2005年07月28日

昨日の衆議院農水委員会

打ち合わせをドタキャンされて時間が出来たので、昨日の衆議院農水委員会の状況をチェックしてみました。で、3時間ほどのビデオを全部観たわけですが、世の中の多くの人はこんなのを観ている時間はないと思われますので、議事の概要をまとめてみましたよ(^^ かなり端折ってまとめてありますが、大意は変えていないつもりです。ということで、皆様の代表である政治家、消費者団体、生産者、科学者のそれぞれの立場の人がどういう姿勢なのか、ご一読いただければ幸い。なお、質疑応答の部分は質問者の発言を太字にしてあります。

和田正江(参考人 主婦連合会参与)
消費者が見分けが出来るよなラベリングをきちんとして欲しい。

加藤一隆(参考人 社団法人日本フードサービス協会専務理事)
米国産牛肉の安全性について、米国から専門家を招いて勉強会を行った。
仙台の牛タン文化は壊滅寸前。
以下、業界(特に牛タン)米国産牛肉の輸入がストップしていかに困っているかを綿々と述べる。
全頭検査はパニック対策の方便であった。
SRMを除去すれば安全なのは世界の常識と政府のパンフレットに書いてあった。
全頭検査は安全確保にならない。
現行の検査では7〜8割は感染牛であっても検出できない。
食品安全委員会はリスクの有無ではなく、定量的な判断をすべき。

品川森一(参考人 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所プリオン病研究センター長)
検査方法について、初心者にはわからないレベルの内容を延々と説明。
陽性の判定に対して感染性の有無が不明であるとか、免疫組織化学検査が陰性であることから判定保留・灰色といった意見があるが、それは間違いである。

木村信熙(参考人 日本獣医畜産大学応用生命科学部動物科学科教授)
過去の日本で発生したBSE牛について、原因となった疑いの濃い飼料が「関連性が薄い」と判断された。
これについて反論する論文が発表されている。
日本のbSE牛の第一世代ではAという代用乳が感染源である可能性が高い。
第二世代においては国内原料が汚染されて発症した可能性がある。
油脂の場合、どの程度含まれているかが問題ではなく、有無が問題である。
粉末油脂の検証が必要。
血漿タンパク(アメリカ産豚由来)の検証も必要。
感染経路は飼料からの追及になる。
全頭検査は、日本における家畜飼料に対しての法規制の有効性、感染経路の検証、安心に対する配慮、二次感染の有無の確認、BSEの排除の目的で今後も継続すべきである。


以下、質問。

今村雅弘(自由民主党)
米国は「毎日食べているし、3300万頭を食べているが、BSE牛は2頭しかでていない」と言っている。それに対しての反論が必要。
今後、どういう検査手法や検査体制が必要だと思うか。

>品川氏
「現在のウェスタンブロットでかなりの部分まで検出可能だと思っている。どんな検査でも限界がある。我が国では検査体制は整っていると思う。」
米国は歯列の検査などで十分行けるという話があるが、どうか。
>品川氏
「ある程度まではわかるかもしれないが、厳密には難しいと思う。」
牛乳からの感染はあるのか。
>木村氏
「ないと思う。報告されていない。」
代用乳に問題があるのか。
>木村氏
「私の理解では、そうである。」
米国産牛肉が存在しない状況でやっていけているのだから、あえてリスクを冒す必要はないのでは。
>加藤氏
「業態変更を余儀なくされている。検査でリスクを軽減できない以上、輸入してもいいはず。それはあえてリスクを冒すようなことにはならないと思う。」
米国に対して働きかけはしていないのか。
>加藤氏
「やっているが検査を要求したことはない。米国はお金がかかるから全頭検査をやらないのではない。全頭検査が無意味だからやらない。検査で安全が確保できるなら要求する。米国は極めて科学的に対応していると思う。」
安全と安心は違うが、世の中は安心を求めるようになってきている。その点を踏まえて米国に働きかけたらどうか。


