2010年01月23日

インビクタス

3f206093.jpgここ数年、ほとんどハズレらしいハズレ映画が全くないクリント・イーストウッド監督の最新作。

反アパルトヘイトを唱え続け、ノーベル平和賞受賞、南アフリカ共和国第9代大統領となったネルソン・マンデラ氏と、1995年に南アフリカ共和国で開催された第三回ラグビーワールドカップでの、南アフリカ共和国チームの活躍を描いた作品。

ネルソン・マンデラ氏は、1962年に国家反逆罪の罪で逮捕、1964年に終身刑の判決を受け、1990年に釈放されるまでケープタウン郊外にあるロベン島の刑務所に収監され続けた。この間、ネルソンはW.E. Henryの「インビクタス」という詩を心の支えとして生きてきた。その一部を抜粋すると次のようなものだ。

「その門がどれだけ狭いとしても、そのまま何故罰を受ける必要があるのだ。
私こそが私の運命の支配者であり、私こそが私の魂の指揮官なのだ」

一方で、南アフリカ共和国ラグビーナショナルチーム「スプリングボクス」は、国家の恥とまで言われ、全く期待されずに第三回ラグビーワールドカップに出場する。スプリングボクスのキャプテンとネルソンは、どうやってスプリングボクスを導いていくのか。全体を通じて、ネルソンの思想を反映した「赦すこころ」と「諦めないこと」のブレンドが見事。

第三回ラグビーワールドカップの結末については多くの人の知るところでもあるのだが、もしそれを知らない人は、イーストウッド映画の「アン・ハッピーエンド」傾向を合わせ、あまり事前調査せずに観た方が良いと思う。映画を楽しめるかどうかの重要な要素である「結末」は、空気の読めない配給会社によって、ご丁寧に映画のチラシでもネタバレしているので、不用意にチラシを読んだりしない方が良いかも知れない。

#どうしてこういう無神経なチラシを作るのか、数時間問い詰めたいところ。

正直に言えば、この映画は、そこで語るべき内容に対してちょっと時間が短すぎたようだ。あと1時間は必要だったかも知れない。その分量を製作サイドは相当に切り詰めている。おかげでどうしてもアラは目につく。でも、そういう、重視すべきストーリーは原作本に譲るべきなんだろう。本には本の良さがあり、映画には映画の良さがある。

インビクタス〜負けざる者たち

スポーツ映画で一番肝心なのは、そのゲームシーンである。ボクシングしかり、レスリングしかり、このところの名作映画は、こうしたシーンがどの程度リアルかという部分によるところがある。その点、球技は難しい。卓球やテニスだったら、CGによってボールを描いてしまうという技があるのだけれど、ラグビーではデカいボールを抱えて走る場面が多いので、なかなかそうはいかない(実際のところ、キックシーンはCGなのかも知れないけれど)。結果として、人間と人間がぶつかるところを多用するとともに、あとは音響によって迫力を出していた。だから、この映画は家のテレビで観たら迫力は大幅減。別に映画館の回し者ではないけれど、DVDで観るんじゃなくて、音響のしっかりした映画館での鑑賞を勧めたい。

ちなみに、本作ではマット・デイモン演じるキャプテン、ピナールが非常に大きな役どころとなっていて、スプリングボクスの監督の姿が全くと言って良いほど見えてこない。しかし、実際はこの映画には出てこない監督こそがキーパーソンだったようだ。他にも飛行機のシーン、刑務所訪問のシーンなど、エンターテイメントである映画ならではの脚色があるようだ。こうした脚色のないストーリーについては、原作本で確認してみるのが良いかも知れない。

あと、この映画に限る話ではないが、エンドロールが終わるまで、席を立つべきではない。

#個人的に疑問なのは、どうしてエンドロールの途中で席を立つんだろうってこと。最後まで見ていると格好が悪いとかの頭の悪い価値観が日本人にはあるんだろうか????暗いと足元が見えなくて危ないし、まだ見ている人にも迷惑。それでもわざわざ立つって、かなり頭が悪いと思うのだが。

それにしても、「負けざる者たち」って、なんか変な日本語だよな。もうちょっと別のタイトルを思いつかなかったんだろうか。「インビクタス−不屈−」ぐらいでも良かったと思うけれど。あ、字幕は松浦美奈さんです。

評価は☆3つ。
Invictus

Out of the night that covers me,
Black as the pit from pole to pole,
I thank whatever gods may be
For my unconquerable soul.

In the fell clutch of circumstance
I have not winced nor cried aloud.
Under the bludgeonings of chance
My head is bloody, but unbowed.

Beyond this place of wrath and tears
Looms but the Horror of the shade,
And yet the menace of the years
Finds and shall find me unafraid.

