2008年06月26日

WEB 2.0(っていうんですか?)へのステップ

最近、ネットで犯罪予告をして捕まる奴が凄く多い。なぜこういう馬鹿が出てくるかって、「掲示板に書いても匿名だから捕まらない」と勘違いしているからだと思う。実際には、警察が本気になればかなりのところまで調査できてしまうのがインターネットである。そういう事実に関する情報がないから、フラフラといたずらをして逮捕されてしまうわけだ。要は、「ネットを使っているつもりで、ネットに踊らされている」のである。

そして、こういうニュースを読んで、「馬鹿だなぁ」と思っている人は結構いると思う。しかし、そういう人たちでも、「あなたは本当に自分がネットに踊らされていないと言い切れますか?」と聞かれたら、答えに詰まるんじゃないだろうか。そして、答えに詰まらない人がいるとすれば、逆にその人たちはすでに踊らされている可能性が高い。かく言う僕自身も、かなりネットに踊らされているところがあるよな、と思っているくらいだから。

このあたりについては先日もざっくりと事例を紹介したわけだが、

結局は個人に帰着するネット情報

会社も、個人も、なんだかんだ言ったって、お金で動かされる。そして、その集合体が社会であるから、社会の雰囲気とか、流行と言ったものも当然お金で動かすことができる。つい最近の顕著な例が三谷幸喜氏の映画のプロモーションである。

ここに監督・キャストのメディア露出リストがあるのだけれど、

「ザ・マジックアワー」はフジテレビと東宝の製作だからフジテレビに出演するのは当たり前としても、その数が尋常じゃない。その上で、NHK、日本テレビ、TBS、テレビ東京、テレビ朝日と、満遍なく出演している。こうやってお金をかけることによって、「映画がはやっている」という雰囲気を作ることに成功している。当然、そこで使ったお金は映画やそのDVDで回収できる見込みがあるのだろう。

#フジテレビに関しては自分のところで持っているコンテンツに出演させているだけだから、費用はかからないはず。このあたりは電波の私物化だとも言えるが、まぁそのあたりは別の機会に考えてみる。

あまりに露出が多すぎて逆効果になりかねないとも思うくらいだが、とにかく映画の知名度だけは間違いなくアップしているはずだ。特に観る映画も決めずに映画館に行って、「さぁ、隠し砦の三悪人と、インディ・ジョーンズと、ザ・マジックアワーの3つのうちどれを観ようか」と考えたときには、この宣伝の影響でザ・マジックアワーを選ぶ可能性もそれなりにあると思う(まぁ、隠し砦も東宝だけど)。

と、これは「お金で雰囲気を作ってるでしょ」という事例なのだが、問題はネットである。上に挙げた記事で書いたのは、「WEB 2.0とかいって口コミ情報とかをありがたがっているけれど、それだってお金の力で色々ねじまげられているんだよ」ということ。

例えば、食べログでは、僕はそれなりのレビュー数を書いていて、また閲覧者の「参考になった」による評価もあるので、僕のお店に対する持ち点というのはかなり高い。簡単に言えば、僕が5☆をつけたりすると、それだけでその店は結構なランキングになったりする。一方で、どこかのお店がバイトに対して「お前達、うちの店について食べログで好意的なレビューを書いて、5☆で投稿しておけ」と命令したとしても、それはランキング上あまり効果がない。なぜなら、そのバイト君のレビューの影響力が小さいからだ。

こんな状況の中で、僕はそうしたランキングには全く興味がない。なぜなら、僕は食べログを自分のデータ置き場としてしか考えていないからである。僕がデータを置いて、それを集合体の一要素として食べログが扱うことにも特に興味がない(正確には「なかった」)。