山田正彦(民主党・無所属クラブ)
21ヶ月齢、23ヶ月齢についても間違いなく異常プリオンが存在しているということで良いか。また、それが19ヶ月齢だったらどうだったのか。
>品川氏
「先ほど述べたとおり、存在していると理解している。プリオンの専門家間では、これらのケースがグレーだとか、怪しいとかいった話は一切ない。グレーとか言っているのは、にわかプリオン学者だと思う。個人的には非常に立腹している。19ヶ月齢に関してはやってみなくてはわからない。」
米国の判別機関にはプリオンの専門家がいないのか。
>品川氏
「少なくとも、昨年の日米のワーキンググループの中にはプリオン病の専門家はいなかった。」
それでいておかしいと言っている米国自体がおかしいと思う。20ヶ月齢を出すか出さないかでプリオン委員会は紛糾したが、中間とりまとめについてどう思うか。
>品川氏
「私はその委員会を欠席してしまった。科学的に考えて20ヶ月齢に線を引く科学的根拠はないと思う。」
結果として数字が出たことについてどう思うか。
>品川氏
「非常に残念である。」
座長が削除すると述べたにも関わらず中間とりまとめに文言が残ったのは、食品安全委員会からの圧力だとは思わないか。先生自身、その後委員会に参加しなくなったようだが、専門委員会のあり方についてどう思っているか。
>品川氏
「食品安全委員会は専門家が検討した結果をまとめるもので、それをリスクマネージメントの資料として行政が利用すると考えていた。しかし、とりまとめの手法に違和感を持ったので、現在のような状況になっている。」
今のプリオン調査会にはプリオンの専門家が数人しかいない。その専門家達は20という数字に対して疑念を持っていたようだ。
20ヶ月齢の牛の検査をしないことについてのリスク評価をする必要があるが、米国には資料がない。それではリスク評価はできないのではないか。

>品川氏
「できないと思う。」
加藤氏は全頭検査に意味がないと発言したが、それについてはどう思うか。
>品川氏
「意味があると考えている。感染畜を100%を除くことができないために補助的な手法としてSRMの除去を行っている。」
>木村氏
「食の安全性から考えると幅があるが、科学的に排除することを考えれば、状況を確認していく面から意味があると思う。それが安全につながると思う。全頭検査が世界の非常識であるという考えは全くもっていない。」
米国は肉骨粉を牛以外に与えているが、交差汚染の恐れはないか?
>木村氏
「交差汚染は飼料製造段階と、運用段階の2通りがある。交差汚染の把握のためにも広く疫学的検査をする必要がある。」
米国ではいまだに乳牛に対して肉骨粉が使われているところがあるようだ。非常に規制が甘い。月齢識別は可能なのか。
>木村氏
「私は現場を見ていないので、可能かどうかは判断できない。ただ、飼育方法によって肉の成熟度は変えられると思う。だから、肉を見るだけで月齢を判断するのは極めて困難だと思う。」
米国の3割程度はきちんと検査可能になっているようだが、それを輸入するのではだめなのか。
>加藤氏
「なんちゃらかんちゃら」(意味不明)→質問者も意味不明と感想(^^;
米国産牛肉が輸入されるようになった場合、検査済みかどうかが表示されるのか。
>加藤氏
「消費者の関心は原産地の区分だと思うが、原産地表示には積極的に取り組む予定である。」
>和田氏
「原産地の表示の徹底はもちろん要求したい。表示については国で基準を決めるべきかもしれない。」


白保台一(公明党)
若齢牛については全頭検査の対象外とするという方針になりつつあるが、どのように考えているか。
>和田氏
「将来永久に続けるべきだとは思わないが、今の段階では検査体制を変える時期ではないと思う。」
>加藤氏
「全頭検査の安全神話を取り除く必要がある。あくまでもサーベイランスである。一日も早く全頭検査を見直すべきである。それが世界の常識である。」
>品川氏
「全頭検査が必要である。我が国のBSE対策が有効に機能しているかどうかをチェックするために有効である。続ければ我が国からはBSE牛が発生しなくなると思う。」
>木村氏
「食の安全に加え、世界からBSEを排除するためにも一定期間全頭検査を続行すべきである。」
米国はSRM除去が適切であると主張しているし、全頭検査を実施する体制も整っていない。BSEを排除するにはどうしたら良いか。
>木村氏
「あらゆる情報の共有化だろう。学者は断面しか見ていない。いろいろな立場からの情報の共有が必要だ。」
米国の検査は信頼性が低いのではないか。
>品川氏
「全くその通りだと思う。米国の現状を把握できない。それぞれの検査データが公開されていないので、米国の状況は判断できない。」
米国の消費者団体とは交流があるのか。
>和田氏
「問い合わせているところである。欧米、アジアの消費者団体とは緊密に連絡を取っている。」
>加藤氏
「米国の生産者団体とは交流がある。」
米国はSRMの除去こそが大事だと言っているが、客観的に言ってどうなのか。
>木村氏
「残念ながら自分の分野ではないので答弁できない。」
>品川氏
「私もコメントできない。」
プリオンの研究の現状はどうなっているのか。
>品川氏
「プリオンとは全て異常な形になるものであるが、構造については不明である。現在は解析のための試料がない。多方面から構造解析を進めている。」
一定の対応措置とはどのように考えているか。
>加藤氏
「検査神話とまで言われている全頭検査神話を一日も早く払拭してもらいたい。」


