素材としての品質の安定度から書きました。調理するにあたっては煮立てないスープよりも煮立てたスープの方がコントロールが楽だと思いますが、同じように煮立てるのであれば豚と鶏とどっちが楽なのかはちょっとわかりません。ちなみにどちらも、自分で作ってみての感触ではなく、お店で食べていての感触です。

QCの視点からすれば、セントラルキッチンは一番確実なはず。それでも、天一みたいにうまい、へたは厳然として存在するわけですが。こちらはスープをマニュアルどおりに作っているかどうか、あるいは麺の湯切りが適切かどうか、あたりがポイントなんでしょうね。

>「いかに自分が美味しく食べるか」を最優先してるんじゃないかと思います。

そうですね。自己中心派なので(^^ ただ、僕の持っている情報のかなりの部分までは発信しちゃってますけどね。

>自分を「ラーメンの応援団」だと思っています。

僕の場合、こういう視点は皆無だからなぁ(^^ ラーメン屋さんを応援することはあっても、「ラーメンという食べ物」を応援しようと思ったことがない(^^;

>基本はあのままに、素材・内装・イメージ戦略・サービスを徹底的
>に磨き上げればかなり勝ちの目はあるんじゃないかなあ

最終的にはやる気の問題ですね。でもまぁ、河原さんの成功事例があるわけで、それをきちんと評価・分析するだけの才覚があれば、動き出すでしょうね。

>ヴィジュアルジャパンのドサ周りに差し出す

わざわざむつみ屋じゃなくて竹麓輔商店をお台場に持っていったのはなんでなんですかね?あのあたりって、もう大崎さんはかんでないんですか?何も言わなくてもVJと大崎さんはつるんでるんだと思っていたんですが(^^;

#最近業界情報に疎いもので・・・・

まぁ、ラーメンコンプレックスはどこも大体ろくでもないので、空港にある食堂とか、サービスエリアにある食堂とかと同一視していて、どうでも良いといえばどうでも良いんですが(^^;

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この記事へのコメント
たしかに斬新な切り口の面白い話です。記念足跡。ペタリ♪
Posted by e- at 2005年06月28日 17:18
かなりマニアックな会話ですけどね。

昔のMLはこういう会話を普通にできたのだけれど。しうさんも、早いところブログを立ち上げてくださいよ。そうすれば、トラックバックベースで会話が出来るから。

時代はML→BBS→BLOGと移ってますよ(^^
Posted by buu* at 2005年06月28日 22:55
だいぶ間が空いてしまってすいません。鶏ガラと豚骨、どっちがクオリティコントロールがしやすいかは作り手じゃないと判らないけど、どっちかと言うと「セントラルキッチンを採用するか」と「化学調味料をどう使うか」の方が大きな要因じゃないかと思います。

>これは僕の以前からのスタンスで、しうさんとはちょっと違う
>価値観なんでしょうが。

ああ、これは違いますね【笑】。ブウ*さんの場合は、あらゆる要素よりもとにかく「いかに自分が美味しく食べるか」を最優先してるんじゃないかと思います。これは、T1で一緒にやってた頃から変わらない。その為には、店の造作とか店員のサービスよりも、とにかくラーメンの味が優先ですよね。
Posted by しう at 2005年07月12日 12:33
私は、自分を「ラーメンの応援団」だと思っています。美味い店を多くの人に知って貰えれば、世間のラーメンに対する認知・評価は上がるし、人々がラーメンにより多くの期待をするようになれば、客・店ともに幸せになれるだろうなと。別に無償奉仕とかボランティアではなく、折角こんなに面白い業界なんだから盛り上がって欲しい訳です。

「自分が美味い物を食う為に、より遠回りの種まきからしてる」とも言えます【笑】。
Posted by しう at 2005年07月12日 12:33
一つ、肝心な所を書き忘れた。

>しかし、今となっては前者に戻るのはちょっと困難ですよね。
>となると、一定のクオリティを維持しつつ、さらに拡大すると
>いうのが残されたルートでしょうね。

「げんこつ屋」ブランドの再生は困難でしょう。ブウ*さんが示したのが最も無難なルートだとは思うけど、(もし店主にやる気があるなら)セカンドブランドを建てると言う方策は充分「有り」です。

