2010年07月19日

借りぐらしのアリエッティ

ec4aa290.jpgこのところ、ちょっと調子がわるいんじゃないの?と思っているジブリだけれど、新作だからもちろん観てきた。あれ?ジブリって、こういう芸風だったっけ?

まず、絵の作り。水彩画のような背景にセル画のような人物を重ねている。実際には人物だけじゃなくて、ダンゴムシも、猫も、葉っぱも、動きのあるもの、動くものは全部ベタっとしたカラーリング。そして、動かないものは水彩画。この取り合わせがかなり違和感があるんだけれど、ジブリって前からこういう手法を採用していたっけ?なんか、初期のPIXARの3DCGアニメのような違和感がずっとつきまとった。水彩画の部分の出来が良いから一層そんな感じ。印象派の絵にセル画を乗せているような。

それから、音。もう最初から最後まで音の洪水みたいな感じ。サラウンドがきちんとしてきた劇場に対応したということなんだろうか。四方八方から音が押し寄せてくる。BGMはかなりの頻度で鳴りっぱなしだし、効果音もかなり大きめでサラウンド感も強調している。正直、ちょっと押し付けが強い演出だと思った。でもまぁ、ルーカスの映画とかだとジョン・ウィリアムズの音楽が鳴りっぱなしなわけで、洋画に近づけたという感じなのかも知れない。とにかく、間とか、静寂とか、そういうのを大事にする日本の映画の作りとはかなりかけ離れた感じ。それが良いとか、悪いとかではなく、単に違和感を感じる。また、小人から見た巨人の音をやや低めにして、音によっても大きさの違いを見せていたんだけれど、なぜかこれが最初だけ。これについてはずっとやれば良いのになぁ、と思った。

ジブリらしさといえば、小動物の視点で世の中の森羅万象を描いた点だろうか。大人の視点よりはずっと子供の視点の方が低いわけだけれど、さらにずっと低い小人の視点。これによって、人間が日常生活で無視しているあんなことやこんなことに気付かせてくれる。そのあたり演出力は「あぁ、ジブリ」という感じ。

最近のジブリで顕著な説教臭さはかなり抑えめ。無理に解釈すれば「これはこういうことを言いたいんだろうな」などと考えることは出来るのだけれど、あんまり難しいことを考えない方が楽しめると思う。

#ラストについてのネタバレは追記に書くことにする。

全体を通じて感じるある種の懐かしさみたいなのは非常に評価が高いと思う。実は僕は「マイマイ新子」でみんながそういう評価をしているのを読んでいてどうもピンと来なかったのだけれど、この作品については、何か最初から最後まで、懐かしい感じがしていた。そういう、ちょっと不思議な体験をさせてくれたところは高く評価したい。いや、だからこそ、「え?これで終わっちゃうの?」と思うのである。

以下、ネタバレの感想。大したことは書かないけれど、この映画をきちんと楽しみたいなら読まないことをお勧めします。

評価は☆2つ。

(於大泉シアター4、H-11)
以下、ネタバレ。

この映画は「え?これでおしまい?ここで?マジ?」みたいな感じで終了する。冒頭の独白をきちんと覚えておかないと、より一層「えーーーー???」って感じちゃうと思う。覚えておいても、やっぱり「えーーーー???」みたいな。

この記事へのトラックバックURL