2008年07月31日

ポスドク問題で金を稼いで何が悪い

先日、サイエンスカフェ・ポータルの管理人であり、特定非営利活動法人サイエンス・コミュニケーション会員でもある立花さんとゆっくり飲む機会があった。

【イベントレポート】WEB2.0(っていうんですか?)ブログオフ会

そこで話した内容はまぁ僕サイドではほとんどオープンにして構わないことなのだが、立花さんサイドではどうなのかわからないので、とりあえず判断がつかない部分についてはオープンにしないでおく。が、そこで僕が思ったことはここで書いてしまっても問題がないので、書いてしまおう。

面白かったのは、「ポスドク問題とか、教育とか、サイエンス・カフェとかで儲けていると不快感を示す人がいる」という話。アホかと。そんなことを言ってる奴らにポスドク問題の解決なんか無理だろ。だって、ポスドク余剰問題と言うのは、「余っているポスドクにどうやってお金を稼がせるのか」という話。日本人はとかく金儲けを白い目で見がちだが、生産して、金を稼がないから日本は大変なことになってるんじゃねぇか(笑)。

テレビでしたり顔で節約生活を説いている経済評論家の言葉を信じて、生産性のアップを図らずに出費を抑えたわけだけど、そんなことは原油高騰と環境対策という、完全に外的な要因によって高くなった生活コストを吸収できなくなってきている。国内はそんな状況なのに、中国、香港、インド、シンガポールといった国が好況のおかげでインフレの波が押し寄せてくる。生産は落ち、生活コストは上昇し、おまけにインフレって、これは完全にスタッグフレーションじゃないか。「金儲け主義はけしからん」とか言ってる場合じゃないでしょ(笑)。

お上が助けてくれると思っている人たちは、それでも「金儲けはけしからんですよ。ボランタリーに頑張りましょう」とか言ってるのかも知れませんね。ま、それはそれで構わないのですが、トップダウンを目指すのか、ボトムアップを目指すのかというのは本当に基本的なところで、ここで差異があれば目的が同じでもやることは全く異なってくる。どう違うのか。

例えば、ポスドクを支援するためのイベントを開くことを考えてみる。

トップダウン派は何を考えるかといえば、「とりあえず、皆で少しずつ協力して、ボランタリーに頑張りましょう。そのうち文科省とかが協力してくれるかもしれないし、もし評判が良ければ予算化も可能かもしれない。そうなれば活動もしやすくなる。できることから少しずつ頑張りましょうよ」ということになる。このシナリオどおりになったところで、おそらく大した成果はあがらない。喜ぶのは新規予算を取ってくることができた文科省の役人だけである。当然、雇用も大して増えない。

一方、ボトムアップ派は、「とりあえず、皆で少しずつ協力して、ボランタリーにやってみましょう。参加者の評判が良ければ、次からは少しでもお金を取ることも出来るかもしれない。他にもマネタイズの方策はあるはずだから、知恵を絞って、きちんとビジネス化していくことを考えましょう」となる。こちらがうまくいった場合、喜ぶのはビジネス化に成功した企業。うまくビジネス化されれば会社も大きくなるから雇用も増える。ポスドク問題の当事者として困っていた人間がこのプロジェクトに参加できれば、活躍だって出来るかもしれない。

スタートもゴールも一緒だけれど、経路が全然違う。経路が違うから目線も違う。トップダウン派が見ているのは役人とか、政治家とか、そんな方向。一方でボトムアップ派が見ているのは当事者であるポスドクやその周辺に存在する企業。そして、その両者のマインドはほとんど相容れない。特にトップダウン派はお金儲けが嫌いな人たちが多いので、「あいつらは金儲け主義だから、組むのは辞めよう」「あいつらと関係を持つのは慎重であるべきだ」などと考える。

今やるべきなのは上にも書いたけれど、ポスドクにどうやってお金を稼がせるかということ。文科省の補助金にべったりの人間を増やすことではない、と、僕は個人的には思っている。ところが、日本は公的研究機関にしても、大学にしても、そして大企業であっても、国のお金にべったり。私企業であっても補助金に頼ることを全く恥ずかしいと思っていない。以前僕がお金をばらまく側にいたときも、名だたる大企業の役員、部長クラスが僕のところに来て、「これまで日本は護送船団でやってきたんだから、支援をお願いします」と頭を下げた。「いや、このお金はベンチャーの支援のためにあるんですよ」と説明すると、「では、社内ベンチャーを作りますので、よろしくお願いします」なんて言ってくる。こんな国だから、仕方ないといえば仕方ないのだが、とにかくトップダウン派は国のお金にぶら下がるのが大好きだ。

でもね、そんなやり方じゃない方法でもやっていけるはずなんです。ただ、そのためには色々な障害がある。役所には、お金をばら撒くんじゃなくて、そういうハードルをなくしていくような、小さな会社でもアイデアと熱意次第で頑張れるような環境を整備して欲しいものです。

別にトップダウン派と喧嘩する気はないけれど、きっと向こうは僕たちと仲良くする気はないんでしょうね(笑) それでも困らないから全然構いませんが。

と、こんなことを考えながら飲んでいたわけです(笑)。

この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
一昨日の飲み会で話題にしたことの一部を,buu2さんがブログで取り上げている.
【閑話休題】実はトップダウンが大好きな人たち【Science and Communication】at 2008年08月01日 22:18