2010年12月16日

リバネスが健康食品を販売していることに関して:その2「リバネス批判」

リバネス社(以下、リバネス)の社長の丸代表取締役さん(以下、丸さん)が僕に対して、他人のつぶやきを利用して「リバネスの健康食品を批判する資格があるのか」と言っているので、これに反論させていただくとともに、リバネスが自社サイトで展開しているアクティビティについて批判させていただきます。

ツイッター上のRT現場はこちら

引用全文
RT @Mochimasa: てか、白金ナノコロイド業者に教えてもらった「コミックサイエンス」なる言葉を得意げに使っちゃう元木さんにリバネスの健康食品を批判する資格はあるのかな? ^^
約11時間前 Echofonから


まず、資格云々の白金ナノコロイドの件から片付けたいと思います。おそらく丸さんは僕がどういう経緯でアプト(上記で言及のある白金ナノコロイド業者)の岡山さんと知り合って、どういう話をしたのかも知らずにRTしているんだと思います。元々の記述は以前、僕のブログに粘着していた一学生(研究者?)のつぶやきですが、その主旨は、一年ほど前に「コミック・サイエンス撲滅委員会」を設立した際、「コミック・サイエンス」というキーワードを教えていただいたのが岡山さんであるということをことさら問題視しているものです。岡山さんは以前、北海道ベンチャーキャピタル(HVC)にいた方で、僕はHVCの子会社のシンクタンクに籍を持っていますから、もちろん知り合いではあります。岡山さんはその後、HVCから転出し、HVCの投資先なのか何なのかは僕は知りませんが、白金ナノコロイドを売る会社の社長になりました。アプト社のサイト構築の一部をお手伝いしたこともあり、その前後に六本木で岡山さんと飲む機会があって、その際に岡山さんから、「コミック・サイエンス」という言葉を聞きました。「似非科学」という言葉とはちょっとニュアンスが違う、「コミック・サイエンス」という言葉が、ちょうど僕がやろうとしていることにフィットしました。そこで、「コミック・サイエンス撲滅委員会」という組織を作って、「科学っぽいけど、科学とは言えないようなもの」を撲滅しちゃおう、ということにしたわけです。その活動は今も水面下で色々やっていて、この間募集をかけた「求人」のエントリーでも、「サイエンス・チェック」という形で企画にしてあります。

以下参照
求人

この中ではコミック・サイエンスという言葉を使っていませんが、僕の中ではコミック・サイエンス撲滅運動の一環で整理されています。それで、そのエントリーの中でも、ちゃんと評価対象例として白金ナノコロイドも入れてあるわけです。僕は岡山さんと知り合いなのは間違いありませんし、今でも連絡を取ろうと思えばいつでも取れますが、だからといって別に白金ナノコロイドに肩入れするつもりなどさらさらありませんし、知り合いがやっていようが、なかろうが、そのアクティビティに対して平等に科学の光の下で照らそうとしているわけです。「批判する資格があるのか」という疑問に対しては、明確に「あるに決まってるじゃないか」と返答させていただきます。以前同じ会社にいて、その人から新しい言葉を教えてもらった程度で批判する資格がなくなってしまうのでは、怖くて人から話を聞くことなんてできなくなってしまいます。ということで、僕は批判する資格があると確信していますので、以下、リバネスを批判させていただくことにします。


では、「批判する資格があるのか」と言っている丸さん(あるいはリバネス)は一体どんなことをやっているのでしょうか。

僕が先のブログのエントリー

どうしてこうなったんだろう?

