2008年10月04日

ブタがいた教室

3cbd4f2a.jpgかつて宮崎監督の「紅の豚」では「食えない豚はただの豚だ」という名せりふがあったとかなかったとか。今日の映画はそんな映画だった。

子豚がヨチヨチ歩いていく。それを後ろからカメラが追う。凄く美味しそうだ。なんか、とんかつが食べたくなってくる。しかし、映画はまだ始まったばかり。

小学校のあるクラスで食べることを最終目的として豚を飼う。その豚をどうするか、というのでもめにもめる、という実話の映画化である。新任の教師がやってきて、豚を飼おうとする。当然、教頭先生は反対する。そこで登場するのが校長先生だ。水谷豊の時代から、新任の熱中先生に対して理解を示すのは必ず校長先生である。同僚たちはあまり理解を示さない。そんなときも、「北野先生!やりたいようにやりなさい。ただし、ちゃんと責任だけは取ってくださいヨ」とエンカレッジしてくれる。あれ?それはテレビのドラマの話か。いや、でも、いつの時代も、テレビでも映画でも、一緒である。教育ママがやってきて校長先生と熱血先生に文句を言うのも一緒。ま、いつの時代も学校ものというのはこういうステレオタイプになりがちである。

しかし、この映画の場合は「豚」という一味違った素材がある。だから、映画の中盤も印象がちょっと違ってくる。あっという間に大きくなった豚。その後ろ姿を例によってカメラが追う。ますます美味しそうだ。っていうか、この瞬間を逃してしまうと、ちょっと食べごろを過ぎてしまう感じ。今すぐとんかつに、と思ってしまう。いや、しかし映画はこれからが佳境である。ちょうど、教室では「豚を食肉センターに送るかどうか」で議論が白熱しているのだ。

やがて、「卒業」というタイムリミットが迫ってくる。生徒たちはどこかの国の国会のようにいつまでもくだらない議論を続けるわけにも行かないし、反対だからといって審議を拒否することもできないし、強行採決をするわけにもいかない。国会よりもよっぽど切羽詰っているわけだ。しかし、致命的な構造的弱点、いつまで経っても結論がでない状況がそこにはあった。さぁ、そのこう着状態をどうやって打開するのか、そこに物語の興味は集中するのだが、そこでまた豚のよちよち歩きである。この豚の前足は、脇を離さない意識でやや内角を狙うようにして次々と繰り出される。この歩き方がたまらない。あまりに早足なので「豚足はどんな味なんだろう」などと考えている余裕はない。というか、かなり巨大化してしまったので、「これはとんかつよりもとんこつラーメン向きかもな、あ、でもチャーシューは作りたいな」などと考えてしまう。

とにかく、「食えない豚はただの豚」なのだ。そして、ラストシーン。これ、手前の画像とバックの画像、合成ですよね?なんか、ちょっと違和感があるんですが。でも、そんなことはお構いなし。だって、豚が美味しそうだから。

さて、映画終了。思ったのは、とにかく監督の姿が見えないこと。サッカーではフォワードに「消える動き」が求められることがある。この映画での監督はそんな感じ。子供たちが勝手に議論をして、先生がそれを適当にリードしていく。その様子の中に、監督の存在感がないのだ。これはほめ言葉。子供たちはオーバーアクションがあまりなく、そして星先生もなんか良い感じ。その状況を作り出したことこそが監督の手腕ということなんだろう。ただ、残念ながら、消える動きでマークの外にいった監督は最後までバイタルエリアに現れなかった。そして、シュートを決めることもなかった。だから、最後までドキュメントタッチで、エンターテイメント色が非常に希薄。最後の最後にシュートを決めるのはあくまでも美味しそうな豚なのである。だから、映画に教育を求めるなら、この映画はあたり。エンターテイメントを求めるなら、もう一歩、という感じ。

しかし、エンドロールを見ていたら協力で「さぼてん」の文字。あぁ、やはりとんかつを食べたくなってきた。ということは、この映画は成功。でも、試写会が終わった時間に食べられるとんかつはあまりない。仕方がないので、博多長浜のとんこつラーメンを食べた。そして家に帰ってみると、ポストにはモスバーガーのチラシ。それは「黒豚のなかの黒豚」。宮崎県産霧島黒豚メンチカツバーガーらしい。あぁ、食べたい。

やはり、豚は食べてこそ豚である。

と、ちょっとエンターテイメントを意識したレビューを書いてみました。いや、やっぱ、映画って笑いも重要な要素だと思うんですよね。それがこの映画には全然なかった。最初から最後まで教科書みたいな。もちろんそんな映画があっても良いと思うし、見る前から多分そんな映画だろうな、と思ってました。だから、「びっくり」とか、「期待はずれ」みたいなことはなかった。でも、もうちょっと予想を外してくれた方が僕は嬉しかったかな。

評価は☆1つ。教科書、勉強の素材としてはもっと評価できると思うけれど。ちなみにYahoo!では☆、凄いおまけしてます(笑)。だって、監督自ら「がけのしたのPって言われていて、全然人気ないので、応援してください」って頼まれちゃったんだもん。やはり、義理は大事。それに、別に悪い映画じゃないからね。

正直なところ、この映画を見て思うのは、「そこまで教育的に良いなら、どうしてたった3年(実話では、4年生から6年生までの3年間飼育して、そして食肉センターに送っている)やっただけでやめちゃったのか」ということ。これが不思議でならない。やっぱ、過保護なんですかね?バンバンやれば良いのに。良く見ろ、日本人。これが「生きる」ってことだぞ、ってね。あと、星先生が最終的な決断をした際、生徒がそれを完全に受け入れているのもちょっと違和感あり。もちろん「議論は尽くした。あとは全てお上にお任せ」ということなのかも知れず、それは教師と生徒の間に厚い信頼関係があったということなのかも知れない。だから、教師と生徒の中での決着はついているのかも。でも、星先生と映画の観客の中での説明責任というのは全く果たされていない。目の前の事象だけにとらわれる観客ばかりならそれでも良いのかも知れないけれど、少なくとも僕は「どうして?」って思った。そこのところは、映画の結構本質的なところでもあると思うのだけれど、それがスルーされちゃっているのは残念。

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監督、前田哲。脚本、小林弘利。原案、黒田恭史。2008年日本。人間ドラマ映画。出
映画『ブタがいた教室』(お薦め度★★★★)【erabu】at 2008年11月02日 06:51