2006年01月03日

ブログでバイオ リレーエッセイ 第11回「JBNへの期待」

ちょっと年末年始がはさまってしまって間があいてしまったリレーエッセイですが、年も改まって再開です。

第10回はこちら
ブログでバイオ リレーエッセイ 第10回 「バイオ関連情報を共有化しよう!」

さて、第10回ではmaruさんからSNSについて意見をもらっていたのですが、それはこんな感じ。

この共有化を最大限に発揮するためにはまずリアルとバーチャルをうまく使いこなすことが大切だと思います。実際ミクシーとかではまず人が口コミであつまって、そのなかで個人のコミュニティーができて、そして実際にみんなで集まるオフ会があって、バーチャルからリアルがうまれてきて、その繰り返しで、画期的なコミュにテーサイト(原文のまま(^^;)になっていると思います。

この、リアルとネットとの融合、相乗効果というのは別にミクシィに始まったことではなくて、もう10年くらい前からネット内で行われていたことです。今もあるのか知りませんが、fjとかでもやっていましたし、MLなどでも展開されてきていました。それが徐々にBBSへと移行したわけですが、BBSになって情報量が格段に増加すると同時にアングラ色が強まり、そのアングラ色を薄めたものとしてSNSが登場してきたという感じです。それで、リアルとネットの融合について否定するものではないのですが、SNSの問題点と言うのは実はリアル部分をどう取り入れるかではなく、日本人の「情報」に対する姿勢にあると思っています。

僕は三菱総研という情報を切り売りする会社にいました。僕が入社した当時(1992年ごろ)はまだインターネットというのが黎明期で、メールアドレスを持っているというだけでかなり最先端という感じでした。そんな時代だったので、もちろんサーチエンジンなんてありません。何か調べようと思ったらかなり大変な時代です。そのとき、三菱総研がどういう仕事をしていたかと言うと、すぐそばにあった八重洲ブックセンターとか、三省堂とか、政府刊行物センターとかに出かけていって、情報価値のありそうな本を見つけてきて、そのデータを再編集してコピーしてホッチキスで止める、みたいなことをやっていました。たったこれだけのことで数百万円をもらえた時代だったんですね。それは、情報がそれだけで価値がある時代だったからです。

ところがインターネットの時代になってこの状況が一変しました。情報はどこにでも転がっています。そういう、本に載っているだけの一次情報では何の価値もなくなりました。そこにどうやって付加価値をつけるか、これが勝負になったわけです。おかげで世の中のシンクタンクの仕事は一変しました。あちこちにちょっとした専門家がいる状況の中で、真の専門家とはどうあるべきなのか、という問題をつきつけられてしまったのです。それまでは、一週間ぐらい関係書籍を読んで、「私は○○の専門家ですが」などと言いながら営業に行けたわけですが、そんなことはもちろん不可能になりました。一夜漬けで専門家を名乗ろうものなら営業先のほうが詳しくて恥をかくという状況になったわけです。

さて、そうやって情報が氾濫する時代になって、何が一番変わったのかと言うと情報の価値が変わったと思います。日本では情報の価値が暴落しました。どんな情報でもタダで手に入るのが当たり前だと思われています。もちろん、タダで手に入る情報も山ほどあるのですが、その一方で手に入りにくい情報というのもあります。ところが、これらの情報を十把一絡げにして「タダが当たり前」と思われている節があります。情報が滅茶苦茶高価だったことに対する反動なのかもしれませんが、ちょっと行きすぎな感じがします。

例えば僕はアンジェスMGという会社のHGFというタンパク質に関するかなり重要な情報を持っています。この情報をオープンにすればアンジェスの株価は間違いなく変動します。それが高くなるのか、安くなるかすらここでは言えませんが、この情報は間違いなく価値のある情報なんですね。しかも、この情報は普通にネット内にある情報を収集、統合、処理していけば見つけ出すことができます。ただ、ある目的と方向性を持って情報を処理しない限り、僕と同じ結論に至ることはできません。その処理の方法をどうやって引き出したかすらここではオープンに出来ませんが、多分、この文章を読んだ人は「そんな話があるなら是非教えて欲しい」と思うわけです。ところが、「お金を払ってでも情報を知りたい」と思う人はほとんどいないと思います。

実際のところ、上に書いた「HGFに関する情報を持っている」というのは全くのフィクションですが、たとえそれが真実だったとしても多くの人はお金を払ってでも聞きたいとは思わなかったと推測します。日本においては情報なんてタダが当たり前、ということなんですね。