で指摘したのは、リバネスのサイト「リバネスショップ」で展開していたウコン、しじみ、βカロテンの販売方法についてです。

リバネスショップのサイトはこちら

僕はブログの中で、しじみについて「健康食品」として謳うのはいかがなものか、と指摘しました。すると、リバネスが何を考えたのかは不明ですが、こっそりと記述を変更しました。

変更前
日本国内でも有数の長寿地域として知られる沖縄県で栽培されたウコン、肝臓に良い健康食品として注目されるしじみ、日本伝統の発酵食品として日本料理には欠かせないみそ、これまで出会うことがなかった全国各地の国産食材が、先端的な加工技術により新商品として生まれ変わりました。各食材を扱う地域の一流企業が連携して実現した夢の商品です。

出典:リバネスショップの説明(キャッシュはこちらなど。今のところ、「リバネスショップ 肝臓に良い健康食品として注目されるしじみ」ぐらいでGoogleで検索すればキャッシュが見つかります)

変更後
日本国内でも有数の長寿地域として知られる沖縄県で栽培されたウコン、国産しじみ、日本伝統の発酵食品として日本料理には欠かせないみそ、これまで出会うことがなかった全国各地の国産食材が、先端的な加工技術により新商品として生まれ 変わりました。各食材を扱う地域の一流企業が連携して実現した商品です。

出典:現在のリバネスショップの説明

比べればすぐにわかりますが、「肝臓に良い健康食品として注目されるしじみ」が「国産しじみ」に変更されています。もちろん、僕がその記述について「先端科学」を謳う会社が健康食品を販売するとは何事か、と指摘したことと無関係とは思えません。批判され、変更したにも関わらず、そのことには一切触れずに済まそうとしているわけです。この件について、僕はツイッターで丸さんに直接「健康食品に関する記述をこっそり変えたことについても説明お願いします!」と質問したのですが、返答は得られておりません。上述のRTをする暇はあったようなのですが、僕の質問に答える時間はなかったようです。指摘され、こっそり変更し(すなわち、実質的に非を認め)、挙句に「批判する資格があるのか」と逆ギレしているとしか思えません。

僕が指摘したことについてさっそく記述を変更したことから、その記述のまずさはリバネスも自覚しているのでしょう。まずい、と思っていないのであれば、記述を変更する必要は一切ないのですから。その上で、謝罪もせず、責任も取らず、こっそり書き換えて隠蔽しようという姿勢は株式公開を目指している会社として問題はないのでしょうか。

また、リバネスショップの上述部分についてはすぐにこっそり修正したリバネスですが、では「健康食品」という文字を削除するだけで十分かといえばもちろんそんなことはありません。例えば現在のリバネスショップにはこんな記述があります。

日本国内でも有数の長寿地域として知られる沖縄県で栽培されたウコン

日本の中でも長寿一を誇る沖縄県のウコンと男性の長寿県である長野県のみそ、そして青森県のしじみの 3 種の素材をパウダー化し、新しい料理メニューの開発、サプリメント、スープ、クッキー等、新たな食品の開発を実現しました。


それぞれ出典はこちら

一読して、多少なりとも科学をかじった僕には、「日本の中でも長寿一を誇る沖縄」と「ウコン」あるいは「男性の長寿」と「みそ」には一体何の関係があるのかが全くわかりません。博士が推薦するのであれば、その根拠となる論文が添付されていて当たり前ですが、そういったものはこのサイトには一切見当たりません。日本の中でも長寿一を誇る沖縄の名産といえば思いつくのはサトウキビやゴーヤ、もずくなどたくさんあるわけで、上述のようにウコンを食べているおかげで長寿と勘違いさせるような表記方法はとても「最先端科学」を標榜する会社の「博士」がやることとは思えません。もちろん長野の味噌も同様で、長野県の男性が長寿なのは蕎麦のおかげかも知れませんし、食べ物は無関係で周囲に海がないからかも知れず、何が要因なのかはわかりません。長野の味噌が他県の味噌よりも有意に長寿に寄与するというのであれば、当然その根拠となる論文を明示するのが「博士」の仕事と思われます。しかし、リバネスは自分たちが博士であることだけをことさら主張し、その内容について、例えば長野県で男性が長寿であることと、長野県の味噌にどういった相関があるのかについて、博士らしい説明は一切行っていません。ただ単に、良くある健康食品に「博士」「最先端科学」の看板をつけただけです。