高橋千鶴子(日本共産党)
消費者の意見は行政に反映されているのか。
>和田氏
「色々情報を収集・公開するようにはなってきたが、政策決定の場には生かされていないことが多い。」
検出限界についてどう考えるか。
>品川氏
「検査には必ず限界がある。限界を補完するためにSRMの除去をしている。SRMを除けば100%プリオンが除かれるという考え方は間違いである。SRM以外の部位にもプリオンが存在するということがわかってきている。検査を行っても検出できない牛のSRM以外の部位にあるプリオンは非常に少ない。こうした手法によって日本の食肉の安全を確保している。」
日本においても21ヶ月齢、23ヶ月齢はBSEじゃないかもしれないという議論があった点についてどう思うか。
>品川氏
「委員会で判定を行った。それをBSEとする点については反論はなかった。ただ、23ヶ月齢のものについては従来のBSEとは違うパターンであるという指摘はあった。」
20ヶ月齢で線を引くのはおかしいのではないか。
>品川氏
「20ヶ月齢で線を引くことにはなんら科学的根拠がないと断言できる。」
その意見が大勢を占めていたにも関わらず、それが行政によってねじまげられたと思うか。
>品川氏
「食品安全委員会は科学的、準科学的に結論を出すという位置づけであると考えていたが、それに反して、とりまとめではリスクマネージメントに踏み込んでいたと感じている。」
食品安全委員会の報告はBSEをなくすという意味で不十分ではないか。
>木村氏
「疫学的な調査結果が、技術的な結果を導くものではない仕組みの中に取り込まれてしまった。非常に残念である。代用乳の話が薄れて交差汚染の話になったのは、外力がかかったことによるのだと思う。あらかじめ作られていた結論に誘導したのではないかと考えざるを得ない。」


山本喜代宏(社会民主党・市民連合)
専門調査会は今後どうやって議論していくのか。
>品川氏
「私は昨年12月に辞表を提出した。その際、寺田委員長は「これを受け取ると食品安全委員会が分裂する。出席をしなくても良いから辞めないでくれ」といわれた。以後、私は食品安全委員会には出席していない。」
専門家が辞意を表明するようなやり方が正当なのか。こうした政府の極めて恣意的な手法を消費者はどう考えるのか。
>和田氏
「今までにもこういう話は聞いていたが、残念な気持ちで一杯である。本当のリスク分析ができるような体制を整えて欲しい。」
異常プリオンが存在する場所は今後も広がっていくと思う。SRM除去だけで良いのか、またどの位の量を摂取すると感染するのか。
>品川氏
「検出法の感度が上昇したおかげで、プリオン蓄積場所は拡大している。どの程度の量を摂取すると感染するのかは非常に重要だが、残念ながらデータは全くない。」
SRMを除去すれば安全といった広告が掲載されたり、フグでも死んでいる人がいるが、危険部位を除いて食べているといった広告があるが、これらをどう考えるか。
>品川氏
「フグの毒とは比較できない。一般の毒物は薄めていけば毒性が落ちていく。しかし、プリオンは薄めても毒性が薄まっていくわけではない。あたる確率は落ちるが、薄めても死ぬときは死ぬと考えている。」
輸入配合飼料についてはどう考えているか。
>木村氏
「輸入配合飼料は国によって規制が違う。規制が必要だと思う。規制の現状と、それがどの程度遵守されているかをチェックする必要がある。現実的にはそれは難しいので、禁輸措置を取ることになるのだと思う。」
代用乳はどの程度研究が進んでいるのか。
>木村氏
「代用乳についてはわからない。」
>品川氏
「飼料については素人でわからない。」
米国の生産者組合に日本の立場を知らせていく必要があるのでは。
>加藤氏
「米国とは連携している。業界にはニーズを連絡している。情報のパイプはある。今回もSRM除去に関するPRを求めている。」

ということで、感想。

まぁ、実際に見てもらえばわかるかもしれなけど、委員の力量に差がありすぎ。白保氏は明らかに勉強不足で質問内容のレベルが低い。すでにわかっていることを確認しているだけで質問時間を終了してしまい、全くの無駄。また、高橋氏は質問が要領を得ない。議事をまとめていても、どう書いたら良いか困惑する。

でね、新聞報道ではこの委員会に関する記事で、品川氏が食品安全委員会に対して辞意を表明していたことなどを書いていたけど、ポイントはそこじゃないでしょ。「20ヶ月齢なんていう線引きには全く科学的根拠がない」とか、「全頭検査は引き続き実施すべきだ」という専門家の一致した意見なんじゃないの?

