2008年02月12日

言葉が削除されて安心してませんか(笑)?

ときどき恐ろしいほどの馬鹿とかが現れるので世の中というのは面白いのだけれど、その出現場所によっては面白いを通り越して悲しくなることがある。デイトレーダーや投資ファンドを評して「最も堕落した株主」「バカで浮気で無責任」などと発言したのが普通の生活者だというのなら「はぁ、そうですか」で済むのだが、それが経済産業省の次官(経済産業省のトップ)だというのだから、これは猛烈に悲しくなる事態である。

この発言が飛び出した講演のテーマは「会社は株主だけものか?」だそうだが、こんなことは答え一発。株主だけのものに決まっている(会社法105条に規定されている範囲で、だけど)。こんなことは僕の授業を受けている大学生だって知っていること。

報道によれば、「本当は競輪場や競馬場に行っていた人が、パソコンを使って証券市場に来た。最も堕落した株主だ」「馬鹿で浮気で無責任なので、議決権を与える必要はない」「(米投資ファンドのスティール・パートナーを引き合いにして)経営者を脅す悪い株主」などと発言したそうだが、経済産業省はホームページ上に北畑次官が講演した講演録を掲載し、「次官の真意はこれを読んでもらえればわかります」と述べているにも関わらず、8日に公表された講演録からは該当部分は削除されている。全てを公開しない理由は不明だ。


「会社は株主だけのものか?─企業買収防衛策・外為法制度改正・ガバナンス─」北畑事務次官〔1月25日講演録〕


ちなみに会社の持ち主が誰か、ということについてはこのPDFファイルの25〜26ページあたりに記述されているが、この次官の考え方は「会社法では会社は株主のものだし、世界的なグローバルスタンダードもこれを支持しているが、日本においては社長以下従業員、取引先、地域住民を含めた全体の利害関係者のものであるという実態がある」というもので、明言こそしていないものの、その日本の状態を良しとするというスタンスである。問題発言部分は削除されていて、次官の真意はこれを読めばわかるわけだが、じゃぁその真意がまっとうかというと全然そんなことないのがまたウケるのである。アホかと。胸を張って「これが次官の真意ですよ」といえるような内容じゃないでしょ(笑)。

余談だが、このネタを報じている「火ダルマ経産事務次官の“正体” 」(ゲンダイネット)では、「問題になった講演会でも「会社は従業員や取引関係者など、ステークホルダー(利害関係者)のもの」という正論を吐いていた。」と書いてあるのだが、どこが正論なのかと突っ込みたくなる。ゲンダイの記者も相当アタマが悪い。

すでに日本の一人負けという状態が明らかになりつつあるわけだけれど、なぜそうなっているのかって、経済産業省のトップがこの有様だからなぁ(笑)。

追記(2008/2/13/0:23):今日はこのエントリーをアップしたあとでたっぷり4時間ほど取締役会をやったんだけど、そのラストでこの話題になって、「あの経産省のPDFを見たか?」と取締役の一人に聞いたら、「読んでないけど、池田信夫さんのブログで語りつくされてましたよ」とのこと。どれどれ、と思って読んだら確かにその通り(笑)。これなら記事を書く必要はなかった(笑)。こちらに語りつくされているので、興味がある方は是非どうぞ。乗り遅れていて恥ずかしい(笑)。

買収防衛策は有害無益だ(長文)

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