2009年11月17日

風が強く吹いている

475959e6.jpg水泳、陸上、スキーと、個人スポーツしかやってこなかった人間からすると、駅伝というのはやりたくないスポーツの最たるものだ。なぜ自分が個人スポーツしかやってこなかったのか。それは、他人の失敗によって足を引っ張られるのが嫌だからではない。自分の失敗で人の足を引っ張るのが嫌だからだ。これはあくまでも個人的な感覚だけれど、サッカーにしても、バレーボールにしても、自分のミスによって失点することが凄く嫌だ。そして、駅伝。自分が何かのトラブルに見舞われて、たすきをつなぐことができなくなったら。そこから先のメンバー達のそれまでの努力は全部無駄になってしまう。そんな競技をやる気には、全くならなかった。この映画を観たあとは、団体スポーツも良いかも知れないな、と思った。

冒頭、やや黄色を強調した画面は日本の映画が日本らしさを表現するときに時々使うようだけれど、ちょっと違和感がある出だし。そして、食い逃げをしたはずなのに妙にしっかりしたランニングの姿勢。このあたりまでで、「う、ちょっとこの映画、やばいかも」と思わされる。しかし、やばい感じはこのあと、それほど気にならない。逆に、非常にスピーディーにストーリーが進み、過不足なくラストまでかけるける感じだ。

いや、正確に言えば、ハイジ君があまりにも素晴らしい奴で、素晴らしすぎるという難点はある。こんな完全無欠な大学生がいたら恐くなる。そのくらいに凄すぎて、ちょっとありえない感じ。それから、箱根駅伝をテーマにしているために、ちょっと日本テレビ色が濃すぎるのもいやーんな感じではある。加えて、部員10人きっかりで箱根を目指すのはいくらフィクションとは言え、ちょっと現実離れしている。あと、ラスト。ちょっとデフォルメし過ぎのような・・・。でも、気になったのはこのくらいだろうか。

俳優達の演技がなかなかのもの。まずハイジを演じた小出恵介の演技力が素晴らしい。ランニングのシーンでのスピード感だけはちょっと不足している気がしたけれど、その他については見事。超優等生を何の違和感もなく演じていた。それから、林遣都。彼のランニングスタイルは非常に美しかった。彼は筋肉のつき方を含め、ランナーとしてほとんど違和感を感じさせることがなかった。箱根駅伝のエースと言われても全く不思議ではない。

ライバル、仲間、挫折、怪我、アクシデント、努力、才能といったスポ根ものに必要とされるものを余すところなく登場させ、それらを上手に料理していた。また、駅伝を見事に表現していたと思う。箱根駅伝の中にこれまで存在した色々なドラマをあちこちに配置していたのが良い。それが多すぎず、少なすぎず、良いあんばいだ。

あしたのジョーやアルプスの少女ハイジなど、ちょっと高齢向けの細かい笑いを配置していたのがちょっとしたアクセント。それから、恋愛部分を非常に軽くしたのもバランスを良くした一因だろう。

トータルで見て、非常に出来の良い映画だったと思う。今年の邦画では間違いなく五指に入ると思う。いや、個人的にツボなんですよね、こういう映画。ラストじゃなくて、途中で何度も感動しちゃった。☆3つ。

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