2006年12月08日

野田地図「ロープ」

75d0b255.JPG野田秀樹の久しぶりの新作、「ロープ」を観て来た。

新作も久しぶりだが、「これは面白かった」と思ったのも久しぶりである。ストーリーには大きなひねりはない。そしてテーマは反戦、反テロなんだから、傑作となることは事前にある程度約束されていたと言っても過言ではない。しかし、それでも間違いなく「贋作・桜の森の満開の下」や「キル」に並ぶ作品だと思うし、また宮沢りえさんが実況する戦争シーンは指折りの名シーンになるんじゃないかと思う。

#色々演劇を観ていれば「演劇史上屈指の名シーン」とか言えるのだけれど、残念ながらそこまでの見識はないので(^^; ただ、僕のまずしい観劇経験の中では、桜の森でてんてこ舞いする人達を笑う夜長姫のシーンを凌駕する出来だと思う。

以下、ネタばれ感想は追記に記述。未見でネタばれが嫌な人は以下、アクセス厳禁です。



舞台は落ちぶれたプロレス団体のリングから始まる。ぱっとしないその団体の内容が「レスラーの半殺し」になった途端にそれを放送するテレビ局の視聴率が上がる。そして、視聴者の要望がそのエスカレートにあると判断したテレビ局の社長はその内容をどんどん過激なものにしていくよう指示を出す。それは殺し合いになり、やがて戦争になる。そのリングで繰り広げられる戦いは、いつしかベトナム戦争のミ・ライ村の大虐殺へとつながっていく。

「なかったものをあったというのは良いが、あったものをなかったとするのはだめでしょ」と逃げ道を封鎖した上で、「ロープの中(=画面の中?)なら何でも許されるんだよね」と、劇場型の戦争をテレビで見ることに慣れてしまった現代人を厳しく追い込んでいく。そして、戦いの中で生まれた希望が、現代へとつながり・・・

冒頭にもちょっと書いたが、これでもか、というくらいにしつこく続くミ・ライ村の虐殺シーンは宮沢りえさんの迫力もあいまって、思わず吐き気を感じるくらいである。

そして、いつもの通り、明確な救いではなく、蜘蛛の糸のようなほんの一筋の希望だけを残して物語は終了する。「お前達、本当にそれで良いと思う?」というメッセージを残して暗転。

最後に流れる「アローン・アゲイン」。あぁ、中島みゆきの歌にもあったよねぇ。

車のガラスに額を押しつけて
胸まで酔ってるふりをしてみても
忘れたつもりの あの歌が口をつく
あいつも あたしも 好きだった アローン・アゲイン


そうそう、中島みゆきといえば、1984年のこんな歌も今回の芝居にはシンクロするな。
僕たちの将来(ぼくたちのしょうらい)
【作詞】中島みゆき 【作曲】中島みゆき

あたしたち多分 大丈夫よね
フォークにスパゲティを巻きつけながら彼女は訊く
大丈夫じゃない訳って何さ
ナイフに急に力を入れて彼はことばを切る
ここは24時間レストラン
危いことばをビールで飲み込んだら
さっき抱き合った宿の名前でも もう一度むし返そうか
僕たちの将来はめくるめく閃光(ひかり)の中
僕たちの将来は良くなってゆく筈だね

電話すると周りで聞いてる
友だちのいない時はいつなのって彼女は訊く
電話してもいつもいない
君の休みの曜日を変えちまえよと彼は言う
あたしも都合が おいらも都合が
危いことばをビールで飲み込んだら
君がとび込んで来てくれた夜の 話をむし返そうか
僕たちの将来はめくるめく閃光(ひかり)の中
僕たちの将来は良くなっていく筈だね

青の濃すぎるTVの中では
まことしやかに暑い国の戦争が語られる
僕は 見知らぬ海の向こうの話よりも
この切れないステーキに腹を立てる
 
僕たちの将来はめくるめく閃光(ひかり)の中
僕たちの将来は
僕たちの将来は
僕たちの将来は良くなっていくだろうか


なんか、そんなこんなが色々複雑に絡み合って、いやぁ、久しぶりに凄い芝居を観た、という感じです。

もう前売りチケットは当然のごとく完売だけど、演劇ファンならこの舞台は必見だと思う。毬谷友子の桜の森、深津の農業少女と同様、宮沢のロープは長いこと語り継がれるんじゃないだろうか。僕は多分楽日にもう一度観にいってきます。

#背後に書いてあったのはミ・ライ村の村民の名前ですか?人数的にそれっぽいですね。

野田地図第12回公演『ロープ』
(12月6日 14時〜 Bunkamura・シアターコクーン)
●作・演出:野田秀樹
●出演:宮沢りえ 藤原竜也 渡辺えり子 橋本じゅん 宇梶剛士 三宅弘城 松村武 中村まこと 明星真由美 明樂哲典 AKIRA 野田秀樹


余談だけど、舞台が終わった後都内某所で観劇した4人で飲んでいたら、出演者の多くが揃ってそのお店にやってきた。もちろん野田秀樹氏、宮沢りえ氏、藤原竜也氏、宇梶剛士氏など勢ぞろい。思わずこまちゃん(現在はラーメン屋)と向井さん(現在はマイホースまでご購入らしい)にメールしちゃった(^^; プライベートのところを申し訳ないかなーと思いつつ、野田さんにサインをもらい、宮沢さんには「喉の調子がイマイチみたいですが、まだまだ先が長いので頑張ってください」と声をかけてきた。すぐ隣で皆さん楽しんでいたので色々漏れ伝わってくるわけですが、そこで話されていたことや飲み会の様子は秘密ってことで(^^ あぁ、一つだけ。藤原君はサンダルでした。

