2006年09月22日

SNSにおける犯罪情報の取り扱いについて

株式会社ライブログでは2つの地域SNS、Bay Net(横浜を中心とした神奈川県を対象)とSWAN NET(志木市、和光市、朝霞市、新座市)を運用している。

この2つは同じ地域SNSというカテゴリーに所属し、両者ともにグルメ情報へのニーズが高いなどの特徴があるのだが、一方でその成長曲線や内部でやり取りされている情報には差もある。

特に顕著なのはSWAN NETで参加者の興味が集中している犯罪、災害、事故、火災といった情報に対して、Bay Netの参加者が比較的冷静であるということだ。Bay Netでは神奈川県警発表の「子どもに対する不審者情報」を転載していたのだが、これらのコミュニティへの参加者はほとんどないというのが現状である。

Bay Net、SWAN NETともに警察の発表しているデータを転載しているのだが、全体の参加者に占めるこれらのコミュニティへの参加率には大きな差がある。これには警察の発表している情報の質の差というSNSとは無関係な要素もある(埼玉県警が発表している「犯罪情報官ニュース」は情報発信頻度、その内容などの点で神奈川県の発表をはるかに上回る)のだが、本当の理由はまだわからない。

さて、これらの情報の転載にあたっては、神奈川県警、埼玉県警には一応仁義を切っているのだが、今日になって神奈川県警から正式に「転載のお断り」の連絡が広報県民課広報係名であった。

実はこの件について9月11日に神奈川県警まで説明に行ったのだが、そのときの県警サイドの懸念は次のようなものであった。

1.掲示板形式では、何を書かれるかわからない。被害者の人権が侵害される可能性がある。
2.県警発の情報は3ヶ月程度で削除しているが、掲示板形式ではそれができない。
3.今まで県警が情報を切り売りした前例がない。
4.URLを表記するような形でリンクする手もあるのではないか。

これに対してライブログが主張、説明したのは以下の点である。

1.県警の情報(http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd0600.htm)はウェブサイト(http://www.police.pref.kanagawa.jp/)の深い部分にあり、アクセスするのが困難である。
2.県警の情報発信ページはJavascriptを利用しているが、Mac IE、Firefoxなどのブラウザでは正常に動作せず、閲覧不能である。もちろんケータイからのアクセスも困難である。
3.県警発表の情報を共有することが目的なので、掲示板への書き込み権限を限定し、Bay Net運用者であるライブログのみが書き込むことにすることができる。
4.書き込みから3ヶ月を経過した時点で記事を削除することも可能である。
5.どういう形であれすでに情報はネット上に発信されており、その流通形態を発信者が規定するのは困難である。それならばきちんとそのままの形で転載したほうが責任の所在もはっきりし、生活者の役に立つはずである。
6.こちらのスタンスは「子どもを持つお母さん達になるべく早く、簡単に情報にアクセスしてもらいたい」ということ。そのために県警が必要と思う配慮(一般の人が書き込めないようにする、情報は三ヶ月程度で削除する等)があればシステム面で対応する。その他、システム面で改善した方が良い部分は指摘があれば解決する。ライブログは生活者にとって有益な情報へのアクセスルートを増やしたい。
7.今の情報発信形態ではなく、例えばブログのような形で個別の記事に直接アクセスでき、さらに携帯でもその記事が閲覧できるようにしてもらえれば、もちろんURL指定のリンクという形を取るのでも構わない。

これに対しての当日の県警の返事は、

1.情報はウェブ以外に学校や会社へも直接発信しており、このような形式での情報発信の必要性は感じられない。
2.判断がつかない部分もあるので、署内関係部署で稟議して検討したい。

とのことだった。検討には2週間を要したわけだが、今日になって正式に「NO」との返事があったので、こちらとしても情報発信者の意にそぐわない形での情報転載は中止せざるを得ない。

さて、では本当に今回の「NO」という判断が適切だろうか。今転載しているのは例えば次のような情報だ。

時期:6月中旬
時間帯:9時頃
場所:花咲町(路上)
被害の状況:男子児童
不審者の特徴:年齢40〜50歳位、身長170儖漫¬邉緞后▲検璽僖鷸僂涼
内容:後方から腕を掴まれ、「行こう」と一言、声を掛けられた
ちなみにこの情報には上述のURLを入力してウィンドウズ/IE4以降のブラウザーで伊勢崎署管轄の不審者情報を閲覧すれば、今日現在誰でも見ることができる。

