2008年10月16日

食べログの現状と対策 現状編

食べログというグルメ評価サイト、それまでのアスクユーやlivedoorグルメに比較して機能面でも、あるいは運用面でもワンランク上のものを提供していたので、設立当初から愛用してきた。

ところが、ここ一年ぐらいでそのサービスの劣化が激しい。その原因がどういったところにあるのかはわからないが、カカクコムというITベンチャーの中の一部署として存在してきたこのサイトが、ある程度の採算を要求されるようになってきた時期と一致するのかも知れない。この手のベンチャーが提供するサービスには、技術一流運営三流というものが散見されるが、残念ながら食べログもそういった状況に追い込まれつつあるようだ。

一ヶ月ほど前に「dark side of tabelog(草稿)」というエントリーをアップしてある程度のことは記述したのだけれど、今度はヘビー・レビュアーの立場から書いてみたい。

食べログのビジネスモデルは、イメージしやすいところで言うと「動物園モデル」である。敷地を確保して、そこに動物を飼う。運営者は動物に餌を与え、住み心地の良い環境を提供し、そして彼らを第三者に見せることによって第三者からお金を貰う。個別の動物一つ一つにももちろん「人に見てもらう」だけの価値はあるのだけれど、それを一箇所に集合させることによって相乗効果を生むとともに、餌の確保とか、環境の整備などにおいてスケールメリットを追求し、サービスとしての付加価値のアップと運営コストの削減の両者を実現することが可能になる。動物園と食べログを対比するとおおよそ次のようなものになる。

動物園
見せるもの→動物
「見せるもの」に提供すべきもの→住み心地の良い環境
広告相手→入園者
主たる収入源→入園料
付帯収入→レストラン、物販等

食べログ:
見せるもの→レビュアーが書くレビュー
「見せるもの」に提供すべきもの→住み心地の良い環境
広告相手→一般ネット利用者
主たる収入源→閲覧により発生する広告宣伝費
付帯収入→書籍販売、店舗からの広告宣伝費等

さて、では動物園においてもっとも成功したモデルはなんなのか、ということになるのだが、現在の日本においては旭山動物園ということになるだろう。では、旭山動物園の成功はどこにあったのか、ということになるのだが、それは「動物にこれまでの動物園になかった環境と自由度を与え、生き生きとした動物の姿を見せること」に成功したからだろう。当然、食べログにも求められるのはそういう姿勢、すなわち、レビュアーに対して「良いレビューを書きたくなるような環境」を提供することである。

当初、食べログのサービスは非常に良好だったと思う。先行2サイトから多くのレビュアーを移籍させることに成功した要因もここにあるし、僕自身もアスクユーやlivedoorグルメから引っ越した口である。しかし、そのサービスは現在劣化の一途であり、これまで良質のレビューを提供してきたレビュアーが徐々に食べログを離れつつある。その原因は上述のエントリーでも指摘しているように、『マネタイズに失敗』『レビュアーへのポイント付与』『レビュアー評価システム』『日本フードアナリスト協会との連携』などが挙げられるのだが、レビュアーサイドからするともっと致命的な欠陥が明らかになりつつある。

それは、「レビューの大幅な変更(特に記事の内容を貧弱にするような改変)」と「レビューの削除」を認めないという立場を非公式に明らかにしたことである。レビューの変更、レビューの削除についてはこれまで食べログ内でのいくつかの掲示板でやり取りをしている。

訂正までも「前より文が短くなった」と言う理由で許可してくれない管理者。(誰が削除したかは不明だが、相当量のやり取りがあったにもかかわらず削除されている)

食べログのレビュー削除、改筆に関する意見

食べログのレビュー削除、改筆に関する利用者調査

これらの掲示板を見ればわかるが、僕自身は食べログのサービス提供直後から、食べログ運営サイドと著作権の取り扱いについて議論してきた経緯もあって、真正面から食べログとやりあってきている。このやり取りを通じてわかったことは、まず第一に食べログの管理者権限の乱用体質である。もちろん食べログ運営者は掲示板の記事を削除する権限を持っているが、ここに至るまで、食べログ運営サイドに対する辛らつな意見などが書かれるたびに、それらを全て一方的に削除してきている。僕が書いたものだけでもここ一週間ぐらいの間に3回ぐらい削除されているのだ。そして、その作業が迅速ではないために、多くの人の目に触れてしまっている。真正面から反論せず、一方的な削除という対応を取るくらいなら、最初から掲示板など設置しなければ良いのに、と思うのだが(早晩、掲示板は削除されるかも知れないが)、何しろ、そういった行為を衆目に晒し続けている。これなども食べログの運営三流をアピールする事象なのだが、本題はそこではないので、レビューの改変、削除についての話に戻る。

