2011年02月03日

公的研究機関のテクニカルスタッフの給与はどうやって決まるか

ちょっとツイッターでバイオ系研究機関のテクニカルスタッフの扱いについて話が出たので、参考までに僕が関わった事例を書いておく。

僕は三菱総研から理化学研究所へ出向していたことがあるのだけれど、このとき、一番最初にやったのが「ゲノム科学総合研究センター」(現在の理研横浜研究所)の組織規程を作ること。理研和光本所の文書課の人たちに手伝ってもらって、このセンターの組織規程を作った。僕は当時まだ30前半ぐらいのペーペーだったから、やったのはほとんどが調整と作業。何か頭を使って考え出す、ということは基本的になかった。つまり、クリエイティブな仕事ではなかった。参考資料として、ゲノムセンターの開設のちょっと前に脳科学総合研究センターができていたので、その組織規程を使うことが多かった。

それで、その組織規程を作っていく中で、職員の給与も規定することになったのだけれど(どうでも良いけど、規程と規定は用法が違うので要注意。まぁ、最近は卵と卵子を混同している専門家もいるので、やれやれな感じだけれど)、それがどうやって決まったかというと、全部主任研究員の一存だった。事務方の窓口だった僕が「どうしましょうか」と問い合せて、主任研究員(当時の肩書きはゲノムセンターのプロジェクトリーダーだったのかな?)から返事をもらう、という手順。その際、テクニカルスタッフの採用条件が非常に劣悪だったので、当時の事務方のトップだったゲノム科学総合研究センター研究推進室の室長は、「これはちょっと酷いんじゃないかなぁ、本当にこれで良いの?」と主任研究員に一度差し戻したんだけれど、「いや、これで良い」ということで条件が決まった。

今はどうなのか知らないけれど、理研の組織はプロパーや文科省からの天下り、現役出向を中心とした事務方ラインと、主任研究員によって組織された主任会(大学で言えば教授会になるのかなぁ)ラインの二つのラインが併存していた。主任会の権力は理研においては絶大で、主任研究員たちの発言というのはほとんど何でも通ってしまう状態だったので、基本的に事務方からは異議を唱えることはほとんどなかった。僕のような役人経験者からすると、理研の主任会のように、組織規程には全く名前が出てこないにも関わらず実質的に発言力を持つ組織というのは物凄く筋悪だと思う(なぜなら、責任の所在が明確にならないから)のだが、文科省とかは黙認していて、当時から「変なの」と感じていた。

#今も主任会ってあるんですかね?まぁ、なくなる理由がないものね。

実質的には主任研究員がお金を取ってくるし、テクニカルスタッフの採用も主任研究員主導だし、まぁ、そんなもんかな、とも思うのだけれど、理研の場合は研究費用はほとんどが税金である。税金で運用されている組織は民間企業とは違うわけで、同時に世間一般の相場をある程度リードする役割も持っているはず。多分理研にはそんな意識はないんだと思うのだけれど、研究者とテクニカルスタッフの格差が必要以上に拡大している現状を考えると、もうちょっと自分たちの役割というものを考えてみても良いんじゃないの?と思う。主任研究員がどうやってテクニカルスタッフの給与水準を考えたのか、その根拠は全然わからないけれど、基本的には数名の主任研究員の「エイヤ」で決まっていることは間違いがないので、第三者による客観的な検討があっても良いんじゃないかと思う。その検討にあたっては、「生物系の研究施設におけるテクニカルスタッフの重要性」とか、「ポスドクの受け皿としてのテクニカルスタッフ」という視点が必須である。

#余談だけれど、榊さんはテクニカルスタッフを大事にしていた印象がある。

理研は自称「研究者の楽園」だけれど、まだ「科学者のお手本」にはなっていないと思う。

ちなみに僕はバイオベンチャーの社長を一年間だけやったことがあるけれど、その時には会社のテクニカルスタッフについては給与的に物凄く厚遇した。

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【話題】「理研は自称「研究者の楽園」だけれど、まだ「科学者のお手本」にはなっていないと思う」【Science and Communication】at 2011年02月03日 22:44