2010年03月17日

マイマイ新子と千年の魔法

bdb9530c.jpg「昔子供だった、全ての大人達に捧げます」みたいなコピーが大分前にあったような、なかったような。そんなコピーがピタっとはまる、大人向けの映画である。

昭和30年代の山口県の田舎町が舞台であり、主人公。その町にやってくる人(生まれたり、引越してきたり)と、去っていく人(死んでしまったり、引越して行ったり)に関する複数のエピソードを子供の目線にこだわって描いている。子供の目線だから、いくつかのエピソードは情報不足で、どうなっているのだか良くわからなかったりもするのだけれど、大人の目線で全てを理解することを製作サイドは目的としていない様子。だから、わからないものはわからないままである。でも、子どものときって、そんなことばかりだったはず。分からない中で勝手に空想して、勝手に結論を出して、そしてまた明日のことを考えていたわけで。

長編アニメーションとしては比較的短めに仕上げてあるけれど、そこに展開される映像は非常に濃密で、かなりマニアックな出来だと思う。ディテールに手抜きがなく、そこに対して大人たちの共感が得られるに違いない。一方、子どもが観てしまうと、「何をアタリマエのことを」ということになりかねないと思うのだけれど、今の子どもたちはこの映画で語られているような生活はしてないのかも知れず、だとしたら全く共感を得られないことになる。どちらにしても、子どもたちにとってはあまり面白くない映画なんじゃないか。

子どもの頃は、ちょっとした闇の中に色々なものが存在すると思っていた。そういう闇の中に存在したものがいなくなってしまったのは多分中学校に上がる頃。その頃の思いがはっきりしている人、その頃の思いをなくしてしまったと自覚している人にとっては非常に懐かしい映画になるんじゃないだろうか。主人公たちがかかった千年の魔法を観ることによって、数十年の魔法にかかるのかも知れない。今40歳なら、30年の魔法。

アニメーションというのは、そこに描かれているものは全て人工物。描いていないものは絶対に存在しない。普通に撮影した映画なら、電信柱とか、雲とか、意図せずに画面の中に入り込んでくるものが沢山あるけれど、アニメーションにはそういうものが存在しない。だから、画面の中に描かれているものは、何かしらの意図がある。そして、画面からその意図を汲み取る作業というのがアニメーションの一つの楽しみでもあるわけだけれど、この映画は、その楽しみが普通のアニメよりも多めに配置されていると思う。だから、何度も観ているうちに新しい発見があるかも知れない。ところが、そういった楽しみ方をする前に、この映画はあっという間に一般上映が終了してしまった。今はいくつかの映画館でこっそりと上映されているだけ。ちょっと勿体無い気がする。

評価は☆2つ半。

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