それで、タダが当たり前の情報なんですが、自分が持っている情報はタダで出したくない、というのがその一方での日本人のメンタリティです。飲み屋で知り合いたちが何か話をしている。遅れていった人がまずどうするか。「なに?なに?何の話をしているの??」と聞くわけです。その一方で、自分が何か面白い情報を持っていたとしても「えーーー、内緒(^^」と対応する。僕が思うに、日本人とは何でも知りたがりで色々なことにクビを突っ込みたい野次馬根性は旺盛なくせに、自分の持っている情報はなるべくオープンにしたくないという人たちです。だから、ミクシィのような世界でもread onlyのメンバーが非常に多いわけです。情報は集めたいからコミュニティには参加する。でも自分の情報は出し惜しみしたいから何も発言しない。結果として、ほんの一握りの情報発信者だけが情報を発信して、残りのその他大勢はその情報を読むだけで満足します。

ROMが多いというのはもちろんこうしたメンタリティだけが原因ではないと思います。例えば責任回避というのもあるでしょう。何か変なことを言ってしまって叩かれたり、責任を取らされたりするのが嫌だ、ということですね。良く「公務員は責任回避が得意」などという意見を目にしますが、責任回避が得意なのは何も公務員に限ったことではないです。どんな場面でも責任を回避したいのが日本人ではないですか?だから、BBSのような責任を追及されないメディアでは色々書くことができるのに、SNSなどのある程度責任を追及されるメディアでは発言量がガクンと減ります。

それから、日本人は他人と異なる意見を書けない、ということもありますね。つい最近も皆がべた誉めしているある本がありました。僕が読むとどう考えても駄作なんですね。ところがミクシィの中で皆が皆それを誉めている。僕の感性が特殊なのかな?と思ったりするのですが、その一方でBBSとかではその本の評価は決して高くないんです。つまり、文章の出自がはっきりしている場合、人と異なる意見を言えないという状況があるんですね。僕なんかは人と違うことで自分のアイデンティティを確認するタイプの人間ですから喜んで情報発信するわけですが、多くの人は他の人と同じであることに安心して、その大衆の中に埋もれるような意見を喜んで書くようです。で、人と違う場合は意見を言わずに黙ってしまう。

ま、理由は色々とあるのでしょうが、特定の発言者しか情報発信しないコミュニティには発展性がありません。キーマンが発信する情報だけが濃縮されていき、コミュニティは煮詰まってきます。ミクシィを代表例として、今存在するあらゆるSNSはこうした方向に進んでいると思います。もちろんその規模やスピードはそれぞれですが。つまり、参加者それぞれがSNSを支えているという認識がないんですね。ドラゴンボールの元気玉ではないですが、大勢の人がそれぞれ少しずつ知識や知恵を出し合って、それを大きなエネルギーにしていこうという意識が希薄なんです。そして、JBNに関してもこれと同じ問題が生じると思っています。

バイオに興味を持っている一般の生活者が、バイオに関する情報を収集したいと思ってJBNに加入してくる場合はこれでも良いと思うんですね。もちろんそういう人たちだって積極的に意見を言ったほうが良いとは思いますが、傍観者としてやり取りをみているのもアリでしょう。しかし、バイオ産業に関連している人たちはこれではダメだと思います。バイオ産業と言うのは単体で存在するものではありません。様々な企業と複雑に関連しあっています。例えば薬の認可について厚生労働省に何らかの働きかけをして制度改革を迫ろうと思った場合、一社で対応するよりも業界でまとまって対応したほうが成功の確率は上がるはずです。これは非常にわかりやすい例としてあげたわけですが、これに限らず、もう欧米にすっかり遅れをとっている日本が状況を打開しようと思ったら、関係者それぞれが一致団結して、少しずつでも知恵を出し合って、何とかしていかなくちゃ、と考えなくてはダメだと思います。

JBNに関して言えばネットワークが形成されるのは大前提で、その上でその中で活発に議論が行われる必要があると思っています。例えばバイオベンチャーの振興に関しては、今まではそういう議論をする場が全くありませんでした。いや、全くというのは語弊があるかもしれませんね。一部の専門家の中では議論はありました。しかし、行政担当者や大企業に軸足を置いている人、あるいは大学関係者のように、来月の支払いをどうしたら良いか、今度のプロジェクトにどの位の人件費を投入すべきか、そういった日銭のことを気にしたことがない人たちだけで頭を悩ませていても無駄です。