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本日の衆議院農水委員会の質疑がありました。かなり興味深い内容です。専門家の話をわかりやすく聞くチャンスです。 質疑の中継ビデオは、下記の検索で 平成17年7月27日 農林水産委員会 を指定して、 「検索」ボタンを押すと出てきます。 http://www.shugiintv.go.jp/jp/i...
衆院:農水委員会のBSE質疑で油脂・血液飼料の問題指摘&食安委内紛【BSE&食と感染症 つぶやきブログ】at 2005年07月28日 19:36
■【内外無差別】米国牛トレーサビリティーをふただ(ニ田)議員が否決するといっている件 米国牛輸入については、「内外無差別」が前提で、例の怪しい月齢区切り論争が勃発したようですが、「内外無差別」というならば、当然「飼料」や「SRM除去」「トレーサビリティー」も...
【内外無差別は?】米国牛トレーサビリティーを、ふただ(ニ田)議員が否決するといっている件【BSE&食と感染症 つぶやきブログ】at 2005年07月29日 09:54
本文は「日本生命」に関するニュース、ブログを紹介しています。
日本生命【マネーライフ徹底研究】at 2005年11月10日 03:15
本文は「第一生命」に関するニュース、ブログを紹介しています。
第一生命【マネーライフ徹底研究】at 2005年11月10日 03:35
この記事へのコメント
わーい、まとめをありがとうございます。おつかれさまです。私もやろうと思いながら、PCの前で寝てしまいました(^^;
品川先生は、「ロシアンルーレット」的な感染の仕方をするようなことをいわれてましたね。
外食産業の方々は、専門家の話を、左耳から右耳へ、といった答弁をされてましたね。外食するのが鬱になってきてしまいました。。
Posted by Mariko at 2005年07月28日 19:33
今回の答弁ですが、国にいい加減な分析をされ、報告書を出されて、無視されていた代用乳の中の油脂と血漿蛋白の汚染が、感染ルートとして検証され、ようやく日の目を見たこと、現場の先生方の声が初めて、一般市民の見る公けの場に出てきたことについて、とても大きな意義を感じています。

それと、米国は油脂と血漿蛋白、鶏糞の規制が全然ないので、その問題を今後のプリオン専門調査会の審議に反映させなければならないわけですが、果たして8月1日の調査会ではどういう話になるか。これら問題点の指摘がちゃんと、国民の健康を守る審議の場に反映されるのか、見ものですね。
Posted by Mariko at 2005年07月28日 19:47
おっと、追伸です。
今回この問題を白日に晒してくださるために、高橋議員やみなさまがご尽力くださったようです。

先日、アメリカ大使館と消費者団体の討論会を見にいったのですが、そこで感じたのは、子供の頃から培ったであろう、米国のディベート力と自己主張の力。内容はともかく(^^;、あれは学ばなければ〜と、ちょっと思いました。私もがんばろうっと。

それから、審議会を傍聴して感じたことですが、日本人の遠慮、というのか、ずいぶん感じます。国民の代表という立場を思いかえして、正しいことはガンガン主張いただき、押し通していただきたいと思いました。
Posted by Mariko at 2005年07月28日 23:02
ロシアンルーレットの話は「へぇ、そうなんだ」という感じでした。濃度依存ではなく、あたりを引いたらアウツ、みたいなことで。

フードサービスの加藤さんとしては、新しいデータは何もないし、馬鹿の一つ覚えみたいにSRM、SRMと唱え続けるしかないんでしょう。最終的には政治力に頼るしかないのに、「科学的」を連呼しなくてはならないのが辛いところです。だからといって彼の言っていることに納得するわけではないですが。

高橋さんはちょっとプレゼン能力不足ですね。もうちょっと、主張と質問をきちんと分けないと。あれでは答える方も何を言ったら良いかわからなくなってしまいます。どういう答えを引き出したいのかを意識した上できちんとした質問をしないと。まぁ、白保氏よりはマシでしたが。
Posted by buu* at 2005年07月29日 00:04
Hmm, interesting!
Posted by educational game at 2005年11月01日 02:14
Where is english version?
Posted by card game at 2005年11月01日 02:32