2009年11月10日

ブログでバイオ 第67回「植物工場って、名前が悪い?」

今日、四谷三丁目の「ウシカイ」というレストランで、植物工場で作られた野菜の試食会に参加してきた。

最初に書いておくけれど、このウシカイさんは僕がときどき言及するリバネスの子会社「ライナ」が11月24日に四谷三丁目にオープンする、同社3店目の飲食店(他に、カフェ・ド・リバネスとル・バード)。ライブログはリバネスとはいくつか共同事業を展開しているから、完全な部外者とは言えない。特にバイアスをかける気はないけれど、そこは人間だから、完全にフェアではないかも知れず、そのあたりは各自修正して読んで欲しい。

さて、植物工場。「工場」という名称だけれど、どんなものかと言えば温室みたいな感じのよう。小型で都市部の店舗内に設置できるような施設。光、温度、湿度、二酸化炭素、養分、水などを完全にコントロールし、野菜を中心とした植物を計画的に生産する施設。

それで、その施設で作った野菜を食べてきた。食べた感じは、普通に美味しい。何か特別に美味しいという感じではなかったけれど、逆に言えば普通のところが凄い。葉物はどれもちょっと柔らかめで、しゃきしゃきした食感を求める向きにはちょっと物足りないと思うのだけれど、逆に歯が弱ってきている人とかにはかなり優しい食感だと思う。あと、加熱してしまったら天然だろうが工場製だろうが、全然変わらないと思う。何しろ、「これは工場生産だからダメ」なんていうことはない。ま、世の中のほとんどの人たちは雪国まいたけの工場産まいたけを食べているのだから、別に工場で作られた野菜を毛嫌いする必要性はないはずだ。

では、この植物工場で野菜をつくるのは、どこが良いのか。

まず、完全な閉鎖系での栽培だから、虫が入ってくることがない。病害虫にさらされることがないから、農薬の必要性がない。すなわち、無農薬野菜。

続いて、供給の安定性。「今年は日照が少ないから」とか、「雨が少なくて」みたいなことがない。過剰に生産することも、不作に悩むこともない。安定して供給されるから、価格も安定する(はず)。いや、電気代とかが上下すれば植物工場製の野菜の価格はアップダウンするんだろうけれど、まぁ、基本的には安定するはず。少なくとも、気候の年変化に起因する価格変動よりはおだやかな変動になるはずだ。

日照時間を制御できるので、ある程度まで成長スピードも制御できるはず。つまりは必要とされている時期に必要とされている量だけを供給できる。それも、数日とか、もしくは一日レベルで制御が可能なのかも知れない。

室内での栽培だから、オールシーズン希望の野菜が希望の量だけ供給される。「旬」という概念がなくなってしまうことになる。日本人は季節感とかを物凄く大事にする人種なので、それはそれでメリット、デメリット、両方が生まれてくると思うのだけれど、少なくとも都市部に生活している人々にとっては、ポジティブなインパクトの方が大きいと思う。

それから、異物混入も頻度が減るはず。というか、理論的にはほとんどゼロにできるはず。なので、野菜を供給する側の負担やリスクは大きく軽減されるはずだ。また、当然のことながら洗浄もほとんど必要ないはず。この手間がなくなるのも飲食店にとってはありがたいはず。

業態によっては、いつでも取れたての野菜を楽しめる、なんていうことも実現する。畑から直送ではない。目の前で栽培されている野菜を摘み取って、その場で調理するとか、あるいはその場でそのままサラダにして食べることができる。イチゴ狩りみたいなのりで、飲食店の中で野菜を手で摘み取って、そのまま食べることができる。今でもハーブなどを自宅で栽培して楽しんでいる人はいると思うのだけれど、そののりで野菜サラダが作れたりすることになる。

逆に、デメリット。

まず、ちょっと高いらしい。でも、これは技術導入初期は仕方ない。上に列挙したようなメリットがたくさんあるのだから、工場産の野菜を投入しても、最終的には競争力も期待できる気がする。それに、一般の家庭ならともかく、レストランとかなら、最初から割高なのは承知の上のはず。だって、家でカレー作ったら一皿200円ぐらいで作れるとわかっているのに、ココイチみたいに美味しくもないカレーに普通に400円とかお金を払うわけで、中村屋なら1000円以上。だから、レストランの内部に植物工場を置いておいて、そこから食材を供給するなんていうのは十分にありうる話だろう。外食産業は植物工場導入のもっともわかりやすい現場となるはずだ。

続いて生産できる品目。このあたりは今日のプレゼンではあまり詳しく触れられなかったけれど、葉物が中心になるのは当然。葉物の中でも作りやすいものと作りにくいものはあるはず。作りにくいものについては価格も高くなってしまうだろう。品目の拡大は今後の課題になっていくと思うのだが、実際のところはそれほど難しいことではないと思う。

あとは・・・・停電とかがあると一網打尽になる可能性があるとか、いくつかの問題はあるんだろうと思うのだけれど、今日は美味しい料理を食べながらだったから考えが及ばなかった(笑)。

ところで、このブログの「ブログでバイオ」で取り上げるんだから、このくらいの話で終わってしまうのでは面白くない。僕が注目するのは遺伝子組換えによる高機能野菜の植物工場による生産である。植物工場は当たり前の話だけれど、閉鎖系である。つまりは昆虫によって花粉がよそに飛んでいってしまうとか、そういう事態があまり想定されない。もちろん皆無ではないし、人為的に外部に持ち出されてしまうリスクも存在はするものの、基本的に閉鎖系である。今、日本で閉鎖系が期待されているのは言うまでもなく遺伝子組換え作物の栽培シーンである。遺伝子組換え作物の栽培にとって、植物工場は大きな影響を及ぼすに違いない。栽培の可能性が広がるなら、新しい品種の創出モチベーションもアップするに違いない。一方で、遺伝子組換え技術が植物工場の発展に大きく寄与する可能性もある。つまりは、工場で生産しやすい植物のデザインが活発化するだろう、ということだ。遺伝子組換え作物の発展・普及と植物工場の普及は相補的というか、シナジー効果が大きいと予想される。

一見小さな一歩に見えるけれど、都市型植物工場の飲食店への導入というのは、実は非常に大きな可能性を秘めていると思う。飲食店に続いてデパート、集合住宅、そして最終的には一般の家庭へ。これまでは期待に反してなかなか一般化が進まなかった植物工場だが、いよいよ新しい展開が視野に入ってきた気がする。

ただ、植物工場って、ちょっとネーミングがどうかと。もうちょっと何とかならないんですかね(笑)?

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まぁ、このあたりもバイオだよな・・・・

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ウシカイ
東京都新宿区四谷2−2 第22相信ビル4F

ライナ株式会社の告知↓
〜経済産業省 先進的植物工場推進事業〜

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