バイオベンチャーの支援はなんだかんだでもう5年くらいやってきているわけです。にもかかわらず、「今年は何をやったら良いだろう。お金はあるんだけど」と頭を悩ませたりしています。結果として出てくるのは「アライアンスの場を作ろう」「情報交換の場を作ろう」「顔合わせの場を作ろう」などいうものばかり。でもね、もうこういう機会って山ほどありますよね?で、それに参加している人たちってもうすっかり顔なじみじゃないですか?前回も会った人たちとケータリングを食べながらちょっとおしゃべりして、それでオシマイ、みたいな感じじゃないですか?もうちょっと違った角度からの支援があっても良いと思いませんか?

さて、ちょっと(かなり)ながーーーーくなったのでこのあたりでmaruさんからのパスにこたえようと思います。

このSNSを通じでどういったアウトプットを想定していますか?コミュニティーからベンチャーができるとか、共同研究が生まれるとか・・・。


まず、最大のものは既存の様々なバイオベンチャー支援ツール、バイオ産業支援ツールの効果をもっと大きく出来ると思っています。例えば色んなマッチングの機会で顔をあわせますね。そこで皆名刺交換をするわけです。ところが、名刺を交換して、それでおしまいなんですね。それで、次のマッチングの機会でまた顔をあわせる。「あぁ、前回お会いしましたね」などと話ができればまだマシです。また同じように名刺交換して、会社に帰って名刺を整理して、「あれ?この人、この前も会っていたんだな」と苦笑するんですね。で、その次のマッチングの機会でもまた名刺交換をするんです。5回ぐらい顔をあわせているうちにようやく個体認識する。でも、個体認識するだけ。これじゃぁビジネスになんかつながりません。でもね、この二人がJBNに登録している状況を想像してみてください。名刺をもらって会社に戻って、「あぁ、この人はどういう人なんだろうな」と思えばそれを調べることができます。その人がブログを持っていればさらに詳しく相手のプロフィールを知ることができます。仕事は全く関係ないことで共通点があるかもしれません。それは大学の研究室かもしれないし、共通の友達かもしれないし、最近観た映画かもしれませんが、まぁ共通点なんて何でも良いんです。何かがあれば、それを接点として相手との距離を近づけることができるはずです。

次に考えられるのが、下流のネットワーク構築です。今、色々なところで展開されているマッチングは、基本的に社長、大企業の課長級、大学教授といった、各組織の要人同士のネットワークです。でも、例えばmaruさんがこういうマッチングの場に行って、知り合いになった人、話をした内容について会社の末端にまで詳細に連絡したりしますか?少なくとも僕は自分の会社の社員にそういう情報を流すことはありません。で、maruさんの会社はどうだかわかりませんが、多くの会社が同じような状況なんだと思います。ところが、社長が持っている情報なんていうのは会社の持っている情報のほんの一部なんですね。だから、本当はマッチングの場には社長だけじゃなくて社員全員が行くべきなんです。ところが、そういう場には物理的な制限がある。じゃぁどうしたら良いか。みんながバーチャルな場に参加していれば良いわけです。そこで情報を共有化し、ネットワークを構築できるようになっていれば、マッチングの可能性は格段に高まると思います。

コミュニティからベンチャーが創出するとか、共同研究が始まるといったことは実はあんまり考えていません。ただ、ネットワーク形成の延長線上にはそうした成果があるかもしれません。とにかく考えているのは既存のツールの効率化です。そして可能であればバイオ関係者の意識改革ですね。人の話を聞くだけ、人の持っている情報を仕入れるだけ、人のアイデアを聞きだすだけではだめだということに早く気がついて欲しいですね。少なくともバイオに限れば、プレイヤーはそれぞれの次元できちんと役割を果たす必要があります。主要な数人のプレイヤー主導でなんとかなる状況ではありません。関係者全てがどんどん自分の考えを表明し、少しでも状況を改善していきたいという意識を持って欲しいと思っています。

そして、それができなければ、やはり日本のバイオはダメなんだと思います。これは極論かなぁ。

ただ、JBNをうまくまわしていくには色々な工夫は必要だと思います。去年の暮れからバイオベンチャーフォーラムで紹介したり、徐々に露出は増やしてきているんですけどね。何か良いアイデア、ありませんか?

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