2010年08月14日

ブログでバイオ第72回 遺伝子検査の信頼性診断

またしばらくお休みしているから、ちょっと「ブログでバイオ」ねた。70回はまだ草稿のまま(汗)。71回は番外編ってことで書いたので、一応これは72回ってことで。

遺伝子検査が色々とできるようになってきて、ビジネス展開も色々と図られている様子。皆さんには頑張って欲しいところだけれど、こんなニュースも。

遺伝子ビジネス野放し、根拠不明確な例も…規制求める声

記事を読んだけれど、明確な「規制を求める声」が掲載されていない不思議な記事。「公的機関の監督」っていうのが規制なのかな。

こんなの、貧乏人を相手にしている商売じゃなし、信者につぼを売るのとあんまり変わらないんだから、好き勝手にやらせておけば良いんじゃないの、とりあえず、というのが僕の考え方ではあるのだけれど、情報提供というのはきちんとやられるべきで、消費者はそういう情報を取捨選択すれば良いだけの話。問題は、こういう話が出てきたときに「科学的に絶対ないとは言えない」という立場から専門家が黙ってしまうこと。

ということで、僕は専門家じゃないけれど、この記事に「遺伝子検査ビジネスの具体例」として紹介されているものについて個人的な見解を書いてみる。

薄毛や脱毛についてのリスク判定や、育毛剤の効果予測
「専門家じゃない」と書いたけれど、元育毛剤の会社の社長の僕ですが(笑)、薄毛や脱毛についてのリスク判定についてはかなりの確度で当たるんじゃないかと思う。ただ、それに対して適切な育毛剤、となるとどうなんだろう。医薬品、医薬部外品、化粧品と、色々なランクの育毛剤があるけれど、それらの効果効能に対しては僕はかなり懐疑的だし、それが遺伝子レベルの個体差別に使い分けられるとなれば、その内容についてはもっと懐疑的だ。余談だけれど、ハゲのリスクについては自分の体毛の濃さとか、身の回りの親戚一同のハゲ具合などを見ておけばいちいち遺伝子検査なんかしなくても済んでしまうケースも多々あると思う。
リスク判定◎ 育毛剤の効果予測×(予測内容が「全部効かない」なら◎(笑))

糖尿病や高血圧など生活習慣病のリスク判定と、運動や栄養のアドバイス
このリスク判定はある程度信用できると思う。あくまでもリスクだけれど。確率予報みたいなもので、絶対に高血圧になるわけじゃなく、高血圧になる可能性が高いですよ、と。例えば僕は両親ともに高血圧で、僕自身も30代後半から血圧が高くなった。多分、遺伝子検査をすれば高血圧のリスクは非常に高いと判定されると思う。それで、この検査はある程度高い信頼性があると思うのだけれど、それと運動や栄養のアドバイスについてはどうなんだろう。僕の場合、自分が現役のスポーツ選手だということもあって、血圧が高いと診断される前から一定の運動をしていたし、診断されて以後は運動量を増やし、体重を減らした。今もそういう生活を続けているけれど、それだけでは血圧はほとんど下がらなくて、2年ほど前からカルシウム拮抗剤、アンジオテンシン受容体拮抗薬、利尿剤などを複合して服用している。おかげで今の血圧は125−80程度になっているけれど、食生活と生活習慣のコントロールだけのときは平均で150−100ぐらい、高いときは上が190、下が120なんていう数字もあった(2008年7月ごろ)。生活習慣の改善というのは血圧に関しては良く言われるけれど、リスク判定で高いと判定されるようなクラスターに対しては、ちょっとやそっとの運動や栄養のアドバイスは役に立たないと思っている。あくまでもN=1での感想だけれど。
リスク判定◎ アドバイスの効果△

遺伝性がん以外のがんやアルツハイマー病にかかりやすいかどうかの判定
アルツハイマー病のリスクはできるんじゃないのかなぁ。値段によっては判定してもらいたい。遺伝性がん『以外』のがんっていうのはどうなんだろう。遺伝性がん『以外』って言っている時点で遺伝子検査の可能性を否定しているような気がするんだけれど(笑)。これは遺伝性がん以外のがんの定義とか、それをどういう根拠で診断するのか、その方法があまりにもあいまいなので判断ができない。
アルツハイマーのリスク予測◎ 遺伝性がん以外のがんリスク△?

肥満のタイプや骨粗しょう症、脳血管、心疾患などのリスクを調べ、エステメニューを提案
リスクはある程度判定可能だと思う。でも、それにあわせたエステメニューとなるとやや疑問。遺伝子のタイプ別に運動方法を変えるの?あなたにはこの運動は向いてません、とか?この手の運動というのは継続性が最も大切で、じゃぁ継続性は何によって規定されるかって、その人に向いているかどうか。楽しければ続けるし、辛いだけなら続かない。あと、運動じゃないのかも知れないけれど、運動以外のメニューとなると僕はさらに懐疑的。
肥満のタイプなどのリスク判定○ エステメニューの信頼性△

