2010年04月13日

てぃだかんかん〜海とサンゴと小さな奇跡〜

28aa135d.jpgこれは駄目だ。典型的な素材の無駄遣い。やりようによってはいくらでも良くなりそうな素材が満載なのに、演出と脚本で台無し。

まず、最初から最後まで、演出、見せ方が凄く軽い。おかげで映画を観た気がしない。テレビドラマならこれでも全然いけていると思うけれど、これは映画のはず。岡村隆史さんは別に悪くないんだけど、ちょっとお金をかけたテレビドラマという感じになってしまった。原因は演出。

冒頭のタイトルが出るまでにダメダメ感がただよう。お前、フィンはいつ手にいれたんだ?みたいな。「うわ、やばい映画に来ちゃったな」というのがこの時点での印象。よく憶えてないけれど、彼女は最初からシュノーケル持っていたっけ?なんか、画面がかわるたびにどんどん装備が充実していくような、不思議なシーン(もちろん悪い意味で)だった。

脚本もどうなのかなぁ。不動産王のくだりとか、全然意味が分からないし、後始末もお粗末。折角作ったアレはそのあとどうしたの?なんか、やりっ放しで放置しちゃっているものが多い。

「実は」という部分も別に謎というほどのこともなく、ストーリーに対しての変化球という感じにはなっていない。

実話をベース、ということだから仕方ないのかも知れないけれど、主人公がかなり情けないのも困りものだし、彼が立ち直るのもなんかありきたりで面白くない。

あと、意味もなく長澤まさみが出てくるのも邪魔。彼女にはこんなツマラナイことをやらせず、もっとちゃんとした映画に出してやって欲しい。本当に長澤まさみは気の毒。

つまり、最初から最後まで、突然意味不明に登場するものがあったと思うと、意味ありげに現れておいてそのあとフォローが全くなかったりして、支離滅裂なのだ。様々なエピソードをコラージュするのは構わないけれど、それにしたってやりっ放しでは困る。

ただ、この映画の最大の問題点はそこにはない。「なぜ、サンゴの産卵にこだわるのか」ということが明確でないことが問題なのだ。専門家が「ひとつだけ方法があります」と知恵をつけてくれただけで、どうしてそれが一義的な目的になるのか。サンゴに対する知識がない観客にとっては、「なぜサンゴの産卵が重要なのか」ということに対する知識が必要だ。例えばデス・スターを攻撃する理由、イスカンダルまで行く理由、フラダンスの練習をする理由、色々あるけれど、とにかく行動には理由が必要だ。そして、それを実現するために努力する姿を応援し、それが実現したときにわがことのように喜ぶことができる。その、一番肝心な「理由」の説明が全く足りないのである。それから、その目的の難しさも全然伝わってこない。それのどこが大変なのか、どんな工夫をしなくちゃならないのか、そのあたりが全然わからない。大体、居酒屋やっていたときに普通に飼ってたじゃん、あれと何が違うの?ってことになっちゃう。目的の設定が無理矢理で、その目的の難しさがアピールされず、そしてそこに至る過程も苦労しているのはお金だけ。おかげで、本来は感動的なシーンとなるはずのラストシーンが全く感動的にならない。感じるのは、「なぁんだ、結局子役と自然に頼りっきりの駄目映画か」。やりたかったのはサンゴの産卵シーンを見せることだったのかなぁ?もしそうなら、NHKのスペシャル番組とかで十分だったはず。

なんというのかなぁ、中学生を無理やり連れて行くための文科省推薦の映画、みたいな感じである。ダイビングが趣味とかなら面白いのかなぁ。

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