2011年04月06日

急募!「まともな」サイエンス・コミュニケーター!

昨日の夜、ある研究者と飲んでいて、科学コミュニケーションの話になった。彼の見立ても、「サイエンス・コミュニケーターってどこに行ったの?」というものだった。具体的に「内田麻理香とか、消えちゃって何の役にも立ってませんよ」ということだったので、ちょっと今ブログとツイッターを見てみたけれど、確かに(笑)。今見てもらえばわかるけれど、

ウェブサイト:KASOKEN satellite
ツイッター:@kasoken

地震にあたってサイエンス・コミュニケーターらしきアクティビティを何かやっているかって、それが全然感じられない。

一緒に飲んだ彼(一応そこそこの研究機関を渡り歩いている奴です。実力の程は僕は判定できないけれど、実績からすればそこそこなんじゃないかと)の意見は、「今回わかったのは、多くの研究者たちが、これまで単にやっていなかっただけで、やろうと思えばやれるってこと」というもの。つまり、サイエンス・コミュニケーター(笑)なんて、別に要らねぇじゃん、と。

ただ、僕はそこのところは真正面から首肯することはできない。この間、東工大の原子炉の人の資料を取り上げたので、それをベースにどこに問題があるかを書いてみる。まず、取り上げた現場はこちら。

「素人でもわかる放射線」が素人には難しすぎるので

ここで取り上げた資料のどこがダメだったかって、大きく分けて二つある。一つ目は、ターゲットが全く絞れてないこと。1ページ目で3種類の放射線について書いていて、「ヘリウム原子核」みたいな言葉が出てくる。理系の高校生ならヘリウムぐらい絶対に知っているから、このページを見れば、「あぁ、その程度の人をターゲットにしているのね」と思うのだけれど、2ページ目で「補足:数量で使われる補助単位」みたいなのが出てきてずっこけるわけだ。これは小・中学生レベル。確かに「もう昔のことで忘れちゃったよ」というクラスターはいても不思議じゃないけれど、ヘリウムを知っている人間なら当然ミリやマイクロぐらいも知っている。この資料の制作者は、ヘリウム原子核とミリ・マイクロの難易度(どちらがより高度か)を理解していないのである。ただ、これはそれほど不思議なことでもない。いつもエベレストのことばかりを考えている人が、都内で一番標高が高い場所がどこなのか知らなくても不思議ではないからだ。

そして、二つ目。それは、ターゲットのニーズに適合していないこと。当たり前だけれど、資料を作るにあたっては聞き手のニーズをきちんと把握する必要がある。一般の人は何がわからないのか、何を知りたいのか。放射線の種類、補助単位、なんで放射線が体に悪いのか、放射線はどこから来るのか、半減期って良く耳にするけれど何なの?、放射線の単位が良くわからない、今回の事故でどの位放射線を浴びているのか、普段はどうなのか、どの位から体に悪いのか、食べ物は大丈夫なのか、ぐらいのことだろう。ところが、この資料には残念ながら、「聞き手は別に興味がないけれど、話し手が聞かせたいこと」がふんだんに盛り込まれている。聞き手が興味のない話を盛り込めば、聞き手は集中力を失う。「電離(イオン化)」とかの難しい言葉は理解を妨げるし、周期律表なんてどうでも良いことだし、同位体なんていうのも一連の報道では聴いたことがない言葉だ。原子核図表なんていうのにも興味がない。「僕達が知りたいのは、放射線を浴びたらどうなるのか、今、僕達はどの位の放射線を浴びているのか、それはいつまで続くのか」っていう人達にとっては何の情報性もないのである。そして、そういう「ノイズ」を入れてしまうことによって、資料の質は大きく低下する。ターゲットが知りたがっていることを、贅肉を削ぎ落した上で、わかりやすく伝えなくてはならないのである。

僕が見ている範囲で、この二つをきちんとやっている事例にはほとんどぶつからない。ただ、研究成果を一目でわかるようにするといった取り組みはなかなかだと思う。つまりは、大気汚染の状態とか。これは、翻訳する必要がないから、というのもあるのだけれど。

飲み会の話の続き。「大隅さんにはちゃんと@を飛ばしつつ(ツイッターで目につくようにすること)サイエンス・コミュニケーター批判をしたんだけれど、うんともすんとも言ってこないよ」って言ったら、「あの人も所詮勝ち組ですからね。返す言葉がないんでしょ」との答だった。まぁ、そういうことかも知れない。「元木なんて奴、良くわからずツイッターで取り上げちゃったけれど、やぶ蛇だったな」ぐらいに思われている可能性大(笑)。

それで、サイエンス・コミュニケーターって、必要なのか、ということなんだけれど、どうも必要っぽい。でもちゃんとした奴は今のところ一人もいない、ということらしい。だから、「えっと、サイエンス・コミュニケーター(笑)って、どこにいるの?」って思っちゃったのね。

急募!「まともな」サイエンス・コミュニケーター!