肥満のタイプを判定し、運動プログラムや食事指導を提供。サプリメントや健康食品を販売
上のサービスとダブっているけれど、こちらはサプリや健康食品を売るわけね。サプリは、効くものは効くし、効かないものは効かない。僕が効くと思っているサプリはプロテイン、アミノ酸、クレアチンあたり。最近はどれも飲んでないけれど、体を大きくしようと思ってトレーニングをするなら、これらのサプリは効果があると思っている。一方で効果がないと思っているのはグルコサミン、コラーゲン、コエンザイムQ10、カプサイシンなど。マルチビタミンやマルチミネラルあたりは個人的には効くと思っていて、極度に疲労しているときや風邪気味の時には必ず飲む。ただ、他人に勧めるほどではない。あと、クレアチンは非常に効くイメージがあるけれど、僕はこれを飲んでいて肝機能障害を起こしたので、これまた他人には勧めない。それで、肥満のタイプに連動してこうしたサプリや健食を勧める、という部分については非常に懐疑的。あなたは内臓脂肪型だから糖分を特に控えてね、こっちのあなたは皮下脂肪型だから脂肪分を控えてね、みたいな?うーーーーん、肥満のタイプ別に食生活を指導するのはある程度効果があると思うのだけれど、そのアドバイスにぴったりフィットするサプリや健食となるとどうなのかなぁ。サプリだけで生活していくならともかく、普通の食事から得ている栄養が95、サプリが5、ぐらいの配分なら、それほど高い効果は得られないと思う。
肥満のタイプの判定○ 肥満のタイプ別食事指導○ サプリ、健食のアドバイス△

「肉食系」か「草食系」かを判定
なんだこりゃ(笑)。そんなの、判定してもらわなくても自分でわかるだろ。
肉食・草食の判定の必要性×

将来の健康や才能を判定して、相手にアピールするための婚活キット
将来の健康判定というのは、ある程度信頼性が高いと思う。才能はどうなんだろう。将来に影響を及ぼすほどの才能ってことだと、「パパは皆川健太郎、ママは上村愛子だから、冬季五輪出場の可能性大」みたいなのは当たっていると思う。でも、そんなのは遺伝子検査してもらうまでもない。誰でもわかるような才能なら検査は不要だし、検査しなくちゃわからない程度の才能じゃぁ、相手へのアピールにも使えないでしょ。少なくとも、僕の場合だったら相手からこんなデータを提供された時点でさようなら、です。
将来の健康の判定○ 才能の判定× キットの有効性◎(ただし、「こんなのを持ってくる奴はダメ、という、ネガティブな利用方法ですが)

他にも何か判定して欲しいものがあったらコメント欄でお問い合わせください。可能な範囲でお答えします。

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この記事へのコメント
数学や物理の天才(?)かどうかなんて判定に興味があるのですが、いかがでしょうか。フィールズ賞受賞者の小平邦彦が昔のエッセイで「ごく最近まで生存競争には数学の才能は影響なかったので中立的な遺伝子のはずだ」とか書かれてましたけど、ご本人は数学者なのできっと生物学的な根拠はないのだと思います。
Posted by コンピュータ屋なんで生物素人です at 2010年08月14日 21:51
> 数学や物理の天才(?)かどうかなんて判定に興味がある

うーーーーん、これは結構難しいテーマですね。僕が見ている限りでは学問の才能というのはかなりの部分が後天的要因だと思われるので、あんまり関係ないのかな、と思うのですが、その一方で一部のアスペルガー症候群の人たちの学問分野での才能を指摘する例もあって、アスペルガーが遺伝するのであれば、こうした検査はある程度意味があるのかな、とも思います。でも、まだアスペルガーの原因遺伝子のようなものは特定されていないですよね?ということで、今のところはこんな判定かと。

数学や物理の才能判定 限りなく×に近い△
Posted by buu* at 2010年08月15日 02:53
原理的に不可能ではないということと、現在あるいは当該企業の技術的に可能であるということは区別されるべきだと思いますが、ブウさんは前者の意味で○×をつけていらっしゃいますよね?
がんや肥満や薄毛に関する遺伝子ってまだ特定されていないと思っていたので。僕も不勉強なので間違っていたらすみません。
Posted by ya at 2010年08月15日 18:30
> がんや肥満や薄毛に関する遺伝子ってまだ特定されていないと思っていたので。

例えばこんなのとか。

肥満遺伝子
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/418/418823.html

生活習慣病と遺伝子多型
http://proteome.tmig.or.jp/pjtdb/Kenkyu/Takei/index.html

はげ遺伝子
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2528051/3421448

何の根拠もなくやっている会社はあんまりないと思います、さすがに。
Posted by buu* at 2010年08月15日 18:53
> 例えばこんなのとか。

ちょっと追記。僕がここで書いたことのほとんどは、診断そのものを否定しているのではないんです。診断をベースに、「じゃぁ、こうやりましょう」という、手段の方を否定している。

育毛剤なんてその典型的なものですが、薬剤などの有効成分を経皮吸収させて効果を出させるって、物凄く大変なことなんです。特にその分子量が大きくなったら絶望的。低分子しか入っていきません。じゃぁ、そんな、経皮吸収されてほいほい体の中に入って何らかの生理作用を起こすようなものが化粧品とか医薬部外品として扱えるのか、ということになります。そりゃ、百歩譲っても医薬品でしょうよ、と。じゃぁ、遺伝子診断、遺伝子検査に立脚した医薬品って、そんな数年で許認可取れるの?という話にもなるわけで、「やっぱ、効かねぇだろうよ、普通」って判断になるわけです。

トクホとかも一緒。いくら食ったって効かないものは効かない。効かないから医薬品じゃなくてトクホなんです。サプリも一緒。まぁ、経皮吸収よりは経口摂取の方が可能性は高いと思いますが、これまた高分子が効く可能性は非常に低いと僕は思っています。高分子を効かそうと思ったら、注射、点滴じゃないですかね?普通は。

ま、僕は専門家じゃないので、非常に感覚的に書いているだけですが(笑)。
Posted by buu* at 2010年08月15日 22:34