2011年02月22日

ヒアアフター

hereafter


ハズレが全然見当たらないイーストウッド監督の最新作。死者とのコミュニケーションが取れる霊能者をテーマにした話なので、シックス・センスみたいな気配があるのだけれど、観終わった感じは大分違う。シックス・センスはシックス・センスで傑作だし、あれはあれでシャマラン監督流の愛情を表現した映画だったのだけれど。

こちらは、差別されるマイノリティとして霊能者を取り扱っている。米国、フランス、英国に散らばっていた登場人物たちが、引き寄せられるようにロンドンに集まっていくのだけれど、とにかく脚本が素晴らしいので、「次はどうなるんだ」と気になって仕方がない。面白い小説を読んでいると、文字を追っているのがまどろっこしくなってきて、早く次のページを読みたいという気持ちになるが、映画でそういう感覚を味わうハメになる。

何しろ、冒頭から素晴らしい。今まで観たことのないような大津波のシーンから始まる。大津波と言っても、ただでかいってことじゃない。リアリティのある津波なのだ。こりゃすげぇ、っていう映像でぐいっと引っ張られちゃって、そこから先は物語が静かに進んでいく。この構成のおかげで、「え?次はどうなるの?」という感じになってくる。加えて、村上春樹が「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」や「海辺のカフカ」や「1Q84」でやってみせた複数の物語が徐々に関連を持っていく、という構成なので、盛り上がってきたところで話が途切れて、おあずけを食らってしまうのだ。3つのストーリーでこれを展開され、しかもひとつひとつが全然別の面白さを見せるので、ストーリーにスピードがないのに映画にはスピード感がある。それも、映像とか、展開にスピード感があるんじゃなくて、観る側が「早く次を観たい」と思ってしまうことによるスピード感なのだ。色々映画を観てきているけれど、こういう感覚は凄く新鮮である。

差別される存在としての霊能者の苦悩、知りたくないこと(恋人の過去の性的虐待とか)まで知ってしまいそのおかげで人生が思い通りにならない苦悩、「呪い」と思っていた能力に自分なりの利用方法を見つけるところ、親子愛の再生などなどをこれでもかという位に盛り込んである。

(評価として)とってつけたようだけれど、音楽も良い。

地味な映画ではあるけれど、味わい深い一作だと思う。☆3つ。

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