2009年04月01日

ETCについて

ふらふらっとネットを見ていたらこんな記事を見かけたので、ちょっとコメント。

ETC売り切れの要因分析

要点は、

ETCが馬鹿売れしている
何がポイントだったんだろう
どこまでいっても1000円か?
助成金か?
うまく相乗効果をあげたね

というところだと思う。さて、相乗効果というのはその通りだと思うのだけれど、僕とかはもう夜間割引の社会実験とかを始めたときから助成金をもらってETCを装着していて、この助成金が随分と前から、しかも断続的かつほぼ継続的に実施されていたのを見てきているので、助成金の単独での効果については非常に懐疑的。

僕はシンクタンクにいた頃、日本でほぼ唯一の割引制度の専門家だったわけで、道路公団が最初に導入したJHパスポートin NAGANOの制度プロデュースをやったことがある。そいつが馬鹿売れして第三管理局の担当者に金一封が出たおかげで、そのあともアクアラインの割引制度なんかをいくつか提案、実現しているのだけれど、その頃のことから想像するに、今回の助成も、それまでの色々な割引も、なんだかんだ言って、最初は政治家マターだと思う。つまりは、「折角高速道路を通しても観光客が来ないじゃないか。それは高速道路料金が高すぎるからだ」という陳情が政治家に行って、政治家が国交省なり道路公団なりに行って、「高速道路の料金が高すぎるんじゃね?」と問いただす。そういわれてしまうと何かしなくてはいけないのが役人なり、道路公団なりだから(今はもう公団じゃないけど)、仕方なしにコンサルタントに「困りました。何か良いアイデアはありませんか?」みたいに相談に来る。聞かれたほうは「知りません」とか言っている場合じゃないから、きちんと対応する。「あぁー、じゃぁ、まず折角長野五輪のおかげで上信越道が通ったんだから、そのあたりをぐるぐる回れる周遊券を作ってみましょうよ。そうすれば、スキー客とかも、「面白そう」って思って色々車でスキーに行くんじゃないですか?」とか、「アクアラインはちょっと高すぎますよ。だって、ぐるっとまわったら全然安いじゃないですか。確かに橋を渡ればすぐだけど、その時間にそれだけの大金(当時は5900円だったかな?)を払う人はいないですよ。バブルのときならともかく」「でも、料金を引き下げるわけにはいかないんですよねぇ」「そんなときこそ割引制度。そうだなぁ、今回は、開通一周年にしましょう」なんて話があったかどうかは知らないけれど、こういった民間の陳情→政治家→役人という流れの「うまくいった事例」というのは色々あるわけで、どこからが「悪い事例」でどこまでが「良い事例」なのかは正直判断に困るところ。ま、それはそれとして、今回の事例の場合、「ETC車載機が高すぎるんじゃぼけ」という意見があって助成金制度があり、それとは別のところで「高速道路を割引して景気を回復させるんじゃー」という意見が出てきて、「じゃぁ、ETCの車でどーんと割引しちゃいましょう」ということになったのかな、と。だから、結果論として「相乗効果が出たよね」というのはその通りなんだけれど、それをきちんと意図してやっていたかというとはなはだ疑問なわけで、「何しろ、うまく行って良かったね」ということではないかな、と思う次第。

ETCの夜間とか、通勤割引とかでどうなのよ、と思っていたのは距離制限があること。だから、長距離を走るスキーヤーとかはETCカードを複数用意して、100キロのところで一度高速を降りていた。所沢から乗れば下仁田あたり、あるいは月夜野あたりで一度降りる。また、八王子から中央道を走ると、白馬まで行くときにちょうど韮崎が中間地点かつ八王子韮崎、韮崎更埴あたりがそれぞれ100キロ弱になるので、みーんな韮崎で降りてユーターン(笑)。こんなのは当たり前の消費者行動で、携帯サイトとかだと、出発地点、目的地、時間、走行速度、ETCカードの枚数を入れると、単にUターンすべきICを教えてくれるだけじゃなくて、ご丁寧にUターンのしやすいお勧めICを教えてくれる、なんていうのもあったりする。で、普通に考えると「距離制限って、面倒くさくね?」ってことになると思うのだけれど、運営側はそこの着眼点がちょっと違うわけで、Uターンできないように柵を作ったりする(笑)。もうちょっと利用者サイドから考えて欲しいな、と思うのだけれど、そのあたりは陳情に来た政治家が首都圏近郊、茨城、群馬、山梨、静岡といったあたりだったのかなぁ、などと考えてしまう次第。

あと、上述のエントリーではコメント欄でいくつか面白いやり取りがあるのだけれど、ETCレーンがどうして端っこなんだ、というのは我々利用者としても「なんとかしろ」と思うところ。ただ、何の原因もなく不便なところに配置されているわけもなく、まず考えられるのは、「マイノリティだったETC利用車を円滑にさばくため、まずは端っこに専用レーンを作りましょう」ってことだったのかなぁ、と想像する次第。今となってはETCをつけている車の方がマジョリティなんだけれど、すぐにETC対応ゲートにできるわけもなく、物理的に改修しなくてはならないので、それが追いついていないってことがあるのかな、と。あともう一つは、ETCは当然どの車も20キロ以上のスピードで通過するわけだけど、その先は必ず細くなっている。で、速いスピードの車が中央でぶんぶん通過していくと、脇に回された一般車は合流していくタイミングが図れなくて、そこにどんどん滞留していってしまうということもあるかもしれない。そのあたり、高速道路を運営している方も素人じゃないので、色々と考えてはいるんだと思う。教えてもらえば「へぇ」ということになるのは間違いないんじゃないかなぁ。僕も高速道路の技術調査とか色々やったことがあるけれど、安全を確保するための手段はあの手この手で検討されいて、実情を知ると驚きの連続だったりする。何しろ彼らの考えの基本は「便利であること」よりも「安全であること」なのは間違いがない。そのあたりにヒントがありそう。

あ、それで、車載機売り切れの要因ですが、やっぱ、「どこまで行っても1000円って、そりゃすげぇ」という雰囲気がやっぱ最大なんじゃないかなぁ。で、大規模に告知するようなPR活動をどの程度やっていたのか知らないんだけれど、まぁ、景気が悪い中でニュースが少なかったので、ちょうどマスコミが飛びついてくれた、みたいな。誰かが意図してそういう雰囲気を作ったという感じがあんまりしない。で、そのあたりの自然さが一番受けたんだったりして。人為的な雰囲気作りって、今の時代は結構嫌われるからね。そのあたりの「人工的なのか、自然なのか」の皮膚感覚って、昔より多少敏感になっているような気がする。

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