2008年11月21日

ニライカナイからの手紙

ニライカナイからの手紙

いつツタヤに行ってもレンタル中でなかなか借りることができなかったのだけれど、ようやく見つけた。

蒼井優、沢尻エリカ、堀北真希は若手女優の中で高く評価している3人なのだけれど、彼女達の演技力とか、魅力とか、そういう女優サイドのファクターではなく、彼女達が出演している作品という視点から見てみると、この中で一番良い作品に出ているのが蒼井優だと思う。これはもちろん女優サイド、所属事務所の方針が反映されているのだろうけれど、蒼井優の出てきた映画の質の高さは疑うところがない。そういうわけで、「きっとこの作品も面白いだろうな」と期待していたのだけれど、ほぼその期待通りの内容だった。ただ、期待以上のものでもなかったというのが正直なところ。素材が良かったのに、もうひとつその良さを生かしきれなかったような気がする。

沖縄の竹富島で暮らす女性が島を離れ、東京で暮らし始める、というありがちなストーリーを縦軸にしつつ、幼い頃に別れた母との関わりを描いていくという内容。まず非常に残念なのは、お母さんが娘に会うことが出来ないという事情が物凄くわかりやすくネタばれしてしまう点。親と子の関係と言うものを考えれば、「あぁ、これはこういうことなんだろうな」とすぐに察しがついてしまう。ここがわかってしまうだけで、この映画の面白さは半減である。次に残念なのが、島の人たちの演技。どうにもこうにも素人臭いのである。あぁ、あんまりお金がなくて、エキストラをたくさん使ったのかなぁ、などと考えてしまうのだけれど、実際のところはどうなんだろう。正直、おおよそ本職の俳優とは思えない演技が多かった。それから、冒頭の親子が遊ぶシーン。ここも、親子の遊び方がどうにもぎこちなく、親子に見えてこない。そのあたりはわざとな演出だったのかもしれないが、そこまで勘繰るのはあまりにも親切過ぎる感じだ。

ただ、そんな中においても蒼井優と平良進の演技は素晴らしい。二人ともせりふで何かを語るというよりは何も語らずに目で表現する、というところを求められているわけだが、それをきっちりとやり遂げている。ベテラン俳優ならともかく、蒼井優という若手がこうしたところをきっちりとこなしているあたりには感心させられる。泣くシーンひとつをとっても、それぞれの場面でそれぞれ違った泣き方を表現しきっているのが素晴らしい。主演の二人がきっちりと演技しているので映画自体はしまっている。しかし、脇を固めるべきところが不十分なところが「面白いけれど、詰めが甘くてなんとも惜しい」と思わされる。

風希の学生時代の三角関係模様とか、カイジの片想いとか、いくつかの恋愛をごくごく薄味でスパイスとしているあたりはなかなか良い感じ。タイトルの意味も映画の中できちんと明確になっていて良い。全体の構成、山場の持っていきかたなども非常に良かったと思う。つまり、脚本は凄く良かったということ。主演◎、脚本◎、演出△といったところか。

ストーリー面で言うと、「なぜ20歳の待ち合わせが東京指定なのか」とか、「1月の誕生日に待ち合わせなのに、なぜ手紙の中で桜に言及するのか」とか、ちょっと理解できない部分もあったのだけれど、このあたりはさっくりとスルーすべきところか。

郵便局があまりにも宣伝されすぎているのは、まぁ、それは良いじゃないですか、という感じ(笑)?

手紙が全然経年劣化していかないのは不思議。冷凍庫で保存していたんだろうか。

何しろ、口数の少ない女性をやらせたら蒼井優以上に上手な役者はなかなか見当たらない。映画には映画の良さが、舞台には舞台の良さがあるわけだけれど、舞台では難しい表現の代表例が「無言の演技」「動きのない演技」である。そういう部分を主張できるのが逆に言えば映画の長所になるわけで、蒼井優という女優さんは映画向きの女優さんであると言える。動くことによって表現する、喋ることによって表現するというのは王道だが、動かなくても表現できる、喋らなくても表現できる蒼井優という役者は貴重だと思う。

評価は☆2つ半。

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