2008年09月23日

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

奥田英朗原作のうち、「イン・ザ・プール」「勃ちっ放し」「いてもたっても」を映画化したもの。

奥田英朗の「伊良部本」はテレビドラマ、演劇にもなったが、イマイチ消化不良だった。さて、映画はどうだろう、と思って観てみたのだが、こちらもやっぱり消化不良。原作の面白さを10%も表現できていない。何しろ、原作で表現されている伊良部の面白さは松尾スズキでは残念ながら実体化不可能だ。何故かといえば、その面白さの少なくない部分が「デブであること」にあるからだ。松尾スズキが本気で伊良部を演じようと思うなら、まずは体重をあと40キロぐらい増やす必要がある。その点、演劇版は宮迫博之が多少贅肉をつけていたので良かった。テレビドラマは阿部寛だから、駄目なのはいわずもがなである。一方、重要なキャラのマユミちゃんの方はまぁまぁだった。ただ、実はこちらの役はそれ程難しくない。背が高くて、胸がでかければ表現が可能なキャラだ。だから、サトエリ(演劇)、釈由美子(テレビ)もそれなりだった。

別に原作至上主義ではないから、原作に忠実である必要はない。松尾スズキが松尾スズキなりの伊良部を作り上げようとするならそれはそれで一向に構わないのだけれど、じゃぁそういう意図が汲み取れたのかといえばそんなこともない。思わず「ぷっ」とふきだしてしまうような場面はことごとく原作に忠実なところだ。別に松尾スズキが下手だというわけではない。彼の演劇は何本も観てきているから、彼の才能は良くわかっているつもりだ。要は、「どうやって見せようか」というコンセプトの部分と、それを実際に映画の中に表現する演出の問題である。結果として、原作は全編笑いに満ちているのに、映画になったらときどきしか笑えないというのではがっかりだ。

もっとべたな演出、例えば下妻物語みたいな見せ方をしてしまうという手もあったかも知れない。でも、そういう手法があるにもかかわらず、それを使わなかったということは、普通のアプローチで笑わせようということ。その挑戦はもちろん全然構わないのだけれど、結果、失敗に終わっていたと思う。

最上級のフォアグラ、牛肉、黒マグロなどの素材を用意したのに、それを使って作った料理は凡庸で大して旨くなかった、みたいな期待はずれ感。そんな映画だった。ただし、これは原作を読んだ人間の感想。もしかしたら、原作を読まずに観たら楽しめるのかも知れない。

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