2007年03月15日

サボテンの花

a1a6f8bc.JPG宮部みゆき原作の同名小説を舞台化したキャラメルボックスの新作。

例によってブログライター枠で観てきました。だから、タダです。で、タダで観させてもらっているのだから普通なら良いものはさらに素晴らしく、そうでないものはそれなりに評価するところでしょうが、書くのが僕なのでストレートに思ったことを書きます。

以下、東京公演は始まったばかりなのでネタバレを極力避けつつ、追記に書きます。読みたくない人はここでさようなら。
さて、ここから評価。

正直、かなり眠くなる舞台だった。そもそもストーリーにあまりふくらみがなく、「あぁ、小学生のときは楽しかったね」「先生は大変だね」ぐらいのもので、あとは役者さんの歌を聞くぐらいしかやることがない。同劇団が前からやりたかった音楽劇、とのことだったんだけど、みんなで楽器を弾くシーンでは、少なくともフォークギターについては全員僕より下手だったと思う。もちろん音はしっかり聞こえてこなくて、ネックの上を動く左手の指の動きと、ストロークしている右手を目で見ていての感想なんだけど。それからもっと問題だったのは歌。恐らく劇団のほうでも「この面子では場面を歌で引っ張ることができるだけの歌唱力を持った役者がいない」と思ったんだと思うのだけれど、外部から客演という形でコング桑田さんを招聘。この試みは見事にはまっていて、しっかりと歌唱シーンを引っ張っている。と、こ、ろ、が、桑田さんと他の人のレベルの差が大きすぎ。唯一、歌の場面で頑張ってるなーと思ったのは渡邊安理さん。彼女は自分が得意とする音域ではきちんと聞かせるだけの歌唱力を持っていた。あとは・・・・・うーん、どうなんでしょうね?僕も歌は決して上手じゃないので、松田聖子と田原俊彦だと松田聖子の方が上手、というのはわかっても、柏原芳恵と河合奈保子だとどっちが上手かわからない、ぐらいの判断力しかないのだけれど、特に残念だったのは多田直人さん。あそこまで外されちゃうと、ちょっと舞台全体にしまりがなくなるというか、なんというか、駄目なんじゃないかなぁ。モニタースピーカーの調子が悪かったとか、そういうことでしょうか。あと、どの歌唱シーンでも、本人達は楽しんでやっているのかも知れないのだけれど、その楽しさが舞台上で空回りしていて、客席まで届いてこないんですよね。いや、みんなには届いていたのかも。少なくとも僕には届きませんでした。だから眠くなった。「よし、今回はこんなことにチャレンジしちゃおう」っていうのは良いと思うんだけど、それを消化しきれていないというか、「自分達で頑張る」ところで終わってしまっていて、観客に見せるレベルまで行ってないと思う。

ストーリーの組み立ての部分で「うーーん」と思ったのは渡邊安理さんの役どころ。あらら、また○○ですか(一応自粛して伏字)、という感じで、つい最近このプロットを観ているのでデジャヴ感が強いというか、マンネリというか、ちょっとどうなのかなーと思う。

今回初舞台だった井上麻美子さんは遠くから(18列)見たこともあって最初声を聞いて岡内美喜子さんかと思ったんだけど、パンフレットを見直したら井上さんだった。声がそのくらい似ていた。が、演技はやっぱりまだまだ。もっとたくさん場数を踏まないとなんでしょうね。ただ単に立っているシーンでも、他の役者さんたちは何かを表現しようとして工夫があるんだけど、彼女だけ明らかに棒立ち。なんか、お人形さんがそこに立っている、みたいな感じ。普段は当たり前のこととして何気なく観ているような場面でも、こうやって対照して観ることができると「なるほど」と思ってしまう。

なんか、劇団として感じるのは、正攻法での「やりたいこと」を製作サイドとしてやり切っちゃったんじゃないか、ということ。20周年が終わったあたりでそんな感じになってしまって、これはどうかな?これは面白いかな?と色々やってみて、自分たちのモチベーションの維持に四苦八苦しているんじゃないだろうか。「さぁー、これで行くぞー!!!!!!」と無理やりテンションを上げているような。ま、そうやって頑張るのは良いんだけど、おかげで作品に当たりはずれが出ているような。今回の作品は上にも書いたように音楽劇というのを消化しきれてなくて、はずれだったと思います。キャラメルボックスという劇団に対する愛情というスパイスがないと、ちょっと辛いんじゃないかなぁ。

ただ、歌はこれから上手になるかもしれないし、歌いやすくする工夫も可能だと思うので、公演が後半になるにしたがって良くなる可能性もあると思います。観にいくなら、後半がお勧めかも。

評価はコング桑田さん、渡邊安理さんの頑張りに☆半分おまけして、☆1つ。

オフィシャルの公演情報はこちら

余談1 以前、ブログライター企画はゲネプロに招待してもらえたんだけど、今回は普通の客席。ゲネプロ招待の方が個人的には嬉しい。少しでも前で観たいので(笑)。

余談2 このあと新宿三丁目の駅のすぐそばにある「○助」というラーメン屋でラーメンを食べたのですが、このラーメンが意外に良くてびっくり。新宿の九州系では一番かも?あとでブログに詳細を書きます。

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