上述の掲示板を一々全部チェックするのも面倒だろうから、簡単に食べログがやっていることと、レビュアー側の主張をまとめるとこんな感じになる。

食べログの運用(実質的なもので、利用規約等には明記されていない)
1.レビューの削除を認めていない
2.レビューの大幅な改変を認めていない
3.レビューの大幅な改変があったとき、食べログが強制的にレビューを以前のものに戻している

レビュアー側の主張
1.レビューを削除する権利はレビュアーサイドにあるのではないか
2.レビューを改変する権利はレビュアーサイドにあるのではないか
3.運用者権限でレビューを元に戻すのは問題があるのではないか
4.もし1、2、3を認めないのであれば、その法的見解を述べるべきではないか
5.もし1、2、3を認めないのであれば、その旨利用規約に記載すべきではないか

厳密に考えていくと、レビューを削除する権利がレビュアーサイドにあるかという点については個人的には疑問が残る。一度出版した本を、作者の都合で本屋の本棚から回収できるのか、ということになる。ただ、その費用を全額負担するのであれば、その権利はあるような気もする。このあたりはもうちょっと突っ込んで調べてみる必要がありそうなので当面スルーする。問題になるのは改変の方で、レビューの改変の状態を常時チェックし、その改変が食べログの意にそぐわない場合、強制的に元に戻すというのは尋常ではない。プロバイダ責任制限法を考えればレビューを削除する権利は食べログサイドにあると思うのだが、それを実施できる範囲は当然無制限とは考えにくいし、仮に無制限にその権利を認めたとしても、改変する権利がどこにあるのかが良くわからないのである。そこで、そのあたりの食べログの見解を問質しているのだが、食べログサイドからの返答は一切なかった。

こうした状況もあって、食べログからは優良なレビュアーが徐々に抜けつつある。そして、その代わりと言ってはなんだが、ポイント目当てのレビュアーが次々と現れ、サイトの信頼性はどんどん落ちてきている。

動物園で表現すれば、外から見る分にはさも居心地が良さそうな状態を装っておき、中に入ったら最後、動物虐待し、その動物が逃げようとすると今度は首輪をつけて強制的に動物園に拘束している状態である。一方、餌はそれなりに与えられるので、自由に入ってくることのできる鳩やカラスがその餌をついばんでいるような状態だ。

動物園は観る価値がある動物がそこに存在するから価値がある。そんな動物園の中でも、旭山動物園は動物の居心地を良くして、動物達のパフォーマンスを良くしたら人気が出た。一方で食べログはといえば、レビュアーたちへのサービスをどんどん劣化させ、その待遇を悪くし、さらには出て行こうとするレビュアーを強制的に縛り付けている。挙句、利用規約には何の言及もないローカルルールを適用してレビューを人質にしている。加えてポイント目当てのレビュアーたちの参入を防止できず、その内容は劣化の一途である。

この手のコンシューマー・ジェネレイテッド・メディアは、「出入りは自由です」という立場に運営が存在し、その上で利用者達がそこに存在したくなるような状況を作り上げることが共存共栄の方法だと思うのだが、今の食べログはあたかもゴキブリホイホイのような状態である。いや、そう表現するとレビュアーがゴキブリみたいだから、あり地獄かブラックホールか蜘蛛の巣ぐらいにしておくか。とにかく、油断して近づくととんでもないことになりかねない。そんな状態なので、食べログは後発としてこの分野に参入してきてまだ数年だが、あっという間に「駄目サイト」へと転落しつつある。

「食べログの現状と対策 脱出編」につづく(近日公開予定)

この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
数日前までmashinabiruとして802件のレビューを書きました。
パーティーを行った店のレビューを書いたところ、
店がパーテイーの主催者に抗議が!
その後の詳しい経緯は「野生のカンタ」の自己紹介をご覧いただければ幸いです。

それまでにも修正や削除のメールが何度も届き、
そのたびに誠意ある対応をさせていただきました。それなのにです(怒)
Posted by 野生のカンタ at 2012年11月19日 13:35
> それまでにも修正や削除のメールが何度も届き、
> そのたびに誠意ある対応をさせていただきました。それなのにです(怒)

それでもまだ辞めないのが驚きです(笑)

運営はクソだし、内容も全く参考にならないので、もはやイエローページ程度の価値しかないと思っています。
Posted by buu* at 2012年11月19日 14:06