2005年11月07日

ブログでバイオ リレーエッセイ 第7回 「バイオ産業がなぜうまく行かないか」

maruさんから、「人材の観点以外で国内のバイオ産業がうまく行っていない理由を、特に制度と絡めて話していただけませんでしょうか?」というパスが来たので、いくつか思いつくところをピックアップしてみましょう。

第六回はこちら

まず、このブログでバイオでも散々書いてきている「国民の無理解」。これは最大のものですね。でもまぁ、これは今まで書いてきているのでパス。

次に挙げられるのが、多くの企業が「腫れ物に触る」ようにバイオに接しているということです。以前、ある会社にヒアリングに行ったとき、その会社のバイオ利用製品についてレポートをまとめたことがあります。そのレポートはバイオテクノロジーの有効利用事例ということで、決してネガティブなものではありませんでした。また、紛れもなくバイオを利用した製品です。ところが、そのレポートを表に出そうとした途端、相手の企業からストップがかかりました。「この製品には社運がかかっている。わざわざバイオというネガティブなイメージを付随させたくないので、レポートは公表しないでくれ」と言われたのです。一応相手企業のある話なのでここではオープンにしませんが、その製品は確かにバカ売れして、その会社の看板製品となりました。今でも多くの家庭でその製品が利用され、皆さんの口に入っているはずです。ここまで書けばわかる人にはわかると思いますが、とにかく企業自体がネガティブなイメージを忌避しすぎです。別に悪いことをやっているわけではないのにそれを秘密にしたがるんですから。

制度という点でもいくつかうまく行かない理由があります。例えば特許制度はスピードが命のバイオベンチャーの足を止めてしまうほどのんびりしていますし、また医療行為に対しては特許が認められないといった問題点もあります。まぁ、医療行為に特許が認められないというマインドも理解不能ではないのですが、それでは結果として技術革新が遅れてしまうことになります。医薬品の承認スピードも欧米と比較して早いとは言えません。ちょっと視点を変えると、トクホなども大企業に有利な制度となっていてバイオベンチャーにはかなり厳しい制度といわざるを得ません。ただ、このあたりは産業としての成長を重視するのか、安全性を重視するのか、倫理を重視するのか、という話になってきて、簡単に模範解答を作れないことも事実です。問題なのは、こうした点について皆で議論すべきなのに、皆がこういったことに対して知識がなく、議論ができないということです。結局、教育の問題に帰着されてしまいます。

もっと根本的なこととして、日本に優良な技術が存在しないかもしれないということも挙げられるかもしれません。もちろん皆無とは言いませんし、僕自身、バイオベンチャーの支援をしていたときは「日本には技術はある。それを顕在化させるプラットフォームが存在しないのが問題だ」と主張してきました。プラットフォームが存在しないのは事実ですが、では「技術はある」というのは本当なのか。この点について、以前は僕もあると思っていたのですが、最近は「本当にあるんだろうか?」とちょっと疑問に思うようになってきました。そもそも、シーズがなければうまく行くはずがありません。このあたり、本当はどうなのかはちょっとわからないのですが・・・・

顕在化させるプラットフォームという部分では、大企業の精神的土壌というのがあると思います。彼らは基本的に自分達の社内で自己解決しようとします。外部の会社、それも小さなベンチャー企業となると、そことアライアンスを組むのは最後の手段になります。例えば、あるベンチャーが水虫の薬を研究していたとします。その技術をどこか他の製薬会社と共同で製品化につなげようとしてアライアンス交渉をしようとすると、まずその技術が確かなものなのかどうかをアライアンス先の企業で評価する必要が生じます。大企業においてその業務に就くのは恐らくは大企業の中で水虫薬の研究をしている部署の人間たちです。その外部の技術が本当に物凄く優れているのであれば、アライアンスという形で技術導入するのが最善という判断になるでしょう。ところが、「ちょっとだけ良い」ぐらいであれば、「現在社内で開発中の技術と大きな差はない」という結論を出すと思います。なぜなら、外部の技術の有効性を認めるということは、自分達の研究開発が劣っていることを認めることになるからです。外部の技術を導入することはやぶさかではないが、どうせなら社内の技術、社内の人材を利用したい、ということになります。

日本のバイオがダメなのは、どこか一箇所がダメというわけではありません。国民もダメだし、大企業もダメだし、制度もダメだし、ということですね。多臓器不全みたいな感じです。しかし、バイオがカバーする領域は医療、食品、環境など、生活のベースになるものです。ダメだから仕方がない、と放っておくことはできません。ところが、そういう危機感が国民の中で共有化されていないんですね。

さて、次のテーマですが、内閣府食品安全委員会のプリオン専門調査会での動きについて取り上げたいと思います。一部では年内にも米国産牛肉の輸入解禁などという話もささやかれているようですが、このことについてどう考えますか?

なお、参考資料はこちらにたっぷりあります(笑)→食品安全委員会プリオン専門調査会

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