こういった情報を地域SNSで共有することは何がまずいのだろうか。僕は今回の神奈川県警の判断は、不適切とは言わないまでも、あまり良い判断ではないと思っている。このブログを読んでいる皆さんはどう感じますか?このブログでは滅多に読者の皆さんの意見を募集したりしませんが、ちょっと聞いてみたいと思いますので、何かありましたらコメントよろしくお願いいたします。

参考として、埼玉県警の発信している犯罪情報官ニュースの最新号もここに転載しておきます。
9月20日(水)所沢市弥生町及び東住吉のマンションでサムターン回しによる空き巣が連続発生。県内では最近、同様の手口による犯行が多発傾向です。被害防止にはサムターンカバーとガードプレートの併用が効果的です。近所で見かけない人の徘徊など不審者(車)発見の際は、110番通報をお願いします。
転載を禁止もせず、また詳細な情報を発信してくれている埼玉県警と、良くわからない判断基準で情報の転載を断った神奈川県警。より良い地域社会を実現するにはどちらのスタンスが良いんでしょうね?

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この記事へのコメント
一般的に言って犯罪ないし未遂の情報を広く共有することは生活の安全を高めることだと思います。ただ、はたしてその受け手が、その情報を正しく受け取ることができるかという点で懸念が無きにしも非ず、というところです。

最近(でもないか)リスクコントロールの本を何冊か読んだのですが、情報過小の状態からいきなり情報が開放されると、情報の受け手は半ばヒステリックな反応を示すことが多いようです。その点で神奈川県警の懸念もなんとなく分かるような気がします。
一般市民の安全情報への理解度が高まりつつあるところの、過渡期での摩擦ではないでしょうか。

最後になりましたが、お疲れさまです。
Posted by e- at 2006年09月22日 10:08
自分の意見としては、すでに県警で情報開示している情報をわかりやすく転載することにどんな問題があるのか理解できません。
不適切な情報なら、ウェブサイトにも開示されないのではないでしょうか。
神奈川県警の体質が市民の安全ではなく自分の安全第一になってるように見えちゃいますね。
Posted by hiro at 2006年09月25日 10:54
>Master e-

>情報を正しく受け取ることができるかという点で懸念

そうですね。情報の受け手で情報の有効利用が出来ないというのであれば発信元で情報の調整を行わなければならなくなります。しかし、これは「受け手の大衆が未熟だから発信する情報を操作する」ということですよね?ちょっと世の中の流れには逆行している気もします。

デリケートな情報なので県警の気持ちもわかるんですが、わからないのは、片方ですでに情報として発信しているにも関わらず、それをもっとわかりやすい形で周知するのはダメだ、という点です。個人的にはSNSというメディアに対する理解不足かな、と思うのですが。その点は土曜日の政策研究大学院大学での講演でも指摘してみました。

ネットの情報はバケツリレーで情報の劣化なく広まっていくのが特徴なのに、あえてそれがやりにくい形でやっているのも謎です。普通にブログ化しちゃえよ、みたいな。
Posted by buu* at 2006年09月25日 11:26
>hiroさま

>神奈川県警の体質が市民の安全ではなく自分の安全第一になってるように見えちゃいますね。

痛烈な指摘で、是非県警の意見を伺ってみたいところですね(^^

個人的には、とりあえず転載不許可という判断はそれはそれで尊重すべきだと思うのですが、一方で今後も我々のような事業者ときちんと意見交換を続け、市民生活にとって最も有益な形で情報発信していけるように努力すべきだと思います。県警がそういう姿勢を見せてくれると良いんですけどね。彼らがSNSやブログに対して今理解がないのは仕方がないのですが、これを機に勉強してくれればなぁと思います。
Posted by buu* at 2006年09月25日 11:31
Smipsでもおっしゃってましたが、「自分たちの手元から離れること」を嫌がっているのでしょうね。自分たちのRISKと市民のRISK。警察の存在意義から言って、どちらを優先すべきかは自明のような気がします。

かれらが指摘する”2次被害”について。
2次被害等のRISK管理は難しいとはおもいますが、プロならば何なりの手段で2次被害のRISKを最小限にする工夫や努力があってもよいとおもいます。抑止効果は自ら認めているわけですし...


埼玉では、TV埼玉の”本当に”ローカルな地元番組中”テロップ”でも流されています。埼玉では宮崎某による過去に忌まわしい事件がありました。20年近くなりますが、当時は有志で自警団などを組織していたようですし、そうした経験が反映されているのだと思います。
Posted by JoeN at 2006年09月25日 23:45
たしかにそうですねぇ。

マスコミ媒体に比べれば、はるかにミス・劣化の少ない媒体だというのを理解してもらうしかないでしょうね…
Posted by e- at 2006年09月27日 17:00