2009年05月07日

ゴールデンウィークの暇つぶし

ゴールデンウィークの暇つぶしで、日本将棋連盟の体質改善策を考えてみた。いや、厳密に言えば単なる暇つぶしではなく、近いうちに実施するNPO法人に対するコンサルティングのためのケーススタディである。大分前に著作権について勉強したいと思って、棋譜を対象としてケーススタディしてみたのだが、この手の勉強はなんとなく考えるよりも、個別具体的な事例について突っ込んで考えてみたほうが頭の整理が簡単になる。もちろん、ジェネラルな部分と個別の部分とがあるので、考察の全てを一般化できるわけではないのだが、そのあたりを必要に応じてアレンジしていくのが「知恵」の部分である。プロのコンサルタントとしてはこの手の情報というのは無料で発信すべきではないのだけれど、どうせ日本将棋連盟は参考になどしないだろうから、垂れ流してみる。

つらつらと考えてみると、日本将棋連盟が置かれている状況というのは、実は日本社会全体が置かれている状況とあまり乖離がないことがわかる。本当は「プロ棋士資格の緩和」というのも追加したかったのだけれど、それを緩和してしまうと組織そのものがボーダーレス化してしまうので、発散してしまうかなと思って削除した。

実際にNPOのコンサルティングなどをしていると、筋の悪いNPOというのは役所のことばかり見ていて、「どうやって補助金を取ってこよう」ということばかりを考えている。マーケットを全く見ておらず、補助金を取る事に失敗するといきなり運営が行き詰る。このあたりもちょっと共通するところがある気がする。




1.日本将棋連盟の財務悪化とその対策について
将棋連盟の財務悪化は、日本、および世界規模で進行中の経済危機とはそれほど連関がない。世界的な経済危機は需要の先食いが原因であって、これに対応する方策は総需要の下支えと資金循環の正常化が考えられるが、一方で将棋連盟の場合は、先細りする一方の需要をどう下支えするか、及びどうやって新規需要を創出していくかにかかっている。現在の需要の下支えは現場にいる棋士たちの活動を強化する以外になく、新規需要の創出はインターネットを利用したものが簡便である。

2.運営組織の安定
理事会の信頼度をあげるため、誰でも納得のできる民主的組織とする必要がある。構成員がそれぞれ1票を持ち、その投票によって理事、および理事長を選出する、また被選挙権は構成員全員が等しく保有する、など、その選出方法を整備することによって、安定した理事組織を形成する必要がある。

3.財政の健全化
世代間格差をなくすことを目的として、将棋連盟としては引退棋士への便宜などは図らないこととする。現役世代によって引退世代の面倒を見ることは次世代への負担の先送りに他ならない。この手法は成長産業においては機能するが、衰退産業においては機能せず、負の連鎖としかならない。現時点では将棋関係産業は安定して成長が見込まれる業界ではないことを自覚した上で、それに即した財政計画を立てていく必要がある。

4.自由・透明性の確保
現在は理事会の影響が強力すぎて、自由な発言ができない印象がある。また、コンピューターとの公開対戦を禁止するなど、棋士への介入も多く行われている印象がある。近代化された組織に求められることは構成メンバーが均質なことではない。自由な発想で自由に意見が言えること、その意見を各人が極力客観的に捉えそれぞれに評価できることである。さらに、棋士会での検討内容が外部に公知されないなど、透明性の低さも問題である。もちろんすべからく外部に広報する必要はないが、一定の透明性は必要である。現状はこの部分も十分とは言えない。

5.マーケット重視
成長政策の基本はマーケットを見ることである。これまでの日本将棋連盟の主たる財源は新聞社からの契約金であり、そこで得たお金をどう分配するかが主たる業務だったと想像される。しかし、これからはマーケットである、「将棋を指す人間」を見ていく必要がある。将棋を指す人が何を求めているか、将棋を指す人は何にならお金を出すのか、これを真剣に考える必要がある。棋士の、棋士による、棋士のための連盟では今後の成長は全く望めない。そういう意味でのマーケット重視政策を考える必要がある。

6.著作権
現在、日本将棋連盟は棋譜に著作権がないことを認識しつつ、それを公的に認めていない。棋譜に著作権がないのは専門家のコンセンサスでもあり、将来的にその解釈が変わるとは考えにくい。したがって、「棋譜には著作権がない」という前提の下、公益のために活動する必要がある。はじめの一歩は「棋譜には著作権がない」と公式に認め、表明することである。

7.組織の分離
現在の日本将棋連盟はプロ棋士の事業協同組合的な色彩が濃い。この体制で公益法人格を目指すのは無理があり、大きく「公益法人としての将棋連盟」と、「プロ棋士のためのプロ将棋機構」に分割するのがわかりやすい。公益法人については海外を含めた普及、将棋の地位向上などを実施する。会員資格を大幅に緩和し、さまざまな立場の人間が参加できるようにすることが望ましい。プロ将棋機構についてはプロ棋士の事業協同組合として組織するのが一案である。

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