しかし、最近の食べログは昔の「みんなで楽しくやりましょうよ。皆さんの楽しみの延長線上に、私たちの利益もあるんです」という姿勢が失われてしまった。まぁ、食べログの前にあった(今もあるけど)アスクユーにしても、ライブドアグルメにしても、同じ道を歩んだわけで、それゆえにレビュアーにそっぽを向かれ、今の食べログの隆盛につながっているのだけれど、残念ながら食べログも先行2サイト同様、すでに衰退の道に入ってしまったようだ。しかしまぁ、世の中にあるサイトが10年といったタームで存続することは非常に困難な話で、それは例えばミクシィみたいなサイトであっても同様である。食べログは出来てからそろそろ3、4年だと思うのだが、そろそろ老年期に入っていても無理はない。さて、そういう、代謝が悪くなってきたサイトに対して僕が思うのは、「あんた達『だけ』が良い思いをしようとするなら、こちらにも考えがありますよ」ということだ。例えば、今の僕のレビューの価値を利用して、「高い評価が欲しい店は有料でやってあげますよ」という商売のことも考えないではない。一部のお店にとって見れば、月額3万円ぐらいでその地域でいつも上の方にランクされるなら悪い話ではない。広告宣伝費としてみてもそれほど高額ではないし、自分のところでウェブサイトを作る手間も省ける。こちらとしても、例えば各地域一軒限定で満点レビューを書いてあげる店を募集し、それが100地域もあれば、月額300万円のお小遣いになる。

こうした考え方は、ある意味で非常にゲリラ的ではあるのだけれど、実際にはすでにあちらこちらで実施されている。企業が実施するSEOなどはその典型例である。サーチエンジンに対して自社のサイトを最適化するのがSEOだが、そこには「利用者に対してサーチエンジンを最適化する」という初期の、しかも本来あるべき思想はかけらもない。うちの会社などは「サーチエンジンで上位に表示されるためにはどうしたら良いのか」という相談を受けても、「技術的には可能ですが、サーチエンジンはあくまでも利用者に対して最適化されるべきで、必要以上の手間とお金をかけるべきではありません」と馬鹿正直に断っているのだけれど(嘘だと思うなら、ライブログの全てのクライアントに質問してみてください)、その一方で、今ネット関連で一番儲かるのがSEO分野であることもまた間違いのない事実である。なぜなら、SEO対策は一度はじめてしまったら中止することが容易ではない。そして、各業者がしのぎを削ってサイトを最適化しまくるので、つねに競争がある。業者としては、企業のお金でレースを延々と続けることができるので、こんなに美味しい話はないのである。

#例えば映画の公式サイトなど、立ち上げ直後からきちんとSEO対策を実施して、公式サイトが一番上に表示されるようにするといった、「正しいSEO」ももちろん存在する。検索者サイドからすれば、映画の公式サイトは当然のことながら検索結果のトップに出てきて欲しいはずだ。

企業のSEOに対する倫理観と言うものは実際にはほとんど存在せず(需要と供給が均衡している自由競争下では必ずしも倫理観は必要ではない)、日本の場合はどちらかというとそれは個人に存在するケースが多い。しかし、個人の倫理観があるから、個人の発信する情報にはバイアスがかかっていないんですか?その集合体である口コミ情報もバイアスがかかっていないんですか?と問われれば、もちろんそんなことはない。上に挙げたエントリーでも取り上げているように、アフィリエイトという形で個人が収益につなげているケースはいくらでもある。そしてそれが集合体となり、雰囲気を作り上げているケースもあるはずだ。

本とか、CDとか、DVDとか、ゲームとか、アフィリエイトによって個人が儲けることができる部分も少なからずあるのだが、グルメという分野はなかなかアフィリエイトにつながらない。結果としてレビューをせっせと生産しているレビュアーはほとんど利益につながらない。そうした状況において僕は以前「ラーメン四天王」などを結成するなどして、一般のレビュアー(評論家)がそれなりに存在感を示せる可能性を提示したわけだが(今でもその延長線上で大崎さんや北島さんは生活している)、それはいわばレアケース。ウェブ2.0的な世界観と言うのは、「みんながちょっとずつ情報を提供して、みんなでちょっとずつ儲けようよ」というところに行き着くはずなのだが、グルメ分野についてはまだその仕組みが整備されていない(つまり、ビジネスチャンスがある)。仕組みとして一般の人たちが儲ける手法がないのであれば、それぞれがゲリラ的に動くしかないわけで、上に書いたような「食べログのレストランに対する最適化ビジネス」などというのも成立するわけだ。

もちろん、そういう活動の結果として食べログのレビューランキングは信用ができないものになるわけだが、それへの対応はあくまでも食べログがやるべきことであって、レビュアー自身が考えるべきことではない。そもそも、そういった簡単な細工で混乱が生じるようなシステムであるとすれば、システムの方に問題があるのである。