この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
「ロープ」初日に行ってきました。 プロレスが舞台。プロレスって苦手なんですけど、面白かった〜 で、そのあと、いろいろ考えさせられました。 野田さん、さすがな舞台です。 作・演出・出演  野田 秀樹 衣装       ひびのこづえ 出演       宮沢りえ、...
「ロープ」おもしろくって、そして・・・【ふわふわ気分で】at 2006年12月08日 22:52
25年間、慣れ親しんできた野田大師匠の戯曲は、若かりし頃の、夢多き世界観から、現人類が向き合わねばならない、目を背け続けてる、沢山の現実を、痛烈に見せつける、社会劇に進化した。 変貌ではない。 単なる方向転換ではなく、約30年間の蓄積に上積みし続けている....
野田地図“ロープ”観劇【元女優の先生日記】at 2006年12月11日 15:49
  信じていたものが姿を失い、命を賭した思想が消滅してしまった終戦直後の 人々...
弱さをいとおしむ【『ガイア系おたくの作文手帳』】at 2006年12月29日 13:23
この記事へのコメント
お芝居好きとは知りませんでした。ご一行様と遭遇するなんて凄い。
ヤフオクにも出てないみたい。興味をそそられたんだけどなぁ。残念。
Posted by 新人事務局員 at 2006年12月08日 16:47
はじめまして、TBありがとうございました。
こちらからも、させていただきました。

「ロープ」よかったですね。
メッセージ性が強烈でした。
あの歌の題名は「アローン・アゲイン」ですか、聞いたことのある歌だと思ったけど・・・歌もよかったです。

竜也くんといっしょになったんですって、いいなぁ〜
どこの店ですかぁ、なんて質問はダメですね(笑)
Posted by くるみん at 2006年12月08日 22:59
こまちゃんと向井さんを知ってるあなたはどなた?(笑)
Posted by 真美 at 2006年12月11日 15:47
>新人事務局員さま
>ヤフオクにも出てないみたい。

あれ?ヤフオクには結構たくさん出ていると思います。しかも、今のところそれほど値段は高くないと思いますよ。

#あと、当日券という手もあります。

http://search.auctions.yahoo.co.jp/jp/search/auc?p=%CC%EE%C5%C4%A1%A1%A5%ED%A1%BC%A5%D7&auccat=0&alocale=0jp&acc=jp
Posted by buu* at 2006年12月11日 16:02
>くるみん さま

>竜也くんといっしょになったんですって、いいなぁ〜

一緒のトイレ使っちゃいました。一緒に写真撮っている人もいました〜

>どこの店ですかぁ、なんて質問はダメですね(笑)

まぁ、それは内緒ってことで。
Posted by buu* at 2006年12月11日 16:04
>真美 さま

>こまちゃんと向井さんを知ってるあなたはどなた?(笑)

あはは、昔ラーメン評論家をやっていたので、その関係でこまちゃんとかあやさんとかとは今も時々話をすることがあります。先日もこまちゃんとは一緒にラーメンを食べに行って来ました(^^

向井さんはその前からの知り合いで、一番最初の縁は、日本青年館の桜で僕が当日キャンセル待ちで最前列に座ったとき、向井さんから楽日の雛あられをもらったことかな?年に一度くらい飲みに行きます(笑)

もちろん真美さんのことも良く存じております、一方的に(笑)
Posted by buu* at 2006年12月11日 16:08
はじめまして!
『ロープ』初日を観ました。今週、来週とまた観に行く予定です!巷でいろいろ賛否両論言われるようなところまで深く観切れていないので、次回はしっかりと、見落としたものを、拾ってきたいと思います。
私の第一印象も、まずは「面白かった!」だったので(少しモヤモヤもありましたが『アローンアゲイン』で中和されたような気がします)社長様の感想と同じで嬉しかったです!!
私は世代的にもベトナム戦争をよく知らないので(物心つくかつかないか)安易に「面白かった!」なんて言って、もしかするとヒンシュク者なのかもしれないな・・・と、他の方々の感想を読んで、へこんでいたところだったのです。でも、どうやら、そうでもないのではないか!?と、昨日あたりから、そう思えるようになりました。これで吹っ切れました!堂々とまた、自分なりの観方で、観てこようと思います!
素敵な感想を、どうもありがとうございました☆

Posted by チェルシー at 2006年12月12日 10:09
>今週、来週とまた観に行く予定です!

すごい!

>もしかするとヒンシュク者なのかもしれないな・・・

そんなことないですよ。芝居の感想なんて、観た人の数だけあるはずですから(^^ 折角ブログというツールで色々情報を発信できるのですから、気楽にやりましょう(^^
Posted by buu* at 2006年12月18日 00:38
はじめまして。ミクシの野田コミュからやってきました。

宮沢りえの実況シーンは本当にすごかったですよね。私はもう少し狂気が欲しいなと思いましたが、好みの問題なのでまあそれはそれで。
最近の野田作品は本当に率直なんで頭がぐしゃぐしゃにかき回されて大変です。

ちょっと最近こんな舞台は久しぶりなので私は機会があればもう一度当日券で見に行こうかなと思っています。

Posted by 屋上の曜子 at 2006年12月22日 09:00
>屋上の曜子さま

僕もなぜか今回は3日目(野田さん自身が「一番出来が良い」と言っている日)と楽日(まぁ、なんだかんだ言っても見納めなので)の両方をキープできたので、最後にまた観てきます(^^
Posted by buu* at 2006年12月22日 11:07