2010年10月12日

清水女流王将とあから2010の対戦に対する雑感

注目の対戦はこのブログでも既報の通り、あから2010の勝利で終わった。

将棋ソフトが初勝利 清水市代・女流王将を下す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101011-00000545-san-soci

この対戦でわかったことは、もう、世界中の女性で、コンピューターに勝てる可能性があるのは、せいぜい里見香奈女流名人・倉敷藤花ぐらいである、ということだ。

結果がこうなってみると見えてくることがあるので、ちょっとまとめておく。銘記しておくべきは、今回の結果は、おそらくプロ棋士たちはかなりの確度で想像していたであろう、ということだ。

将棋は、非常に論理的なゲームである。そして、強いものが勝つ。ある程度の偶然は存在するが、野球やサッカーに比較したら、ずっとその割合は低い。そして、弱い人間には自分より強い者同士の強弱については良くわからないが、強い人間には、自分より弱い者同士、あるいは片方が自分より弱い者の対局の結果は、かなりの確度で予想がつく。プロ棋士同士の対局が一方的な結果にならないのは、両者の強さが拮抗しているからに過ぎない。そして、人間同士の場合はちょっとしたミスや、考慮時間の不足など、いくつかの偶然の要素が存在するが、コンピューターにはそれがない。ほぼ確実に同じ強さを発揮するし、ケアレスミス(バグ)も繰り返さない。さらに、今回はそういうプログラム上の抜けを防止するために、複数のアプリの合議制を採用した。

ほとんどすべてのプロ棋士は清水女流王将よりも確実に強い。そして、彼らはコンピューター将棋の強さもある程度理解している。今回のような素晴らしく大げさなシステムを用意するまでもなく、普通にパソコンにインストールできる市販のアプリに対してもプロ棋士たちは非公式にはコロコロ負けている(某プロ棋士談)し、ネット中継の現場にいた事もあるので、プロ棋戦でネット解説をする場合も、横のパソコンに棋譜を入れて、その読み筋や詰みの有無をチェックしたりしているのも見てきた。かなり前(といっても数年前)のことだけど、奨励会3段まで行った指導プロ棋士が僕のノートパソコンにインストールされていた激指5にあっさり負けたのも目にしている。

僕たちパンピーは「どちらが勝つんだろう」と固唾を飲んで見守った今回の対戦だが、ほとんどのプロ棋士にとっては、予想通りの結末だったに違いないし、その予想を外すほどには彼らは弱くもないはずだ。もちろん、清水女流王将自身も、である。

おそらく、清水女流王将は、負けるのを覚悟の上であからに立ち向かい、そして敗れたのである。

清水女流王将が弱いのではなくあからが強いだけなので、清水女流王将はこの結果を何ら恥じることはないと思うのだが、そこは勝負師。負けると分かっていて、全日本的に衆人環視の中での対局が楽しいものであったとは思えない。

この結果について、米長将棋連盟会長は次のようにコメントしたようだ。

「彼女(清水市代)のリベンジがフェアだと思う」

出典:コンピューター将棋VS.女流王将・清水市代「投了。清水さん、おつかれさまでした

「まず、今回の対局を細かく精査しなければなんとも申し上げられない。情報処理学会の皆さん、ファンの皆さんの声を踏まえて、今後は決定していきたい。ただ、個人的には清水女流王将のリベンジを期待したい」

出典:「コンピュータ将棋が女流王将に勝利」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101012-00000005-impress-sci

確かに、清水女流王将対あからという勝負だけを切り取れば、再戦はフェアである。しかし、将棋界から見たら、これはフェアでも何でもない。プロ棋士が勝負の場から逃げているだけの話だ。もちろん、次の対戦に清水女流王将対あからの対局があって『も』構わないが、それはあくまでもエキシビションであるべきで、メインディッシュは清水女流王将よりも強い、プロ棋士との対戦であるべきだろう。

決着がついた直後の報道ではこんな希望的観測もあったようだが、

今後、あからは早ければ半年後にも日本将棋連盟が指名する男性棋士に挑み、さらに勝てば最高峰の羽生善治名人(王座・棋聖)か渡辺明竜王と対局する見通し。

将棋ソフトが初勝利 清水市代・女流王将を下す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101011-00000545-san-soci

すでに米長会長は及び腰である。

それにしても、コンピューターソフトがここまで強くなってしまったら、もはや奨励会などというプロ選抜の仕組みも不要だ。能力育成の場としての存在意義はあるものの、資格認定機能としては、一定の強さのソフトと対戦して勝てば良いだけのことである。一般の段位認定も不要だ。これに勝ったら2段、これに勝ったら3段、という設定と取り決めがあれば良いだけである。

女流トッププロの次はプロ棋士の標準的なレベル、そして、ゆくゆくはプロ棋士のトップが対戦することになる。ソフトは基本的に弱くならないし、過去の対局はデータベース化され、一定の結論が出ている部分に対しては絶対に間違えない。

将来は、商業イベントとして、毎年名人や竜王がソフトと対戦するようになるのかも知れない。そして、ほどなく、その注目度は下がっていくのだろう。誰もソフトにかなわない、という状態になって。そのソフトが将来スカイネットになるのかどうかはわからないけれど、開発者たちの興味の対象は将棋から囲碁へとシフトしてしまうのだと思う。

将棋連盟が少しでも長く「棋士対ソフト」というコンテンツの寿命を延ばしたいと思うのは道理なのだが、その間にもソフトは着実に強化されるので、もたもたしていると、一度も勝てないうちにソフトが世界最強、ということにもなりかねない。一度くらいは人間がソフトに勝つところを見てみたいのだが・・・・。

何しろ、将棋界という、「ロジカルなゲーム」と「棋士の人間味」という相反する要素がバランスを取って共存していた世界は、もう昔のままではいられない状態になったことには間違いがない。



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