2011年04月15日

トウキョウソナタ

トウキョウソナタ [DVD]

BSでやっていたのをテレビ鑑賞。

喪失と再生、というもっともありがちなテーマを扱った作品だけれど、抜群の演出力というか、脚本力というか、ここまで面白くできるんだなぁと感心した。非現実的な描写があちこちに散りばめられているので、こういうアート重視の脚本に慣れていないとついていけない部分がありそうで、万人に勧めることができる映画ではないと思うのだけれど、演劇を見慣れている人ならすんなりと受け入れられると思う。演劇は空間的な制約と時間的な制約の中で、必然的に見る側に想像力を要求する。「あぁ、ここは、こういう風になったんだな」と解釈する必要がある。一方で映画はあとで編集すれば良いから、場所をロケによって変更することもできるし、一年間かけてそれぞれの四季で撮影したりといったことも可能だ。そういう映画のメリットをある程度放棄し、見る側に想像するのりしろを用意した作品に仕上がっている。ともするとご都合主義になってしまいそうなんだけれど、それをコミカルに、かつ象徴的に描いていて(毎日同じY字路で父親と息子が別れ、一緒になるとか)、映画の中のそこここでクスクスっと笑うことができる。

個の中でも、社会の一員としても矛盾をあちこちに抱えながら生きている父親、ストレスを抱えながらも良妻を演じている母親、それを近くで見ていて発散する場所をさがしている年の離れた兄弟、どれもが危なっかしい中でバランスを取っているのだけれど、あるとき、一斉にその振れ幅が拡大する。その起承「転」結の具合がとても良く出来ている。あの、ショッピングモールでの夫婦の遭遇シーンの素晴らしいこと。

そしてラストのドビュッシー「月の光」。みごとな起承転「結」だった。

年間70本とか映画を見ていても、知らないうちに始まっていて、知らないうちに終わっている映画がなんと多いことか。そして、そういう作品の中にチラホラと「これは面白いなぁ」という作品がある。先日の「愛のむきだし」もそう。この作品も、そんな作品のうちのひとつ。香川照之、小泉今日子というイイトコを使っておきながら、なぜ評判にならなかったんだろう。僕が知らなかっただけで、評判になっていた?いや、公務員や大企業の社員の家族だと、こういう話ってリアリティがないのかな?僕とかは、「あるある(笑)」みたいなシーンの連続だったんだけれど。

面白かった。☆3つ。

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