2009年06月02日

おと・な・り

映画の日ということもあり、ふらっと予備知識なしに観てみた。

音だけを通す壁によって分離された二つのストーリーがどうやって融合していくのか、というのが見所の映画で、そこだけ取り出すと別に新しいところは何もない。では、何が新しいのかって、その壁の「音の通し具合」である。もう、スカスカ。そこまで生活音が通ってしまうのは、たとえ障子だってありえなくない?という状態。でもまぁ、そこは設定の重要なところだから、目をつぶりましょう。そういう壁なんだから仕方がない。

さて、感想なんだけれど、正直なところ、なんとも微妙な映画。ところどころに凄く良いシーンがあるのに、全然駄目な部分もある。おそらくは一番駄目なのは原作。ストーリーの中で非常に浮いた部分があって、折角の盛り上がりを台無しにする。何しろ、序盤から淡々とした物語が進んでいて、最初のうちは正直眠くなる。それで、「転」の部分でようやく目が覚めて面白くなってくるのだけれど、終盤の入り口でがっかりさせられてしまうのが痛い。

そこを何とか乗り切ると、邦画お決まりの偶然の連続が現れて、エンドロール。このラスト数分の感覚はつい先日観てきた「ディア・ドクター」に良く似ている。良く似ているのだけれど、それでいて全く別物。なぜ別物になってしまったかって、やっぱりそこに至るまでの展開なんだと思う。紆余曲折あって徐々に盛り上がっていって、という感じでは全くなく、ところどころにぼこ、ぼこ、と大きな穴ぼこがあいていて、そこにときどきドスンと落ちてしまう。緊張感が途切れてしまい、テンションが高まってこない。ドラゴンクエストのサマルトリアの王子様よろしく、行く先々ですれ違うのは良いのだけれど、そのすれ違いがあまりにも短い時間に押し込まれすぎ。それから、物語の重要なキャラクターの扱いも微妙。徹底的に隠すのかと思ったら、突然露出を始めるあたりに首尾一貫したところが感じられない。途中で役者さんのスケジュールが確保できたってことだろうか。

ただ、この映画を掘り出し物と思わせる部分もあった。それは谷村美月というキャラクター。彼女のことは、映画ファンなら何度も観たことがあるはず。あの、非常に評判の悪かった海賊版撲滅キャンペーンの、黒い涙を流す女の子。当時、プロフィールを見ると「バスト72センチ」とか書いてあって、それはいくらなんでも細すぎ、と思ったのだけれど、今見ると76センチになっていて少し安心する。って、それは全くの余談だけれども、彼女のはじけた演技はなかなか良かったと思う。緩急の「緩」ばかりが目立つ中で徹底的に「急」を演じさせたところは、演出もなかなかに見事だったと思う。

タイトルからもわかるとおり、音には非常にこだわってます、という作品。思わず目をつぶって音だけを楽しみたくもなるのだが、ちょっと油断するとそのまま寝てしまいそうで怖い。

評価は☆1つ半。

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