ふるめの名画をDVDで楽しむシリーズ。今日は「クレイマー、クレイマー」を見てみた。
まず、映画のタイトルを見てあれ?という感じ。原題はKramer vs. Kramer(クレイマーVSクレイマー)となっている。どのクレイマーさんですか?という感じだけれど、これをクレイマー、クレイマーという邦題にしてしまうセンスは墓場に埋めておくべきだと思う。
いきなり出鼻をくじかれた感じなんだけれど、そこから先は緩みがない。外国人としてはかなりあたまでっかちに見える(物理的に)クレイマー氏(男)が大活躍するのだけれど、彼と、彼の一人息子の様子がいきいきと描かれる。
ちょっと思うのは何十年も前の日本人がこの映画を見ていったい何を感じたんだろう、という本筋とはちょっと違うところが興味深い。なぜなら当時の日本は今ほど女性が自立できていなかっただろうし、ノイローゼみたいなこともあまり表面化していなかっただろうし、訴訟社会でもなく(これは今もだろうけれど)、全く理解不能だったんじゃないだろうか。しかし、今の日本では米国に遅れること約30年、ようやく米国的な社会環境に良くも悪くも追いついた感じである。
映画は、中間のゴタゴタを挟んで、冒頭のシーンとラストのシーンで色々なものを対照している。それらについて映画の中では別に詳細に描かれてはいないのだけれど、どれも印象深い。特にフレンチトーストのシーンは出色。最初は息の合わない親子だったのに、いつの間にか見事な連携プレーになっている。その時の息子の仕草が凄く良い。
他にも、冒頭とラストのクレイマー女史の表情の違いも良い。意外と変わっていないのがクレイマー氏だが、彼は仕事とかの社会的な部分が大きく変わっている。そういう変化の構造が非常に丁寧に描かれていると思う。
しかし、見ていて思うのは「男からしたら切ないよなぁ」ということであって、これを女性が見るとどう思うのだろう。僕が思ったのは、「このラスト、女性からは納得がいかないんじゃないか?実際にこういう立場になったとき、メリル・ストリープのような行動を取るかな?多くの女性は取らないんじゃない?」ということ。
男が見たら、文句なく☆3つなんですがね。女性が見るとどうなんですかね?