2009年12月01日

ゼロの焦点

31594bb1.jpgアカデミー賞女優3人そろい踏みという触れ込みだったけれど、広末さんは他の二人とは大分違うだろ、と思わないでもない。おくりびとでも、僕の評価はこんな感じだったし。

おくりびと

本場のアカデミー賞で作品が評価されたのは、多分、審査する人たちが日本語をわからないんじゃないかな、と思う。日本語がわからなければ、広末さんの滑舌の悪さみたいなものも気にならないはず。いや、僕は別に広末さんが嫌いなわけじゃない。でも、この作品の主役は無理。どうしてこの作品に広末さんなのか、製作側の意図を聞いてみたい。ところどころで広末さんの独白が入るのだけれど、そのたびに「やれやれ」という感じになる。いや、これは、台詞を棒読みとか、そういうことじゃない。彼女の甘ったるい声が全然フィットしないのだ。緊張感のかけらも生まない。声の質というのは、もう、どうしようもないものだから、彼女には全く非がない。彼女を使った人が悪いのだ。声とか、喋りとか以外の、表情とか、そのあたりも、うーーーーーん、やっぱ、シリアスなドラマには全く向いてないんだよな。大体、もうおばさんじゃない?30代前半の夫より10歳若いって、もうちょっと無理じゃないか?例えば蒼井優さんを使ってくれたら全然イメージ違ったと思うのだけれど・・・・。加えて、こうやって映画になってみると、この主人公の女性というのは相当に難しい役であることがわかる。だって、世間知らずのお嬢様みたいな感じで、最初のうちは雪道を歩くのだってやっと。ところが突然行動力がアップしたと思ったら、今度は明智さんや金田一さんもびっくりな位の名推理を披露しちゃう。石川県警の皆さんが揃ってひっかけられているのに、ただ一人、真実を見抜いちゃう。そんなヤツ、そうはいない。そもそもの設定が凄く難しい女性なんだから、やっぱ、それなりの人を使わないと。

と、主役にダメ出しはするものの、他の俳優陣は結構良かったと思う。特に中谷美紀さんの鬼気迫る演技は今年度の助演女優賞もありな感じ。木村多江さんも芸達者で、特に薄幸の女性を演じさせるとぴか一な部分があるので、存在感こそ中谷さんには負けるものの、良いスパイスになっていた。

昭和30年ぐらいの町並みもそこそこに再現していて、眉毛が凄く細い広末さんの顔に違和感を感じるくらいの見せ方にはなっていたと思う。物語の重要な要素として、終戦間もない状況で弟を抱えてとにかく生き抜く必要があった、という背景があるため、時代だけを現代に持ってくるわけにも行かず、作り手としてはちょっと苦労したんだろう。ただ、彩度を落とした画面の中でキャラメルの箱や赤いコートだけ彩度をあげて強調するとか、あの手の手法は個人的にはあまり好きではない。

映画全体としては、ちょっと物足りない。それほど長くない原作ではあるものの、それでもまぁ長編。それを2時間に押し込んだため、どうしても登場人物たちの書き込みが薄くなってしまう。せめて誰か一人でも良いから、もうちょっと詳しく描けば良かったのに、と思うのだけれど、一人だけ詳しく描くわけにもいかず(誰が犯人だかネタバレしちゃうから)、そのあたりは難しいところがあったんだと思う。

ストーリーとか、設定の部分で難しいのはわかっていて、その上で大人の理由で使いたい役者を使えない、というのなら、脚本で何とかしなくちゃいけないわけだけれど、残念ながら脚本の部分でも、それらのビハインドを相殺するだけのものを見せることができなかった印象がある。

そして、クライマックスの、最後の告発の叫び。あれはどうなんだろう。観る側はその時点ですでに犯人はわかっているから、あんまり違和感がないのかなぁ?本当の真犯人が完全に明らかになっていない状況で、あの行動はちょっとまずいんじゃないか?っていうか、唐突?唐突に見せないためには、素人の素人による素人のための直感的推理じゃなくて、もっと綿密な調査と裏づけがあるべきだと思う。それが不十分な状況でのあの発言は、単なる中傷、嫌がらせに見えてしまう。そういう風に見せてしまったところに、この映画が「負け」であるところがはっきり窺える。あのシーンでは、観客は主人公に感情移入していて、「そうだ!そうだ!」「良く暴いた」と溜飲を下げる必要があるはずだ。ところが、「え?それはまずくない?」と思われてしまうのではお話にならない。

あと、中島みゆきの大ファンの僕が言うのはちょっと気が引けるけれど、この曲はいまひとつ映画にフィットしていなかった。

評価は☆1つ。そしてそれは、ほとんど全て中谷美紀さんの演技に対しての☆。

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