2011年02月11日

ブログでバイオ 第74回 バイオインフォマティクス技術者認定試験の検証の必要性

昨日、飲み会で「バイオインフォマティクス技術者認定試験」(以下、バイオインフォ認定試験)という資格の是非について話した。この資格は社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム(JBiC)という経産省管轄の社団法人が持っている資格で、その大本は僕が経産省時代に取ってきた「起業・創業促進型人材育成システム開発等事業(バイオ人材育成システム開発)」の予算である。

そもそも、JBiCという組織には、その成り立ちやバイオインダストリー協会(JBA)との役割分担などについて設立時の担当者(現在は主担当だったY氏、およびその補佐役だったF氏ともに退職)の中でも「単に天下り先を増やしただけではないか」といった議論があったのだが、その後はJBAよりもアクティビティが高かったりするところもあるので、組織の是非については棚上げしておく。

さて、そのバイオインフォ認定試験である。この資格がなんのためにあるか、であるけれど、建前は制度に関する紹介ウェブサイトに記載されている。対象者は「専門学校生、大学生程度」となっており、このことから読み取れるのは次のようなことである。

「一般に、就職にあたっての個人の能力評価は、大学入試の成績、つまり出身大学によって為される。一方で、個人の能力は出口段階ではほとんど評価されない現状がある。それは、大学、大学院の卒業時における能力評価システムが存在しないことによる。こうした中においては、三流大学、および大学に進学していない人たちの能力アピールの場が存在しない。しかし、大学受験時には能力が低かったとしても、その後、特殊な場面における能力を磨くことによって、一流大学卒の学生よりも高い専門能力を身につけることも可能である。バイオインフォマティクス分野においても、専門学校でこうした技術を身につけることによって就職することが可能であるため、その一般的指標、到達目標として、認定試験を実施する」

要するに、高校まで勉強しなかったクラスターに対して一発逆転のシステムを提供しているわけだ。僕はこうしたシステム自体は決して悪くないと思っている。ある個人が、特定の場面においては相応のスキルを保有していることによって活躍できる、ということは大事なことだし、学歴社会におけるセーフティネット機能のひとつであって、その重要性に疑問を呈する人は多くないと思う。

ただ、ここで問題になるのは、その資格が本当に就職に役立つような指標、目標となっているのか、ということである。その検討方法はそれほど難しいものではない。例えばどこかのシンクタンクが、いくつかのバイオインフォ認定試験に合格した卒業生を有する専門学校の就職先にヒアリングを実施し、その採用に当たって重視したポイントを聞き出せば良い。「技術力が高い」「上昇志向がある」「バイオに関する知識がしっかりしている」「まじめな人柄」といった回答がすぐに予想されるが、その中に「バイオインフォ認定試験に合格している」という回答が含まれているかどうかを調べれば良い。この際、「経済産業省生物化学産業課」などと、原課の名称を出してしまうのは良くない。これをやってしまうと、経産省に配慮された歪んだヒアリング結果になりかねない。あくまでも、第三者がフラットにヒアリングすることが大事なのだ。

僕の個人的な感覚では、今のバイオインフォ関連は就職が物凄く厳しい印象がある。そうした中で、このバイオインフォ認定試験はどの程度役に立っているのか、非常に興味がある。役に立っていれば、僕が予算を取ってきたことも無駄ではなかったことになる。一方で、全然役に立っていないのであれば、何らかの形で風呂敷をたたむ必要がある。

