2011年04月28日

年金を払わないことの意味

こんなニュースがあって。

初の60%割れの公算=10年度の国民年金納付率―厚労省

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110428-00000126-jij-pol

年金未納問題は世代間格差の象徴みたいなもので、要は国の信用度がどんどん下がってきているということ。

統計は地域別で見せているけれど、年代別じゃなくちゃ意味無いじゃんね。っていうことで、こちらに年代別の資料。最新版じゃないけれど。

国民年金納付率59.98% 2009年度ついに60%割れに至る

はい、当たり前ですが、まじめに払っているのはお年寄りばかりです。

★2009年度国民年金1号被保険者の納付率。
・20歳〜24歳=49%(マイナス2.4%)
・25歳〜29歳=47.1%(マイナス2.3%)
・30歳〜34歳=51.7%(マイナス2.2%)
・35歳〜39歳=56.5%(マイナス1.3%)
・40歳〜44歳=57.7%(マイナス1.6%)
・45歳〜49歳=62.3%(マイナス2.3%)
・50歳〜54歳=66.6%(マイナス1.7%)
・55歳〜59歳=73.3%(マイナス1.8%)


年寄りたちは、「ちゃんと払わないと大損するよ」って言っているけれど、そりゃ当たり前。皆さんはお金をもらえる立場ですから。年金がもらえる年齢まで生きているかどうかもわからず、未納者が増えてカッコが悪くなったら勝手に(申請がないのに)免除者にしちゃって(俺も免除者にしてくれ)、7兆円近くを年金給付以外の用途に利用し、おまけに年金記録がなくなっちゃうとかいい加減な運用していて、さらには給付年齢がどんどん上がっていくんだから、こんなの、払うほうが馬鹿という話もある。この数字は猶予者が分母から抜いてあるから(だから分母を小さくするために、申請もないのに親切に免除者にしちゃうんだけど。免除者にして欲しい人はたくさんいると思う)、実際の未納者(払っていない人)はもっとずっと多いはず。

そもそも、年金制度ってなんだろう、と考えてみる。多分、物価の上昇率を抱え込むための先人の知恵なんだろう。たとえば、20代の人が5万円を積み立てたとする。50年後は多分物価が変動していて、5万円の価値がどのくらいになっているかわからない。なので、その5万円は今、老人たちに5万円として使ってもらおう。そして、50年後には、50年前の5万円と等価なお金を給付しよう、ということ。その金額が10万円なのか、20万円なのかはわからないけれど、今で言えば5万円あればお米が150キロぐらい買えると思うので、50年後にもそのくらいのお米が買えるだけ給付されれば文句はないはずだ。物凄くざっくりと考えてみたけれど。

さて、この考え方には目に見えない前提がいくつかある。まず一つ目。寿命が延びないこと。寿命が延びてしまうと、給付するお金が増えてしまう。二つ目。人口の変動がないこと。人口が増えていく分には全く問題ないが、問題は人口が減少傾向になったとき。給付のための原資を稼ぐ人数が減ってしまったら、一人当たりの負担は大きくなる。ところが、現状は前提が二つとも崩れている。だから、状況は悪化する一方だ。対策として「足りないお金は国から援助しよう」ということになるわけだが、それだって原資は税金。その税金は元を正せば国民の経済活動から一定額を集めているわけで、社会の負担が大きくなってしまうことには変わりがない。三つ目。終身雇用の人が圧倒的多数。つまり、とりっぱぐれが少ない、ということ。結婚せず、子供を持たず、そして定職につかないフリーターがたくさんいる、という状況は全く想定していない。

状況を改善するためには方法はぱっと思いつくもので3つ。一つ目は、寿命を短くすること。原発から放射能をばらまくなんて言うのは結構良い作戦だったりする。二つ目は人口を増やすこと。だから少子化対策なんてことをやっているわけだけれど、社会がこんな状態で子どもが増えるわけがない。僕の周りの若い人(30代以下)では、比較的恵まれている環境の、ただし少数の人は子沢山、一方で生活に汲々としている人は共働きだったり、そもそも結婚していなかったりしていて、こちらのほうがマジョリティ。出生率がアップする理由は見当たらない。三つ目は経済活動を活性化すること。年金の納付額が増えないなら、他のお金、つまり税金を増やそう、ということになるのだけれど、残念ながら経済の状態も見通しが暗い。

じゃぁ、貯金で、とか思うわけだけれど、するとここで「物価の上昇」という壁が現れる。そもそも、この壁をクリアするためのアイデアが「年金」だったのだ。じゃぁ、どうするのか、ということになる。これだ!と思いついたものの代表例が株での運用。東電の株とかだ。普通に考えれば東電とか、NTTとか、JRとか、JTの株は鉄板。これが大きく値崩れするはずがない、というのが普通の見方だ。ところが、今回はそれが崩れた。原発事故で東電の株が大きく崩れてしまい、「えええっ!」と思ったのは、多分貯金のつもりで東電の株を買っていた皆さんだろう。世の中、「ゼッタイ」はない。そんな中でも比較的信頼できたのが「年金」なのである。堂々巡りだ。

貯金して老後に備えるのも難しい、かといって年金はどんどん状況が悪くなる、でも、平均寿命は順調に延びていて、今では60歳で定年になってもあと10年ぐらいは健康なまま、その後は色々不具合が出てくるけれど、それでも男性で約10年、女性で約15年は生きてしまうのである。ことここに至り、40代以上の人間が言えることはせいぜい「年金はきちんと納めましょう」ぐらいだ。

ただ、どうなんだろうね。20代、30代にとっての10万円と、70代にとっての10万円って、等価なんだろうか。70代になっても、そんなにあれがやりたい、これがやりたいって、あるのかな。せいぜい医療費ぐらいなんじゃないかな、とも思う。一方で、20代、30代は、持っているお金も少ないわけで、そこから一定額を年金として納入しなくちゃならないのは結構辛い。お金の価値というのは客観的には同じだけれど、一人の人間のライフサイクルを俯瞰して見てみると、常に一定ではないと思う。してみると、若い人達が年金を払わないというのは一つの選択肢足りうると思う。もしかしたら、津波で関係資料が全部流されちゃうかもしれないんだし。

国民総背番号ならそんなこともないんだろうけれど。

良い会社に就職していると「年金を払わない」という選択肢は存在しないわけで、実は「年金を払わない」というのは弱者の切り札でもあると思う。そして、弱者が年金を払わないおかげで、サラリーマンの皆さんの負担額はどんどん増えていくわけだ。サラリーマンは税金と一緒で、未納できないからね。サラリーマンとしちゃぁ、というか、ちゃんと年金を払っている人から見たら未納者は敵だから、僕みたいに「払わないのも当然といえば当然」って言わない。でも、「払ったほうが良い。年金は損しないよ。逆に、払わないと大損」と言いつつ、「本当は俺も払いたくないなぁ」と思っているんじゃないだろうか。年金がなくても、本当に困れば生活保護があるしね。

ちょっと考察が足りないので、GW中にでもまた考えてみようかな。今のところの僕の考えは、「若い人達が年金を払わないのは、世代間格差に対する有効な抵抗策のひとつかも知れない」ということ。

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