2010年05月20日

十二人の怒れる男

十二人の怒れる男 [DVD]

裁判もの映画の名作として名高い本作。随分と昔に一度観た記憶があったんだけれど、もうすっかり忘れてしまったので、もう一回観てみたのだけれど、意外にも、あまり面白くなかった。

何しろ、ベースになっている裁判(裁判シーンは皆無なんだけれど)がいい加減すぎる。昔はこんな感じで裁判をやっていたの?という感じ。そして、本作で舞台となる陪審員の議論も物凄くずさん。ナイター行きたいだの、さっさと終りにしようだの、現代ではちょっと考えられないような姿勢で陪審員室にいる。

ただまぁ、昔はこうだったんだろうなぁ。

脚本はそれなりに良く出来ていて、有罪派が自分の理論を補強しようとして墓穴を掘ったりするあたりは笑っちゃうけれど、でもこれも、最近の宮部みゆきとか、東野圭吾とかのミステリーを散々読んでいる向きには全く物足りないと思う。有罪の根拠になっている目撃者達の証言があまりにもいい加減で、次々とぼろが出てきて、そしてラストにつながっていく。何より先が見えてしまいすぎる。少なくとも、今の時代にこの映画を作ったら、「随分と作り込みが甘い脚本」とみんなに突っ込まれちゃうと思う。

今の裁判ものとか、ミステリーとかって、こういう昔の映画を踏み台にして、少しずつグレードアップしてきているはず。こういう映画があったからこそ、今がある、みたいな感じ。それはわかるんだけれど、例えば時計じかけのオレンジなどは「今観ても全然古くない」っていうのがある一方で、この映画は「やっぱ、古いなー」という印象が先に来てしまう。

演技という部分では、無罪派の冷静ぶりはそれほど見所という感じがしない。一方で有罪派のエキサイトぶりはなかなか見事。でも、それだけかなぁ。

今も評価の高い本作だけれど、ミステリー慣れした現代人でも楽しめるのかなぁ。映画史に残る作品として、一度は観ておく必要があると思うけれど、それは知識や教養として。観て、「これは面白い!!」と現代人が感動するような作品ではないと思う。

個人的には、「あぁ、この時代は女性とか、カラードとかに全然配慮がないんだな」っていうあたりの方が興味深かった。今作ったら、絶対何人かは女性だろうし、何人かは黒人のはず。

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