以下、余談なのだけれど、この予算、僕が取ってきたのは良いのだけれど、その分配を決める手法には相当に疑問が残った。覚えている限りで書くと、まず僕と、同じく経産省生物化学産業課(バイオ課)のN君(当時3年生ぐらいだったか)の二人を中心として、応募組織について応募内容を精査し、評価付けをした。この評価はかなり時間を割いてきちんとやった記憶がある。全ての応募書類に目を通し、いくつかの指標から評価し、総合成績をつけた。その資料はバイオ課の濱田課長(当時)へ手持ち資料として渡した。課長は選定委員会を組織し(誰が委員を選定したかは不明、僕は関わった記憶がない)、外部有識者(確か、外部有識者は4人だったと思う)とともに選定委員会を開催した。このときの事務局は三菱総合研究所で、担当者はT主任研究員。ただ、事務局の仕事は議事録をまとめたりする作業で、委員会において何か発言するような立場ではなかった。この委員会に、僕とN君はオブザーバーという形で参加した。僕達も事務局と同様、委員会では一切の発言をしなかった。さて、会議が開始され、どうやって企業を選定するのか、という話になったとき、課長がそのやり方を提案した。それは、「まず、各委員が一件、これが良い、というものを推薦しましょう。そして、その一件は無条件に決定ということにしましょう。これで5件が決まります。残りについては、各委員による議論で決めることにしましょう。いかがですか?」という内容だった。この提案は満場一致で賛成され、選択方法が決まった。何か変な決め方だな、と感じたけれど、オブザーバーの立場なので、何も言う権利はない。それよりも、僕としては僕が推薦した案件がきちんと通ることが大事だったので、会議の推移を見守っていた。課長は続いて、「では、私から推薦します」と発言し、そしてある案件を推薦したのだけれど、びっくりしたのは、僕から課長にあげた資料では、その案件は全く評価が高くなかったことである。N君と二人で、「え?」という感じで顔を見合わせたのを今でも憶えている。そして、その委員会にはJBiCの関係者が委員として含まれていた。彼は、その委員会においては、「フェアでなくなるので、討議には参加しない」というスタンスだったし、また自らJBiCの案を推薦することはなかったのだが、議論に参加する、しないに関わらず、委員会に当事者が含まれているのは全くフェアではないし、結果としてJBiCの案が採択されていては、それがフェアであったとは誰も言えないと思う。また、課長がどういう意図を以て僕達担当者が全く評価していなかった案件を推薦したのか、今になっても良くわからない。ただ、誰から聞いたのかは忘れたが、「そういえば、昨日の夜(委員会の前夜)、○○(課長が推薦した案件を応募した組織)の担当者が課長のところに来て、みんなで飲みに行ったみたいですよ」という話があった(僕は実際に見ていないので、真偽の程は不明)。そういう背景があるなら、全てのことには説明がつく。課長の提案した手法は、「誰が何と言おうと、自分の裁量でひとつだけは確実に採択できる」やり方なのだ。確実な証拠があるわけではないので軽々には言えないが、背後に何らかの不透明なやりとりがあったと考えるほうが自然である。僕は、そんなこんなで違和感がありまくりの委員会だったので、当時バイオ課の総括補佐だった須藤補佐に経緯を説明しつつ「違和感を感じるが、これで良いと思うか」というメールを送ったのだが、彼からは「特に違和感はない」という返事だったので、これが役所上層部の考え方なのかな、と思いつつ、その後は公式には特にアクションを起こさなかった(もちろん、当時の同僚たちとはそういう話をしたし、今でも時々飲み会ではその話になることがある。また、当時のメール等は全て保管してあるはずだ)。

こんな感じで、僕はこの予算の執行に当たってはいくつか疑問を持っていた。その後すぐに僕は経産省を退職したので、それ以後、この委員会で採択された案件がどうなったのか、きちんとサーベイはできていない。数少ない、ウォッチできる案件が年末来調査しているリバネスと、このバイオインフォ認定試験なのである。現時点で、両案件共に本当に上手に活用されたのか微妙な状態になってきていて、あの税金は無駄金になっているのかも知れないと危惧している。ちなみにこちらに事業の最終報告に関するページがあるのだけれど、

経済産業省の取り組む高度専門人材育成事業について【最終報告】
(創業・起業促進型人材育成システム開発等事業)


「(報告書)【4月頃掲載予定】」となっていて、掲載されていないようだ。連休明けにでもバイオ課に電話をして、どこで見ることができるのか問い合せてみたいと思う。そういえば、だいぶ前に「2010年にはどうなっていることやら」と疑問を呈したバイオ市場25兆円の話も、昨日の情報交換ではどうやら3兆円ぐらいの市場規模で終結したらしい。

2010年のバイオ市場規模の持つ意味(2年前に書いて忘れてた)(2005.7.31)

ブログでバイオ 第39回「第1回BT戦略推進官民会議(笑)」(2008.4.13)

「バイオ市場25兆円」という目標を設定して旗を振り、その結果が3兆円というのであれば、その責任は誰が取るのだろう。25兆円という数字を背景にして財務省に説明し、取ってきた予算も少なくないのではないか。

ちょっと話が脇道に行ってしまったけれど、要は、このバイオインフォ認定試験、その成り立ちの部分から色々と不透明なところがあって、そのあたりを良しとするとしても、「じゃぁ、本当に役に立っているのですか?」という疑問があるのだ。役に立っているのか、いないのか、この点は物凄く重要で、もし仮に役に立っていないのであれば、当然のことながら様々なことを再検証していく必要がある。なぜなら、こういった専門学校生向けの資格というのは、冒頭に書いたように敗者復活戦の色彩が濃いからである。学歴社会における敗者が復活をかけて臨むものなのに、実際にはそれが何の役にも立たないというのであれば、これはただの弱い者いじめである。ありもしない望みをあるように見せ、そこにお金を投入させるのは、情報弱者を騙してお金を巻き上げるオレオレ詐欺となんら違いがない。違いは単に、法律に違反しているかいないか、だけである。この違いは決して小さくはないが、弱い者いじめは人間としていかがなものか、と思う。

経済産業省生物化学産業課には、上で書いた報告書についてとともに、バイオインフォ認定試験についても一度問い合せてみる必要がありそうだ。

もちろん、多数の民間企業が「バイオインフォ認定試験は素晴らしいですね。出身大学なんかよりもずっと参考になります」と言っていたり、専門学校の卒業生が「この資格のおかげで凄くいい会社に就職できました」と言っていたりするなら、そんな喜ばしいことはないし、そうであって欲しい。

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