2008年09月28日

現代能楽集検The Diver(ザ・ダイバー)

58fe753c.jpg久しぶりの野田演劇を世田谷のシアタートラムで観てきた。前から二列目だったのだけれど、端っこだったためにちょっと字幕が見づらかった。

The Beeに比較すると非常にわかりにくく、大分野田カラーが濃く出た作品だった。日本人なら源氏物語とかに関する知識があるのである程度わかりやすいと思うのだけれど、イギリスでこれをやったら意味不明、チンプンカンプンっていう人も少なくなかったのではないか。

主軸はいわゆる「日野OL不倫放火殺人事件」。不倫の果てに不倫相手の子供を二人焼殺した女の話。

日野OL不倫放火殺人事件についてはこちらにウェブサイトあり

この主軸に能「海人」と源氏物語が交差して、物語を多重構造化している。事前に予習しておくなら、海人と、葵の上、六条御息所、夕顔ぐらいを読んでおくと良いと思う。ただ、イギリスで上演した際にはこれらに関する注釈はなかったと思われるので、事前勉強が必須ではない。

能「海人」
能「葵上」

葵の上
六条御息所
夕顔

不倫をめぐるドロドロを描いているのだけれど、主要なやりとりは犯人と精神分析医とが対峙するところ。ほとんどは場面転換なく、この二人を中心に進んでいく。そして、その分析の最中に、犯人は人格を様々な人物に変えていく。

音声なしに母体回帰を表現したり(多分)していたのだけれど、かなり観劇サイドに自由度を与えた舞台で、ほとんどの人が「もう一度観てみたい」と感じるのではないか。とりあえず、僕はあと2公演分のチケットを持っているので、最低でもあと一回は観てくる予定。ちょっと一発だけでは評価が難しいので、採点は保留。

以下、もうちょっと軽い気分で感想を書いてみる。

ものごとを見るには色々なポイント(視点)がある。「野田秀樹は自分で離婚しているくせに、良くこんな本を書いたよなぁ」ということを思うのだけれど(野田秀樹の離婚の原因は不倫ではないかもしれないけれど)、もし野田秀樹が今回の演劇のテーマを自分の視点からだけみていたら、ちょっとこういう本は書けなかったと思う。自分の過去の経験や、自分の現在の人格とは異なる視点からものを見て、それを作品に仕上げられるところが野田秀樹の天才たるゆえんだと僕は思う。

90分の芝居の中には上に挙げたたくさんのストーリーが盛り込まれている。僕の場合、英国人と同じようなほとんど白紙の状態でこの芝居を観たわけだが、あとになってこれらを読むと、なるほどなぁ、あの場面にはこういう意味があったのか、と思ったり、あるいは「あのセリフは実話だったのか」といったことがわかったりする。これが野田戯曲の醍醐味でもあるわけだが、野田秀樹という人間の知識とか、調べたこととかがコラージュのように、重層的に散りばめられている。これは普通の人が知識ナシに見た限りでは絶対に把握し切れない。僕も最初に観るときはこうした知識はナシに、丸裸で見てみることにしている。そうすると、大まかなストーリーとか、扇子や布を多義的に用いているといった表面的なところをストレートに理解できる。それは、絵画をぱっと見て、どういう感想を持つのか、というのと似ている。その上で、今度は自分なりにきちんと勉強して、考えて、そして自分なりの結論のようなもの、舞台に求めるものを明確にした上で、見てみる。これまた絵画で言えば、当時の時代背景はどうだったのか、同時期の画家にはどういう人がいて、その中で当該画家はどういうポジションにあったのか、そもそもその画家の社会的地位はどうだったのか、みたいなことを知識として仕入れた上で鑑賞する、みたいな感じである。こうすると、今度は芝居の凄く深いところを楽しむことができる。ただ、野田芝居というのは非常に野田秀樹の個人的な芝居で、彼自身、彼の芝居の全てを理解してもらうことを期待していないところがある。最低限のところはともかく、「わからなければそれでも構わない。わかる人だけわかれば。場合によっては、役者も含め誰もわかってくれなくてもいい」みたいなところがある。だから、全部わかるわけじゃないし、さらに次に見るとまた違った発見があったりもする。

という感じで、時間があれば色々と考えることができるし、別の楽しみ方もできるのが野田芝居。「まずサラで見て、いろいろ考えてみて、さらに色々調べてみて、その上でもう一度見る。理想的には最後にもう一度見るのが良い」というのが僕の考え方だ。ただ、凄く残念なことに、今の野田芝居はそういう「繰り返し」を楽しむにはちょっと金額が高すぎる。でも、今回の芝居は6500円。決して安いとはいえないが、野田芝居としては安い部類。立ち見でも良いから、複数回見てみることをお勧めする。

蛇足ながら、今日の舞台(土曜日のマチネ)、終盤の良いところで携帯を鳴らした馬鹿がいる。こいつはそのまま246に出て行って轢かれた方が良い。いや、それでは轢いた人に迷惑がかかるか。どこでも良いから、人に迷惑をかけない形で死ね。

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この記事へのコメント
この芝居と、元となった事件を調べていてたどりつきましたが、字数ばかりかさんでいてつまらない感想だなあ…芝居のことより、あなたの芝居の見方を語りたいだけなのですね。あなたのような人がこの貴重な舞台のチケットを3枚も持っていたことがいまさらながら腹立たしいです。
Posted by 通りすがり at 2011年07月18日 16:56
> この芝居と、元となった事件を調べていてたどりつきましたが、字数ばかりかさんでいてつまらない感想だなあ…

あ、そう。

> あなたのような人がこの貴重な舞台のチケットを3枚も持っていたことがいまさらながら腹立たしいです。

チケットを取れないからって八つ当たりしないでください。バカめ。
Posted by buu* at 2011年07月18日 16:57