僕が今、SNSのビジネスをやっていて思うのは、「コンテンツを生産しているユーザーのメリットがほとんどない」ということだ。これはSNSだけではなく、例えば僕が利用しているYahoo!ムービーなどでも同様である。映画のレビュアーたちは自己顕示の場、および記録のストレージとしてサイトを利用しているが、それによって得られるのは漠然とした「読んでもらっている」という満足感だけである。そして、この満足感は、少なくとも日本人の中では決して無視できないものである。だからこそ、大勢の人がブログやら、SNSやら、2ちゃんねるやらで好き勝手に情報を書き散らしているのである。

ポイント1:読んでもらっているという満足感は決して小さくない

ウェブ2.0の定義のようなものは僕は実は良くわからないのだけれど、アマゾンのアフィリエイトプログラムあたりを中心とした「情報提供者にもきちんとメリットがある」という状況がもし2.0なのであれば、SNSとか、ウィキとか、食べログとか、Yahoo!ムービーあたりは全て1.5ぐらいのサイトである。こうした、1.5ぐらいの分野については2.0までのラグがあるわけで、そこを埋めるところには必ずビジネスチャンスがある。

ポイント2:情報適用者への「読んでもらっている満足感」以外のメリットを供給

さて、WEB2.0周辺にはこういう、「情報発信者に対するメリット」の他に、もう一つ大きな問題がある。ミクシィの僕の日記へのコメントでMaster e-さんが「ミクシィの書評はレビュー数が10〜50程度だとマシな本があるのだが、100を超えたぐらいになるとろくでもない本ばかりになる」と言っていた。 実は僕も東大の講義か何かで同様のことを喋っているし、またラーメン評においても非常に似通った主張をしているのだけれど、「評価というものは、大衆性が高まれば高まるほど質が低下する」ということである。

例えば、日高や幸楽苑のラーメンを食べて「うまい」と感じる人もそれなりにいるのだろうが(いないならあんなに数が増えるわけがない)、ラーメン評論家でこの手の店をうまいと評する人間は恐らくほとんどいない。僕に言わせれば、日高なんて食べる気にもならないし評価する気にもならないのだけれど、もちろん、こういう店を美味しいと感じる人がいても全然構わない。全然構わないが、日高をうまいと感じる人のラーメン評は全く信用する気にならない。そんな僕にとって、「日高をうまいと感じる人のラーメン評」というのはノイズに他ならないのだけれど、現在のWEB2.0上ではそれをフィルタリングする機能が欠けている。結局、属人的な判断でフィルタリングしなくてはいけないのが現状なのだ。ほとんどの日本人が「日高がうまいと感じる人の感想でも構わない」と考えているのだとすれば別にフィルタリングの必要性はない。便所の落書きよろしく、書きたい人がただただ無駄に情報を垂れ流していて、暇人がそれを読むということだ。しかし、本当にそうなのか。情報の読み手は、やはり「良い情報をフィルタリングして読みたい」のではないか。現状ではその手法が存在しないから、仕方なく有象無象がごっちゃになった情報にアクセスしているのではないか。

上に挙げたエントリーに対してはてなブックマーク

「自称ITベンチャー社長には「では自分はITでどう解決するか」を期待したい」


と、からかい半分のコメントが掲載されているが、まさにその通りなのだ。

ポイント3:優良情報のフィルタリング機能への期待は大きい

今求められているWEB2.0的システムとは、情報発信者の「読んで欲しい」という欲求を満たし、その他にも情報発信者にメリットがあり、そして、閲覧者にとって有益な情報がフィルタリングされているシステムである。

もちろん、ライブログはそういうシステムを構築し、提供したいと考えている。

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この記事へのコメント
>ミクシィの僕の日記へのコメントでMater e-さんが
Master e-さん?

と誤字指摘だけでもなんなので。
「属人的な判断でフィルタリング」を自動化できないものですかね?
食べログくらいデータがあれば、自分の嗜好から外れた人の情報を排除した「俺専用ランキング」くらいできそうなもんですけど。
レビューすればするほど精度が高くなるだろうから(アピールはしづらいけど)自分の嗜好に忠実なレビューを沢山書くインセンティブもあるし。
Posted by うらかわ at 2008年06月28日 01:31
>Master e-さん?

おお!

>「属人的な判断でフィルタリング」を自動化できないものですかね?

ちょっとアイデアがあるので、実装した奴を近いうちに公開してみます。
Posted by buu* at 2008年06月30日 20:03