つい先日米国食肉輸出連合会の電波広告について書きましたけど、またやってくれましたね。25日付け朝日新聞12面に全面広告。たくさん書くとまた電波といわれると思ったのか、今度は非常にシンプルなものです。
で、これを読んで思ったのは、米国食肉輸出連合会の人たちは、本当に馬鹿で気の毒な人たちなのか、あるいは日本人は本当に馬鹿だと考えている人たちなのか、どちらかだな、ということ。もしかしたら本気でこういう主張が通ると思ってるのかもしれないと思うと、怒りよりも哀れみを感じます。
今回の論旨は、「41万頭検査したけど、BSE牛はたった1頭。この感染率は日本と同程度」というもの。一見して「なるほど、統計学的に言ってそうなのかな」と勘違いする人もいるのかもしれませんが、ことはそんなに単純ではありません。それは、その41万頭が無作為抽出でない可能性があるということ。ちょっとよろよろしているな、と思ったら対象外、ちょっとずさんな飼育をしている施設は対象外、ちょっと肉骨粉を使っていそうな業者は対象外・・・・・こんな操作がいくらでもできるわけです。もちろん全頭検査があってもそういう行為ができないとは言いませんが、一応全頭検査ですから、かなりの悪意をもって臨まない限りは抜け道を見つけることはできません。
ところが米国は違います。2000万頭いる米国牛のうち、40万頭だけだったら、いくらでも抜け道があります。「どうせ検査の対象は少しなんだから、飼っている牛の5%にだけ肉骨粉を与えるのをやめて、それを検査にまわそう」と考える業者がいても全然不思議じゃないですね。「無作為抽出にします」と言ったって、裏で賄賂を渡せばそんなこといくらでもなんとでもなるでしょう。
全頭検査とは、BSE牛を見つけるためだけにやっているわけではありません。畜産業に携わる人間に「これは重要なことだからきちんとルールを守ってくれ」という意思表示にもなります。要は、BSEに対する姿勢の問題だということ。それが米国は杜撰すぎるわけです。日本が米国産牛肉を輸入すべきではないのは、米国が講じているBSE対策が十分ではないからです。
じゃぁ、どうしたら解禁できるのか。一番簡単なのは米国が全頭検査をきちんと実施すること。別に米国全体じゃなくったって良いんです。全頭検査をやっている業者の肉だけを解禁すれば良い。こんなこと、小学生でもわかることなのに、自分達は手を抜いて、「これが米国のスタンダード。日本もこれにしなさい」と強要しているわけです。
それでも解禁するというなら、責任の所在だけでも明確にしておいて欲しいものです。実際にvCJD患者が発生しても輸入解禁が原因なのかどうかが判断できないこと、これが大きな問題です。これができなければ責任の追求も出来ません。しかし、現時点では責任の追及ができないことがはっきりしています。じゃぁどうしたら良いのか。責任は輸入解禁を意思決定した人と、輸入解禁を働きかけた人たちにあるとみなすのが妥当だと思います。
前にも書きましたが、例えば今後日本でvCJD患者が発生したときはその感染ルートが何であれ、米国食肉輸出連合会が1人あたり3億円を支払うとか、米国産牛肉輸入解禁に賛成した議員は全員無期懲役にするとか、そういう事前の約束があればまだ納得ができます。「絶対安全」というなら、別に難しい話じゃないですよね。
輸入解禁派の人たちだけにうまい話って、あって良いんですか?