2009年03月23日

人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな [DVD]

技巧に走って技巧におぼれてしまう日本人監督というのは良く見かけるのだけれど、技巧を的確に使って表現できる日本人監督というのは稀だと思う。この作品は、そんな、技巧を的確に使うことができる数少ない監督の成功作だと思う。

大きな仕掛けがあるわけじゃない。凄い特殊効果があるわけでもない。しかし、これでもか、と役者をいじめるような、それでいて的確な映像表現のオンパレードである。

観ていてすぐに気が付くのが固定カメラによる超長回し。そして、その間に役者たちは結構ものを食べる。いやー、これでNG出したら、またあのチョコレートを食べるんですか?みたいなことが気になってしまうような、異常に長いカット。でも、もちろん役者をいじめているわけではない。きちんと計算された効果を出しているから面白い。個展にでかけた蒼井優のシーンなどはその代表。徐々に右に寄っていき、最後にはフレームアウト寸前。そして、そこから戻ってきて、お盆の上のお菓子を食べつくす。そのやり取りの緻密なこと。また別のところでは、屋上からの駅のロータリー。はじめは動いているのは主人公たちのバイクだけ。意味もなくロータリーをぐるぐる回っているところを長まわし。そして、そこにはじめて動きが出てきたところでバイクは走り去る。そういったタイミングの計り方。あるいは、土手を走るバイクと電話の音声のシンクロなど、異常なまでに計算された表現は凄いの一言。

他にも観ていて楽しかったシーンはてんこ盛り。リトグラフを刷る永作と松山、モデルをやりに行って全裸にされてしまうシーン、エアマットを膨らませるシーン、観覧車、ラストのキスと校舎の屋上。

長くまわしていることによって出てくるアドリブ(多分)を効果的に使い、登場人物の一種のテレを生み出し、そしてそれによって観るものに乾いた笑いを提供する。この繰り返しで映画はどんどん進んでいく。だから、このあたりの面白さを楽しめないと、抑揚のない平板なストーリーだと感じてしまうかも知れない。一つ間違えると、悪女にもてあそばれる好青年と、彼に思いを寄せる女の子の三角関係、みたいなありがちなストーリーに感じてしまうかも。

俳優では、多分ロリ顔おばさんの永作博美の年齢不相応な可愛さに注目が集まるのだろうけれど、個人的には蒼井優のファンなので、そちらの演技に釘付け。主役じゃないから登場頻度は永作ほどでもないのだけれど、でも、準主役だから出番はそれなり。色々なシーンで魅力を振りまいている。一番印象的なのはやはりラブホのシーンだろうか。軽い身のこなしでトランポリンをする蒼井優はとても可愛らしい。で、そのシーンの最後の落ちも可愛らしい。

今、日本の俳優の中で「演技を見せることのできる人」というのは、比較的若いところだと蒼井優、松山ケンイチ、堺雅人ぐらいかなぁ、と思うのだけれど、そのうちの2人が出ているのだから、面白くなかったら監督を吊るし上げる必要がある。でも、大丈夫。十分に面白かった。評価は☆2つ半。

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