また、同様の広告はリバネスショップ以外のサイトでも実施しています。例えばこちら。

BeAGRI 農業支援を農学の立場から応援する ビーアグリ
地域資源を活かした商品開発支援事業

色々な博士たちが名前を連ねているサイトですが、そのサイトには次のような文章があります。

沖縄県産ウコンパウダーと国産しじみエキスパウダーをブレンドした「ウコンとしじみ」、さらには発酵大豆パウダーを加えた「沖縄皇金ウコン~みそとしじみ入り」。飲みやすい小型の粒状に仕上げました。お酒を飲む前、飲んだ後、毎日の健康維持にご利用ください。


これなどは健康食品の典型的な販売方法です。○○博士が出てきて、「健康維持にご利用ください」だそうです。要するに、「これを食べると健康になります」という記述はまずいので、「健康維持にご利用ください」という記述になるわけです。確かに「これを食べたら健康になる」とは書いていませんから、効果効能については言及していないわけで、厚生労働省や農林水産省からクレームが来ることはないでしょう。テレビのコマーシャルでも「体脂肪にガツンだ」などと言って、ガツンが何を意味するのかは不明なものの、何か体脂肪が減少するような印象を与えるようなものがありますが、その類の広告と全く代わりがありません。たとえ表記方法が法律上は問題がなくても、この文章から何も知識がない人が汲み取るのは「お酒を飲む前や飲んだ後に飲むと良いですよ。毎日飲めば健康維持にも役立ちます」ということです。ご丁寧に「博士」の看板まで掲げて意図的にミスリードを誘っているわけです。ウコンとはターメリックのことで、普通にカレーに大量に含まれています。カレーを食べたらお酒に強くなったなどという話は聞いたことがありませんし、毎日カレーを食べていたら健康になったという話も寡聞にして聞いたことがありません。また、しじみが健康維持につながるなども全く聞いたことがありません。せっかく色々な立派な博士たちがいるのですから、まずは根拠になるような論文を明示すべきだと思うのですが、そういったことは一切やられていません。根拠を明示せず、博士という看板を利用し、ミスリードを誘う記述で製品をPRするというのは、ろくでもない健康食品の販売の常套手段です。大企業を含む多くの会社がやっていることで、それをいちいち指摘していたら日が暮れてしまうのも間違いないのですが、では、これを「最先端科学のリバネス」などと謳って、補助金などをたくさん貰ってきている会社がやるのは果たして適切なのでしょうか。このあたりは是非、補助金をつけている担当省庁の担当部課に質問してみたいと思っています。ちなみにそれらについても丸さんには「すいません、どこの委託費なのか教えてください。いろいろと質問してみたいことがあるので。」と質問しているのですが、返答をいただいておりません。もちろん、件の見当違いの我田引水RTはそのあとのことです。これなどはこちらで勝手に調べればすぐにわかることなので、ちょっと調べてみようと思います。

#どなたか、親切な方がいらっしゃれば、コメント欄でお知らせください。

なお、僕自身、経済産業省生物化学産業課の事業化担当課長補佐として創業間もないリバネスに決して少なくない額の補助金をつけた人間ですが、当時のリバネスは「理系人材によって教育ビジネスを展開し、理科の面白さを小・中・高校生を中心にして浸透させたい」という理念を持っていた会社で、現在でも補助金をつけた事自体は間違っていたとは思いません。しかし、ことここに至り、こんな商売を始めるのだったら、補助金は不要だったと考えています。

リバネスが「「博士号」の使い方」などという本を出版しておいて、「博士号」を悪用とも言える酷い使い方をしている現状について経営陣がどう考えているのか、非常に疑問に思います。大事なのは「博士号」という看板ではなく、博士号を取るまでの間に身につけたスキルを利用し、例えば特定の食品についてきちんとした有用性が認められる学術論文があるならそれを明示し、かつ、一般の生活者にわかりやすく説明するのが「博士号の正しい使い方」だと思うのですが、リバネスが実際にやっているのは、博士号という看板を利用し、生活者に「博士が健康維持にご利用くださいって言っているから体に良いに違いない」と思わせることのようです。