It matters not how strait the gate,
How charged with punishments the scroll,
I am the master of my fate:
I am the captain of my soul.

出典:Wikipedia "Invictus"

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この記事へのコメント
いつもbuu2さんの映画評価、楽しみにしています。
今回もこの映画、紹介して頂けなかったら見落とすところでした。感謝。


>#個人的に疑問なのは、どうしてエンドロールの途中で席を立つんだろうってこと。

私もエンドロール終わるまでたたないのですが、それは「エンドロール、最後までみたい人がいるから邪魔しちゃ悪いな…」という後ろ向きな意思で、立つ人の気持ちも分からないでもないです(汗。

ただ単に、人の名前を延々と魅せられてもうれしくとも楽しくともなんともないんですよねぇ…。

※以前、私のブログにこんなネタ書いたことも。
http://terusblog.blog3.fc2.com/blog-entry-947.html

「エンドロール見終わるまで立たない!」という方の立たない理由で、今まで納得した理由を聞いた(見た)ことがないのです。

buu2さんの「暗いと足元が見えなくて危ないし」というのは初めて納得した理由でしたが、「まだ見ている人にも迷惑」というのは「じゃあなぜその人達は見ているのか?」という疑問に戻ってしまいます…。


>頭の悪い価値観が日本人にはあるんだろうか
米国に住んでいた人に聞くと、「米人もエンドロール始まったら帰る人、多いよ」とのことです。日本特有のことじゃないらしいです。
Posted by teru at 2010年01月24日 04:58
> 立つ人の気持ちも分からないでもないです(汗。

なるほど。

> ただ単に、人の名前を延々と魅せられてもうれしくとも楽しくともなんともないんですよねぇ…。

確かに、文字は観ていてもつまんないですね。

僕が席を立たない理由は一つにはその作品を作った人に対する敬意。だから、本当につまらない作品だったら最後まで観ないでいっか、と思います。が、「足元が見えにくい」「忘れ物をしたら困る」という理由で、山形スクリームですら最後まで観ていました(笑)

もう一つには、音楽を楽しむこと。エンドロールはあんまり面白くないのがほとんどですが、音楽の場合、良いものが少なくないです。この音楽を聞きながら、映画の余韻を楽しむというのが僕のいつものパターン。ただ、中には先日の彼岸島のように、映画とは全然関係ない音楽が主題歌として鳴り続けるものがあって、そういうのだと聞いていてもなんだかなーと思いますが。

僕の場合、見終わったあとに友達と話をしたり、ブログに書いたりするので、頭の中を整理するのにも使ったりします。良い作品だった場合はエンドロールの時間だけじゃ短すぎると感じることすらあります。

ちなみにインビクタスはエンドロールの最中に色々な画像が流れます。このシーンは観ておいた方が良いと思います。あと、音楽も。歌詞にきちんと日本語訳がついています。

エンドロールまで含めて作品だと、作る側ですら思っていないんじゃないか、と思う映画もないとは言わないのですが、僕としては、例えば演劇で舞台が終わったらカーテンコールを見ずに離席するのと同じような、風情のなさを感じます。演劇ではカーテンコールの前に帰っちゃう人は本当に時間のない人ぐらい。これは目の前に当事者がいるからなんじゃないかと。

> 日本特有のことじゃないらしいです。

えーー、そうなんだ。なんか、そこまで急ぐ理由が全然わかんない(笑)。
Posted by buu* at 2010年01月24日 13:32
観てきました。

>>
正直に言えば、この映画は、そこで語るべき内容に対してちょっと時間が短すぎたようだ。あと1時間は必要だったかも知れない。その分量を製作サイドは相当に切り詰めている。おかげでどうしてもアラは目につく。でも、そういう、重視すべきストーリーは原作本に譲るべきなんだろう。
<<

観終わって、やっと上記引用部の意味が分かりました。もっとチェスターを丁寧に描いても
良かったのではという印象を持ちました。
でもそうすると、3時間近い上映時間になってしまう可能性があるし、現状でも間延びのない
筋肉質な作りとなっているので、イーストウッド恐るべしという感じです。

びっくりしたのがマット・デイモンの肉体、特に広背筋です。Bourne シリーズではもっと
スリムでしたよね?自分も筋トレが趣味というか若干依存症気味なんですが、アスリート
でもないのに、あの広背筋を作るのは相当すごいなと思います。
Posted by mossari at 2010年02月06日 01:47
> びっくりしたのがマット・デイモンの肉体、特に広背筋です。Bourne シリーズではもっと
> スリムでしたよね?自分も筋トレが趣味というか若干依存症気味なんですが、アスリート
> でもないのに、あの広背筋を作るのは相当すごいなと思います。

何でもできる今ですから、特撮かも知れないですけどね(笑)
Posted by buu* at 2010年02月07日 18:01