#あ、でも、もう必要な場面はほぼほぼ終了ですか(笑)?

##東洋経済2011.4.9の88ページに北川達夫さんの「玄人と素人が対話するコンセンサス会議」という記事があります。これを読むと、一層「サイエンス・コミュニケーターはいらねぇなぁ」ということになる(笑)。

###いや、僕が今感じていることをストレートに書くと、「今のサイエンス・コミュニケーターって必要とされてないだろ。今は自称サイエンス・コミュニケーター達が、自分たちのやりたいことをやっているだけだろ」ということなんですけどね(笑)。

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この記事へのコメント
元木さんの言うとおり今のサイエンス・コミュニケーターってただの落ちこぼれっすよ。だから、こうやってボロクソに書かれたって反論できない奴らばかりですw

元木さんの会社でやったらどうですか?
Posted by 避雷針 at 2011年04月06日 16:59
> こうやってボロクソに書かれたって反論できない奴らばかりですw

あぁ、一応ボロクソに書いているのはわかりますか?

もしかしてそれすらも伝わらないかと、ちょっと不安に思っていました。僕のコミュニケーション能力もまだまだなのかな、と。

> 元木さんの会社でやったらどうですか?

儲かりますかね?
Posted by buu* at 2011年04月06日 17:40
サイエンスコミュニケーター(笑)には私も同じ思いを感じてましたので、先日のエントリー含め、痛快な気分で読ませていただきました。

ところで、冒頭に名指しされてる内田麻理香さん、こんなのが。
こんな電気事業連合の提灯記事に出てたら、原発問題について何も言えないし、言ってる人たちを揶揄することくらいしかできないんでしょうね(笑)

「家庭も、電気も、目指すは"リサイクル名人"です」、婦人公論、2010/12
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/ads/__icsFiles/afieldfile/2011/01/24/f_20101122.pdf
Posted by 通行人 at 2011年04月07日 12:28
> こんな電気事業連合の提灯記事に出てたら、原発問題について何も言えないし、言ってる人たちを揶揄することくらいしかできないんでしょうね(笑)
>
> 「家庭も、電気も、目指すは"リサイクル名人"です」、婦人公論、2010/12
> http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/ads/__icsFiles/afieldfile/2011/01/24/f_20101122.pdf

なるほど(笑)。

でもなんか、慌てて色々始めたみたいですよ。

http://d.hatena.ne.jp/kasoken/20110406/p1
Posted by buu* at 2011年04月07日 12:49
ツイッターでTBしました。(ついでにフォローも。)
以前から思ってたんですが、サイエンスコミュニケーターって、女の子多いっすよね。
宇宙物理の研究室とか女の子おおくてね....あ、いや直接関係ないけど。

そもそも、サイエンスコミュニケーターの目的って何でしたっけ....そこらへんに、間違いがあるのかも。ちょっと調べるかな。
Posted by JoeNakano at 2011年04月08日 13:23
> 以前から思ってたんですが、サイエンスコミュニケーターって、女の子多いっすよね。

科学を興味深く語る上では、「面白い」と並んで、おっぱいぷるんぷるんだとか、可愛いとかはひとつの有り得べきファクターだと思います。残念ながら僕はおっぱいぷるんぷるんでもないし、可愛くもないので、「面白い」ぐらいしか選択肢がないのですが。

「可愛い」の問題は一般的に賞味期限が短いことで、大抵の場合は長くても5年程度で償却しきってしまいます。おっぱいぷるんぷるんの償却期間はもうちょっと長いのかも知れませんが、こちらも「面白い」に比較すれば普遍性の面で問題を抱えています。なので、「可愛くておっぱいぷるんぷるんだけ」のコミュニケーターは淘汰されてしまうでしょう。

女子が多いのは、逆説的に言えば男子の場合、面白くないだけでハブンチョにされちゃうってことなんじゃないですかねぇ。

良くわかりませんが(笑)。え?差別的だ?ええ。差別的です(笑)。
Posted by buu* at 2011年04月08日 13:53