#本を読んでないので、実際は何が書いてあるのか不明ですが、リバネスの活動を見ている限り、読む必要はないでしょう。要するに、博士号を取ったという結果だけが大事で、そこに至るまでに身につけたスキルなどは全く関係ない、と、自身のサイトでアピールしているのですから。個人的な主観で言わせていただければ、実際のところ、このリバネスショップのサイトからは、「さすがに博士号を持っている人間は違う」と感じさせる部分が全くないように思えます。

ちなみにウコン、しじみの他にリバネスショップでは「 生まれも育ちも確かなビルベリー栄養機能食品(βカロテン)」という製品も販売しています。非常に長い名前ですが、これが商品名のようです。わざわざ商品名に「栄養機能食品(βカロテン)」といれているくらいですから、βカロテン含有を前面に出したいのだと思います。しかし、βカロテンは、喫煙者が摂取した場合、発がんリスクがアップするという報告があるようです。
http://allabout.co.jp/r_health/gc/298876/

http://ganjoho.ncc.go.jp/public/pre_scr/cause/dietarylife.html

また、βカロテンの摂取量が多い人は前立腺がんのリスクがアップするという報告もあるようです。

http://www.rda.co.jp/topics/topics2737.html

こうした論文、報告に対して、きちんと反論する論文を提示するのが最低限「博士」を名乗る人がやることだと思うのですが、リバネスのサイトではそのような報告は見つけられず、ただただ「僕たちは博士です」と記述しているだけのように見受けられます。「栄養機能食品」だからといって健康が増進するわけではないということは先のエントリーで紹介したとおりですが(以下、厚労省サイトの記述を再掲)、

本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。

出典:厚生労働省ウェブサイト

ただ栄養機能食品であることをアピールする販売手法は「最先端の科学」を標榜する会社のアクティビティとしては、期待はずれと言わざるを得ません。

僕が主張していることは全て同じで、「最先端科学」と「博士」を看板にする会社が展開するにしては、あまりにもお粗末なマーケティング手法ではないか、ということです。内々に知り合いのリバネス関係者数人に「どう思うか」と質問してみましたが、「いや、そんなことはない。これは非常にまっとうなやり方だ」という返答は一切得られていません。

もちろん僕は例えばリバネスが「リバネス米」と称してお米を売っていることについては何の問題もないと思っていますし、また応援したいとも思っています。

リバネス米

自分たちで作ってみたい、米についてもっと知りたい、社内の食料自給率200%を目指そう、という考え方に違和感のある部分は全くありません。なるほど、面白いな、と思わされるわけです。

ウコン、しじみ、味噌も、博士らしい科学的裏付けをきちんと提示し、「さすがは博士。さすがはリバネス」という売り方をするのであればもちろん文句はありません。しかし、これらの商品についてリバネスショップで展開しているマーケティングは全く性質の違うものです。その違いについて、リバネスの社員は誰も気が付かないようです。


このように、現在のリバネス社のアクティビティに対しては、いくつかの看過できない大きな問題があると考えています。これらを指摘することにより、「リバネス批判」とさせていただきます。

この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
お疲れ様。。
Posted by muu* at 2010年12月17日 08:43
青森の平均寿命が日本で一番短いことにも触れないとフェアじゃない気がします(笑)。十三湖のシジミは最高なんですけどね。
Posted by g-hop at 2010年12月17日 11:19
> 青森の平均寿命が日本で一番短いことにも触れないとフェアじゃない気がします(笑)。十三湖のシジミは最高なんですけどね。

僕は親戚筋が東能代、深浦、岩崎あたりの五能線沿いに点々としていて、子供の頃は良く秋田、青森の日本海側に遊びに行っていました。ただ、行っていたのは十二湖の方で、十三湖には行ったことがありません。シジミで有名なんですね。平均寿命は短くても(笑)。
Posted by buu* at 2010年12月17日 12:31