「水平線の歩き方」同様、ブログライター枠でただで観劇。観たのは20列、17番で、かなり後ろの方だけれど、中央というポジション。
一人になりたがっている子供がちょびっと成長するという話。この芝居、ストーリー上の難点として、「水平線の歩き方」同様、ねたばれが早すぎるというのがある。最初から大内と實川さんの関係がギクシャクしていて、その謎がはっきりしないところがこの芝居の肝である。ところが、そのねたばれが早い。その謎解きをラストに持ってきたらもっとずっと良かったと思う。
演出上の細かいところを言うと、何がボートになるのか、というところで工夫があるのだが、そもそもその小道具自体いらない気もする。そうした小道具を使わないと、結果として観客の想像力に依存することになるわけだが、そういう部分でこの劇団は観る側の能力を信頼していないところがある。ストーリー面でもそうだけれど、もうちょっと観る側に自由度を持たせたらどうなんだろうな、と思う。
實川さんの「男の子」の演技はいつも上手。できれば野獣降臨のブリアンの役などをやらせてみたい。少年役の名俳優は結構多いのだけれど、今の彼女は結構色々できそうな、おいしい時期にいると思う。ぜひ一度、野田秀樹演出の舞台に立ってもらいたい。また、坂口さんはいつもどおり安定した演技だけれど、いつも似たようなキャラ。もうちょっと新しいキャラを与えられないものか。大内さんは今回は存在感が今ひとつだった。彼は最近キャラメル以外で2回観ているのだが、客演のほうが生き生きしていた印象がある。井上さんの怪演っぷりが昔の伊東由美子さんみたいで面白かった。今後の活躍が楽しみ。
時間的には水平線よりもずいぶん時間が早く感じた。役者の面で言えば、この面子はかなり良い面子なので、ハーフではもったいない気もする。
本当に細かいところでひとつ気になったのは、逃げる→捕まえる、となるべき演技が、逃げると捕まえるが同時になってしまっていて、やや不自然だったこと。
ところで、今から10年前って、携帯電話はそんなにポピュラーなグッズだったかなぁ。まだポケベルとか、PHSとか、そういう時代だった気もする。
こちらも芝居初心者には結構お勧めできる。「水平線の歩き方」よりは若干工夫がある。評価はトータルで☆2つ。前から10列目ぐらいなら4000円払う価値があると思う。
ところで、キャラメルボックスがこの手のハーフタイムシアターが赤字だと表明している。もちろんその内容は嘘ではないと思うのだけれど、見る側からすれば、この1時間の芝居に対して4000円というのはやはり割高感が伴う。普段の半分の分量なのに4000円かぁ、というのが正直なところ。劇場は2時間一本でも1時間二本でも基本的に賃料は一緒のはず(多少の変動はあるかもしれないけれど)。役者の日当も、8人を二本立てでも、16人で一本でも、基本的に変わらないはず。となると、パンフレットをつくったり、舞台装置にお金をかけたり、というところが二倍になるのが痛いのだろう。たしかに2時間一本よりは1時間二本の方が絶対にお金がかかる。しかし、その点で言えば2時間一本なら6500円のところ、1時間2本なら合計8000円なわけで、そのあたりの差額は吸収できていても良いのに、と思うのである。このあたりを考えると、ハーフタイムシアターに関しては通常公演よりも動員が難しいということなのかも知れない。しかし、ちょっとこの芝居に4000円より高額を払うのは難しいよなぁ、というのが正直なところ。僕はこの劇団のハーフタイムシアターが結構好きなんだけれど、赤字じゃぁなぁ。なかなか「もっとやってくれ」とも言えない。
それからもう一つ思うのは、もうちょっと座席ごとの金額設定を細かく分けたらどうなのか、ということ。最前列と20列目が同じ値段と言うのはいかにも解せない。最前列なら15000円、5列目なら10000円、10列目なら5000円、15列目以降なら2000円といった具合に、場所によって細かく価格設定をしたらどうなんだろう。キャラメルボックスの芝居は座席の位置によってかなり受ける印象が異なる。制作サイドはそういう指摘に対して大抵の場合、「後ろから観ると、芝居の全体像が観えて、それはそれで面白いんですよ」ということを言うのだが、それは方便。役者の能力にもよるが、やはり芝居は前で観るに越したことはない。汗が見える、涙が見える、つばが見える位置で見る迫力は、20列で見るそれとは全く異なる。そして、後ろに行けば後ろに行くほど、それは演劇から映画の領域に近くなる。今日は20列目でタダで観たわけだが、僕はこの場所での観劇には2000円でも払うことはない。「じゃぁ、ファンクラブに入るなり、頑張って発売初日にチケットを取れば良いじゃないか」という指摘がありそう。ごもっとも。しかし、それではファン層の拡大にはつながらない。コアなファンの、コアなファンによる、コアなファンのためのキャラメルボックスになるだろう。実際、劇団を取り巻く雰囲気はそういうものになってきている気がする。そして、そのせいもあって、僕なども観にいく機会がだんだん減ってきているのである。既存のファンも大事だが、新しいファンを獲得することも考えてみたらどうなんだろう。それがなかなか難しいことだということは百も承知なのだけれど。
なお、こちらもトラックバックの都合上、製作総指揮の加藤さんのブログにリンクをはっておきます。
ハーフタイムシアター、最高の初日開く!!