2009年12月14日

沈まぬ太陽

sunJALをモデルにしたように見せた映画で、特に物語の縦糸になっている日航123便の墜落事故に関する記述は僕たちの世代なら誰でも知っているようなことをあちらこちらに散りばめていて、あたかもノンフィクションかのような錯覚を抱かせる。特に、「もう飛行機には乗りたくない」から始まる犠牲者のメモはほぼ全文が事実からの引用だ。一番インプレッシブなところで事実を取り込んでいるので、あれ?これって、ノンフィクション?と勘違いしてしまうかも知れない。

しかし、主人公の恩地に似た人物は存在しても、実際のところは大きく異なっているのだろう。単なるフィクションとして捉えるのが正解なんだと思う。何しろ会社対労組を完全に強者対弱者として対比させ、会社の迷走をすべて経営と官僚に押し付けるような表現は実際とはかけ離れているのではないかと思う。ちょうど今、JALは経営危機の真っ只中でもあり、その情報がどんどん我々に提供されつつあるので、「ちょっと、恩地を美化しすぎ」というのは誰でもわかってしまう。完全なる悪もなければ完全なる善もないのが実際の世の中だが、この物語においては主人公は完全なる善のスタンスを徹頭徹尾崩さない。だからこそ、フィクションだと割りきって観るべき作品だと思う。

さて、そんな感じで、あたかもノンフィクションのような見せ方をしている本作だけれど、フィクションの映画としての出来はまぁまぁだと思う。今年観た邦画の中では間違いなく上の方に来る。何しろ、渡辺謙の演技が渋くて味がある。労組の委員長としてのガッツポーズとか、なかなか様になっているし、色々な場面で見せる苦悩の表情も良い。ちょっとオカシクなってしまったシーンなどもきちんと表現出来ていて、良い役者だなぁ、と思う。他にも、鈴木京香、香川照之、木村多江といったあたりがしっかりと脇を支えている。三浦友和や石坂浩二、宇津井健、小林稔侍あたりは無難なところだけれど、とにかく良い役者をずらっと揃えているところはさすが大作という感じ。それにしても、木村多江さんという女優さんは、いつも不幸な女性の役ばかり(笑)。このままではいつもヒスを起こしている柴咲コウみたいになってしまうので、たまにはもっとハッピーな役とかで使ってあげたら良いのになぁ、と思う。

観終わって一番に思ったのは石坂浩二が格好良すぎるということだけれど、他にも思ったことはいくつかあって、でもやっぱり最大のことは駆け足過ぎるということ。色々な人間模様が満足できるほどには描かれておらず、20世紀少年を三部作でやるお金と時間があるなら、こっちを三部作でやれば良かったのに、と思う。そうならないところが日本の映画界の残念なところだ。

あ、そうそう、一番残念なところ。飛行機が飛ぶシーンがことごとく不自然。あれは、JALの協力が得られなかったから?それとも、離陸したらすぐに消え去って欲しいから?理由はわからないのだけれど、「飛行機はあんな風には飛ばない」と突っ込みたくなる。どうせCGでやるにしても、もっと自然に飛ばせないものか。コルサントを行き来する宇宙船の方がよっぽど自然な動きである。

勿体無いところはいくつもあるのだけれど、ラストシーンの美しさもあって、なかなか満足できる仕上がりではあった。渡辺謙はしがらみさえなければ主演男優賞候補だろう。評価は☆2つ半。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/buu2/50950555