2011年02月22日

太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-

taiheiyou


今日は何を見ても1000円ということで、ヒアアフターのあとにはしご。おかげで、彼此の違いが物凄くはっきり分かってしまった。今の日本があるのはこういう人たちのおかげ、という、日本人の根源的なところに訴える力を潜在的に持っている映画なのに、そのアドバンテージをもってしても「面白い映画」になってこない。役者も、竹野内豊を筆頭に、結構頑張っていたと思うのだけれど。

まず、「太平洋の奇跡」というタイトルなのに、全然奇跡っぽくないのが大問題。そういう話ではないというのならこのタイトルは失敗だし、奇跡だったのなら、もっとそれらしく描いて欲しい。ひとつひとつの話が凄く簡単に進んでいくので、重みがないのだ。たとえば捕虜収容所への侵入とか、緊張感が皆無。「そんな簡単に行き来出来ちゃうのかよ!」って思っちゃう。実話なのかも知れないけれど、米兵が日本兵の性向を説明するのにいちいち将棋の駒を使っていて、いつもそれを持ち歩いているのも変な感じ。だって、再利用を拒むために自殺する、ということなら、チェスで説明したほうが良い(将棋の駒は相手に取られると敵として利用されるが、チェスではそういうことはない)。

登場人物たちの心変わりの早さにもついていけないところがある。大場が、「ひとりでも多くの米兵を殺すこと」から、なぜ「ひとりでも多くの日本人の生命を助けること」に変わってしまったのか。変わってしまうことはもちろん構わないけれど、その過程がしっかり描かれていない。また、「米兵を皆殺しにしたい」と憎んでいた登場人物が、すんなり収容されているのも意味不明だ。大きな心変わりには、それなりのトリガーが必要なはずなのだけれど、それが全然描かれないので、物凄く軽い印象を受けてしまう。あと、ただただ逃げまわるだけで、米兵を攻撃するのは自分たちが追い詰められた時だけ、というのも違和感がある。民間人を守るフェイズがあるのは当たり前として、サイパン奪還に向けての戦闘は全くなかったのだろうか。

車で走っているシーンの一部でブルーシートを使っているっぽいシーンがあったけれど、背景との動きがリンクしていなくてちょっと気持ち悪かった。一方で、爆撃機の発進シーンはかなりの迫力。ただ、あんなに急角度で離陸・上昇するのかなぁ、と思った。

大場大尉の人柄を説明するのに赤ん坊を使っていたけれど、あの子が全然成長しないのはなんでだったのだろう。

こうやって考えていくと、多分、約2年の戦闘を描くには、2時間という尺が短すぎたんだと思う。米兵たちは基本良いところばかりが描かれるし、その中での彼らは日本兵のメンタリティばかりを気にしている。一方の日本兵は民間人を中心として密かに逃げ続けるだけで、戦闘らしい戦闘はほとんどない。細かいディテールは「2年」を感じさせるにはこだわりが足りず、さっと過ぎ去ってしまう。だから、米兵も、日本兵も、そして民間人も、なぜ心が変化していくのかがさっぱりわからない。そして一番いただけないのがラスト。これも実話通りなのかも知れないけれど、「日本に戻ったらどうするのか」が全然描かれていない。赤ん坊が成長して活躍するのはまだまだ先のこと。敗戦の日本を支えたのも彼らだったはずだ。そのあたりの意気込みは、ラストの行軍からは伝わってこない。

美術的には結構頑張っていたと思う。この間の「あしたのジョー」に比較すると衣装など、かなりリアリティがあった。ラストシーンではみんながきれいな服を着ているけれど、普段の服にリアリティがあったので、「ちゃんとここ一番にきちんとしたみだしなみにしたんだな」というのが伝わってくる。しかし、その一方で悲惨な戦い、という感じは全然伝わってこない。「水場がない」ということもセリフでは説明されるけれど、それが切実な感じを受けない。なんか、のんびり隠れて野営して、のんびり捕虜やって、という感じである。

大場栄氏についてはウィキペディアに記事があるが、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%A0%B4%E6%A0%84

これと照らしただけでも「タポチョ山(タッポーチョ山)を拠点にゲリラ化し、日本の無条件降伏後も遊撃戦を展開する」という部分は映画では表現出来ていなかったよなぁ、と思う。全ての事象を描くことはできないのだから、何を描き、何を描かないかが重要になるのだが、少なくともこの映画の場合は取捨選択がヘタだったのではないか。

奥田誠治さんの映画って、「魔女の宅急便」は好きだけれど、以後、あんまり面白いものがないと思う。「三丁目の夕日」ぐらいかなぁ。☆1つ。

ところで、以下、余談。今日はメルマガ登録者限定で1000円で鑑賞できる、という日だったんだけれど、それにも関わらず観客はゼロ(笑)。こんなでかい箱なのに、ゼロ。大丈夫なのか、この映画館。まぁ、貸切なのは悪くないけれど(笑)。

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思わず映画館で撮影しちゃったけれど、映画は盗んでないのであしからず。えっと、1番シアターかな。新座のシネプレックス。一応資料写真ってことで(笑)。

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