2009年05月12日

常識の壊し方

舞台「パイパー」では、ものごとを点数評価することに対して疑問が投げかけられた。幸せ指数「パイパー値」を増大させることに一所懸命になる火星移民地球人たちの数百年にわたる歴史を一気に見せる、という非常に刺激的な舞台で、僕のように数値化至上主義の人間にとっては耳の痛い舞台でもあった。

しかし、それでも人間は数値化が好きだ。どういうときにそれが必要かと言えば、一つには、これからやろうとしていること(映画を観る、本を読む、ご飯を食べるなど)について情報的裏づけが欲しい場合。それから、すでにやったこと(同上)に関する自分の感想にその他大勢の裏づけが欲しい場合。

さて、僕の会社では映画、書籍、グルメといったジャンルを対象に、評価サイトを立ち上げることをずっと検討してきている。すでに大枠は決まっていて、社内のコンセンサスは取れている。あとはそれをどうやって具体的な形にしていくか、という段階なのだが、そこは小さい会社。コンセプトワークは簡単に済んでしまうのだけれど、それを形にするのにはどうしても時間がかかる。じゃぁ、どんなことが決まっているのかって、もちろんそれは今の段階ではオープンに出来ないのだけれど、僕は自己顕示欲が強い人間なので、ついつい情報を出してしまいたくなる。だから、役員の了解などは得ていないのだけれど、勝手にここでさわりだけ書いてみようと思う。

そもそものスタートは「ターゲットはどこなのか」ということだった。ターゲットは大きく分けて、「これからする人」と、「もうしちゃった人」である。レビューを書くのはもちろん「もうしちゃった人」なわけだけれど、でも、それって本当にそうなの?と考えたところが一つのスタート。

たとえば、である。山ほどあるレビューを読むことによって情報を仕入れ、実際には映画を観ずに、その映画のレビューを書くことは可能なんじゃないか、ということを考えてみた。そして、実際にそれを試してみたのである。

僕の映画のレビューはブログにアップされているが、同時にYahoo!映画にも掲載している。


魔人ブウ*の映画レビュー


基本的にはブログにアップしたものとほぼ同じ情報をほぼ同じ時間にアップしているし、情報が違っている場合はブログの方が濃い内容になっているから、僕のブログを読んでいる人ならこちらを読む必要はほぼないのだけれど、「魔人ブウ*の映画評にしか興味がない」という人ならこちらを読むのが手っ取り早い。何しろノイズが何もないのだから。さて、そんな僕の「映画レビュー倉庫」だが、もちろん僕が何の理由もなくてこんなところに自分のコンテンツを流出させるわけがない。なぜYahoo!に情報を提供しているかといえば、それはあくまでもビジネスの種をどう蒔くか、検討するためだ。ここにレビューを書くことによって得た情報は決して少なくないし、またいくつかの実験もやってみたのだが、その最大のものが、「映画を観ずにレビューを書いた」というものである。どの映画とは言わないが、本数は一本だけ。そして、もし不適切なレビューになっていたら申し訳がないので、レビューを書いた後にきちんとその映画を観て、その上で内容的に間違いがないかはチェックした。だから、本来はやってはいけない実験だけれど、後始末のことを考えて行動し、きちんとフォローもやったつもりである。もちろんこれから同様のことをやる必要はないし、やる予定もないので、そのあたりは大目に見てほしいところなのだが、問題はその実験の成果である。

Yahoo!映画はレビューに対して「参考になった」と参考票を投じることができる。僕の場合、現在の平均役立ち度は13.7になっている(皆さん、どんどん投票してください。って、投票が増えたところで僕のメリットはほとんど何もないのですが)。そして、他人のレビューのみを参考にして書いたレビューは、この平均値を大きく上回る参考票を得てしまった。

#まぁ、こう言ってはナンだけれど、今から読んでもそのレビューは良く書けている(笑)

つまり、レビューを読む人は、既存のレビューの総和と、その周辺にあるいくつかの情報をまとめたようなレビューで十分に満足できてしまうということだ。だから、映画のレビューは「すでに観た人」ではない僕でも書くことができて、しかも相当数の支持票を集めてしまったのである。

とすると、最初のターゲッティングで行った「ターゲットは大きく分けて、「これからする人」と、「もうしちゃった人」である」という分類そのものが意味がないことになる。別に、映画を観ていようが、観ていまいが、関係ないのだ。つまり、読み手はフィクションでもノンフィクションでも構わないということになる。「レビュー」とは事実の記録と、事実に対する感想である、というのが一般的コンセンサスだと思うのだが、ちょっとした実験によってその土台が崩れてしまった。

こうなると、話がとたんに面白くなる。僕は常識を常に疑ってかかる人間だが、常識と思っていたことが常識ではなかった瞬間を見つけることほど面白いことはないし、その視点からビジネスを考えることは非常に刺激的だ。

映画に限って言えば、レビューを読む人の視点は「観たか」「観ていないか」ではない。もちろん彼らの潜在意識の中には「当然観ているはず」という大前提があるのだが、その合意事項はそれほど重要ではないのだ。では、何が重要なのか。僕たちはそれを明らかにした。これが、今、僕たちが作ろうとしているレビューサイトの肝である。その肝は、映画でも、本でも、グルメでも、全てに共通する。

食べログはすっかり駄目サイトになってしまった。素晴らしい技術力に支えられた理想的なグルメサイトだったのに、なぜあっさりと駄目なサイトになってしまったのか。その答えも上の検討から明らかになった。

あぁ、早くきちんとした形でサービスを開始したい。お金と時間があればなぁ。うーーーーむ。

まぁ、いつになるかわからないし、もしかしたら永遠に日の目を見ないかもしれないけれど、とにかく頑張るので気長に期待していてください(笑)。

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