2011年04月24日

福島県のお父さん、お母さんへ

最初に言っておきますが、僕の専門は分子生物学。放射線も、疫学も素人です。そんな僕ですが、地震後、僕なりに色々と勉強してみました。その内容を、なるべく数字を使わずに、感覚的に書きます。科学とか、わからなくても大丈夫です。テーマは、子供と放射線についてです。

今、福島県の原発のそばは放射能に汚染されています。その度合は、日本がほとんど経験したことのないレベルです。どんな影響が出るのか、今はまださっぱりわかりません。それがわかるのは、30年後ぐらいです。それから、影響はあくまでも統計データとして数字で出てきます。「私のがんの原因はあの時の福島第一原発のせい」とかは、わかりません。多分、30年経って、科学技術が物凄く発展しても、わからないんじゃないかと思います。

さて、そんな状態で、今、大人も子供も被曝しています。毎日、福島にいるだけで被曝しています。でも、大人は基本的に大丈夫です。今までも散々被曝してきているし、もうその数字がちょっとぐらい増えても大して変わりはないです。どうせみんなあと20年、30年でがんになるのだし、そんなに神経質になっても仕方ありません。でも、子供は違います。では、子供にはどんな影響があるでしょうか。

まず一つ目は、がんになったりする可能性がアップしそうです。もうすでに飯舘村にいると2年間で100人にひとりががんになるという数字が出されたりもしています。数字にしたら1%かも知れません。でも、その1%はがんになって治療が必要になり、その後の人生は大きく変わります。

次に、不妊や障害児が生まれる可能性があります。実は、このリスクはそれほど大きくはありません。もともと不妊だったり、障害児が生まれたりするリスクを人間は持っています。そして、その数字が大きく変わることはないんだと思います。ですが、ここまでは理屈です。一定の割合で生まれる障害児が運悪く生まれてしまったら、周りの人はどう思うでしょうか。親であれば「あぁ、あのとき避難させておけば良かった」と思うでしょう。配偶者の親戚は「だから福島の人との結婚なんかしなければよかったのに」と思うかも知れません。そういった思いは、事実の相関(放射線被曝と、障害児が生まれたこと)とは全く無関係です。こうしたわだかまりは、必ず家族関係に何らかの影響を及ぼします。何か悪いことが起きたとき、おそらく「あの時、避難しなかったから」と後悔することになります。

全ては確率の話です。でも、がんになってしまう人、障害児が生まれてしまう人にとっては、それが全てです。1%は、実際にがんになった人にとってはその瞬間から100%になるのです。

今被曝することは、子供たちの将来に必ず影響を及ぼします。それは「がんになる」とか、「障害児が生まれる」とか、そういう具体的な影響だけではありません。「あのとき被曝しちゃったから、子どもができないかも知れない」「あのとき被曝したせいでがんになりやすいかも知れない」「結婚するときに相手の親に嫌がらちゃうかも知れない」・・・・そういう、心の部分もたくさんあります。

政府は、心のことに責任を取ってくれません。もしがんになったとしても、原発事故との因果関係も証明できません。結局、子供たちの将来は、お父さん、お母さんが守るしかないのです。福島にいるだけで、確実に子供たちの可能性が狭まります。可能なら、なるべく早く、福島から子供たちを避難させるべきだと思います。

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