2007年06月23日

野田地図 NODA・MAP番外公演「THE BEE」

シアタートラムで昨日から始まった野田地図の番外公演「THE BEE」を観てきた。

少ない役者、短い上演時間と、すっかり知力も体力も衰えてしまった僕には非常にありがたい芝居。

人間、小道具を次から次へとその役割を変えさせていく野田スタイルが良い意味で集約された感じで、安心して観ていられる。

#今の野田秀樹のスタイルは、おおまかに言うと次の4つ。
1.道具を多面的に利用する(観客に想像力を要求)
2.一人の人間に複数の役割を与える(=オシムスタイル)
3.スピードを変える(=スローモーションの多用)
4.人間の良心への期待(落ち続けることが出来る夜長姫との対比)

今回、舞台で大きな役割を果たすのは一枚の大きな紙。これが最初から最後まで舞台の中央に存在し、そしてクライマックスまでに広げた風呂敷を全て包み込む役割までを果たす。特に影絵を投影するスクリーンとしての役割は秀逸で、またそこで展開される影絵と映像の混在具合が非常に面白い(影なのかと思ったら影ではなく、途中からそれが勝手に動き出すとか)。

短い芝居の中で受け取るメッセージは人それぞれだと思う。マスコミの、被害者に対する傍若無人ぶりとか、警官の役人的な対応とかに怒りをぶつける人もいるだろうし、絶対的な強者が弱者と表裏一体であることを再確認する人もいるだろうし、被害者が一転して加害者になることを目にしてイラク問題について考える人もいるはず。じゃぁ、僕は何を感じたのかというと、野田さんの芸風って、最近変わったなぁ、ということ。非常にストレートに自分の問題意識を芝居を通じて観客にぶつけるようになったと思う。どこまでも落ちていく夜長姫を殺すことによって「落ちていくことができない人間」を浮き彫りにしたのが以前の野田秀樹だが、今の野田秀樹は前作(今作はその前にロンドンで上映された芝居の日本バージョンだが)の「ロープ」同様、直接落ちていくことを表現している。

この感覚、最近何かで感じたなぁと思ったのだけれど、思い出した。

テレビのワイドショーやら、歌番組やらに出演している役者達の反応。物凄い勢いでうなずいたり、思い切り眉間に皺を寄せたり、そうそう、ホンジャマカの恵俊彰やら、東ちづるあたりがテレビで展開しているアレ。「お前ら、ブラウン管(そろそろ死語)の前にいる人間を馬鹿にしているだろっ」と思ってしまうようなわかりやすいリアクション。あれにちょっと似ている。昔はああいうリアクションって小林幸子だけだったけれど、最近はみんなやってるよねぇ。なんか、テレビの製作サイドに馬鹿にされているようなアレ。まぁ、そこまで極端ではないのだけれど(笑)。

いつから芸風が変わったのかって、やっぱり9.11以降なんだろうなぁ。

ちなみに役者の部分でも色々と見所があった。特に途中からは影に徹する浅野氏が面白い。

評価は☆2つ半。日本バージョンは7月9日まで。

この記事へのトラックバックURL