もともとコダワリ標榜のイメージはあるから、「こだわり麺匠 真・げんこつ屋【仮名】」を作れる素地はあると思います。基本はあのままに、素材・内装・イメージ戦略・サービスを徹底的に磨き上げればかなり勝ちの目はあるんじゃないかなあ。 
Posted by しう at 2005年07月12日 15:09
ついでに。

「再生困難になったブランドはそのまま維持し、後継ブランドで高級感を出す」と言うのは、まさに「むつみ屋」→「竹麓輔商店」がとった戦略です。「一風堂」→「五行」もそれに近い。

が、高級感を出すべき新ブランドをヴィジュアルジャパンのドサ周りに差し出すなんて、一体何を考えているのかと(^_^;)。その点「五行」は、漠然とした「高級感」だけでなく、明確な「酒の飲めるラーメン店」と言うコンセプトを堅持してます。やはり河原さんはただ者じゃないです。
Posted by しう at 2005年07月12日 15:16
>わざわざむつみ屋じゃなくて竹麓輔商店をお台場に持っていったのは
>なんでなんですかね?

おそらくですが、さすがに「むつみ屋」ではもう一般客にも
有り難みが無いからでしょう。全国で100軒超を展開するチェーン店
ですから。対して竹麓輔商店は、多分今は10軒弱じゃないかな。
仮にも社長名がついてるし、アピール度は上でしょう。

>あのあたりって、もう大崎さんはかんでないんですか?
>何も言わなくてもVJと大崎さんはつるんでるんだと
>思っていたんですが(^^;

私の知る限りでは、「泉ヶ丘ラーメン劇場」と「仙台ラーメン国技場」の
立ち上げ段階に協力した以降は直接プロデュースとかアドバイザーは
やってない、と思います。
Posted by しう at 2005年07月13日 13:54
>まぁ、ラーメンコンプレックスはどこも大体ろくでもないので、
>空港にある食堂とか、サービスエリアにある食堂とかと同一視
>していて、どうでも良いといえばどうでも良いんですが(^^;

こういう風に見切っている人ばかりなら、本当にラクなんですがね、
応援団としては【笑】。一般には、企画元がどこであろうと、
コンプレックスが出来れば多くの人は「俺の街にもラ博が来たぞ」と
思います。で、喜んで食べてみると、出て来るのはアレとかアレとか
アレとか。

「何だよ、日本中の美味いラーメンを集めてこの程度かよ」と
思われると、世間のラーメンに対する期待度は低下しますよね。
これまで多くの人が頑張ってきた成果を踏みにじりかねないんですよ、
今の一部のコンプレックスは。
Posted by しう at 2005年07月13日 13:57
>直接プロデュースとかアドバイザーはやってない、と思います。

なるほど。そうでしたか。ラーメン関連のプロデューサーとして活躍しているので、その後も色々面倒見ているのかと思っていたのですが。日向屋とか、いかにも関係ありそうな店とかがあったし。

>喜んで食べてみると、出て来るのはアレとかアレとかアレとか。

まぁ、個人的なメルクマールとしては、まず柿岡やが入っていたら完全にNGワード(^^; 食べたことないけど山小屋もNGワード(って、すごい偏見だな(^^; 近所の複合施設に出展しているんですが、もう見た目が完全にアレなので(^^;)いち彦じゃんあたりも怪しい。というか、ひかり町にある店はほとんど全部怪しいんですが(笑)
Posted by buu* at 2005年07月14日 02:00
TBありがとうございます。
こういう話題って面白いですよね。
自分が経営者側だから、余計にそう思うのかも知れませんが。
これからもよろしくお願いします。
Posted by 渡辺樹庵 at 2005年07月29日 17:13
はじめまして(^^

色々とお噂はお伺いしているのですが、残念ながら行列店が嫌いで(というか、行列までしてラーメンを食べたいと思わないので)いまだ渡辺さんのプロデュースしているお店で食べたことがありません(^^;

でも、今度頑張って食べてきます(^^
Posted by buu* at 2005年07月30日 15:27