2011年04月29日

1960年代と同水準(爆笑)

テレビとかを見ていると印象操作を企図したグラフによくぶち当たる。「全然違うじゃん」みたいな話を巧妙に我田引水していくのだけれど、もちろん今回の原発事故でも同じようなインチキが行われている。例えばさっきリリースされたこの記事。

1960年代と同水準、米ソ中が核実験「健康被害なし」 東京の放射性物質降下量
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110428/trd11042823060023-n1.htm

記事の主旨は、「結構たくさん降ったけれど、1960年代の核実験時代と同レベルだから問題ないですよ」という感じ。どれどれ、と思ってデータを見てみると、掲示されているのはこのグラフ。

koukabutsu0


単位面積(平方メートル)あたりの放射性物質の降下量(ベクレル)のグラフなんだけれど、右の方に今回の福島の事故のプロットがある。それで、1960年頃と一緒じゃん、と。ずいずいずいっと、福島のプロットから左を見ていくと、確かに1960年頃のプロットの近く・・・・。でも、そこからさらにずいずいずいっと左に目を移すと、あれ?このグラフ、片対数じゃん。一見同じくらいに見えるけれど、じゃぁ実数はいくつなの?ということで、これを見る限りでは多分1960年頃のセシウムの降下量は一ヶ月に大体40ベクレル/平方メートル、最大で800ベクレル/平方メートル(1963年頃?に1度だけ)。で、今回の数値は、最大のところだけ見ると多分3000〜4000ベクレル/平方メートル。二回目はがくんと落ちているけれど、それは当たり前。だって、原発がドカーンって爆発したのは3月だから。26日以降はおとなしくしているので、そりゃ3月と4月じゃ全然様相が異なる。ということで、今回は3月で見てみよう・・・・・。

全然違うじゃねぇか(笑)。

ここで使っているのは片対数グラフという奴で、普通は1メモリで1増えるところ、1メモリで10倍になるというもの。だから、数字を見ると1→10→100→1000と増えていく。片対数グラフというのはデータの分布が広い場合に採用する、やや特殊なもの。

ここ30年ぐらいは放射性物質の降下量は0.1ベクレル/平方メートルぐらいだったわけで、それが突然3000とか、4000とか、要は数万倍になってしまったわけで、片対数グラフでその推移を検討するのはそれほど間違ってはいない。ただし、健康被害については別だ。だって、2シーベルトの被曝では致死率5%だけれど、10シーベルトなら致死率は100%なんだもん。つまり、被曝量が5倍になったら、致死率は20倍、しかも、全員死んじゃうんだから、もうこれ以上はないレベルになっちゃう。放射線の被曝は、この位の倍数でも大幅に変わる可能性があるということ。そして、今回は1960年代の降下量の「最大値」の5倍くらいなわけだ。確かにグラフ上では「似たような数値なのかな」と見えるけれど、実際の数値は全然違う。今回の数値が1960年代の降下量よりも下に収まっているなら確かにこのグラフでも構わないけれど、今回は「1960年代における最大値」の5倍程度になっているので、全く不適切である。

よくもまぁ、こんなインチキなデータの提示のやりかたをするよなぁ、と感心してしまう。ということで、ちょっと僕がグラフを作りなおしてあげよう。あ、確かに降下物のグラフを見ると1960年前後には確かに単発で800ぐらいのデータが「1つ」あるんだけれど、平均すると40ぐらい(笑)。だから、今回は40で作ってみました。別に他意はないので、ここを800にしても良いんだけれど、それは科学的じゃないので(笑)、今回はおおよその平均を取ってみました(ちなみに目測です)。じゃーん、こんな感じ。

koukabutsu


もう、笑っちゃうよね。今回以外はx軸にべったりと張り付いちゃって見えないじゃん。これで「1960年代と一緒」って・・・・。具体的に言うと、10階建てのマンション(1960年)と富士山(今年の3月)ぐらい差があるんですけど・・・。でもね、グラフはちゃんと目の前に提示されているんですよ。見る側が注意深くないだけ。きちんと見れば騙されないんです。「ただちに影響が出るわけではない」というのと、からくりは一緒。あとになって、「だって、同じって言ったじゃん!」と文句を言っても、「それは私の個人的な見解。大体グラフはちゃんと提示してあったでしょう?」と返されるのがオチです。目の前にグラフがあるんだから、ちゃんと見てね(はーと)。

えっと、それで、こういうのを難しい言葉で、へそでお茶がわくっていうんでしたっけ?国民をばかにするのも大概にしておけよ?

#あわせて読みたい
かなり感覚的に計算したら、30年後には毎年500人がんで死ぬ勘定

この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
面白い記事がありました。産経新聞による、グラフを使った情報操作の手法を、下記blogで解説してくれています。1960年代と同水準(爆笑)http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/51254123.htmlつまり、被曝量が5倍になったら、致死率は20倍、しかも、全員死んじゃうんだから
この1ヶ月に関東に降った放射能は、ぶっちぎり過去最高【関東 放射線対策情報 まとめ】at 2011年04月30日 01:26
この記事へのコメント
安全かどうかを確認するグラフなら、ベクレルをシーベルトに直して、
致死率5%(2シーベルト)のラインでもひいてくれるとよくわかるのでは?
Posted by 1 at 2011年04月29日 13:59
> 安全かどうかを確認するグラフなら、ベクレルをシーベルトに直して、
> 致死率5%(2シーベルト)のラインでもひいてくれるとよくわかるのでは?

これは放射性物質の降下量を示したもので、汚染状態はわかりませんから、被爆量に換算するのは無理です。降水量がわかっても水害の程度がわからないのと一緒です。
Posted by buu* at 2011年04月29日 14:51
であれば、このグラフの表示方法のおかしさはその通りなんだろうけど、そもそも安全とか危険とかがわからなけらばこのデータをどんな形で表にあらわしてもあまり意味がないのでは・? 1屬某兇辰討る放射線量ということなのだから、そこに人間が立ってていたとして、被曝量の計算ってできないんですかね、やっぱり。
 
Posted by 2 at 2011年04月29日 21:04
> そもそも安全とか危険とかがわからなけらばこのデータをどんな形で表にあらわしてもあまり意味がないのでは・?

あんまり意味ないですよ。ただ、意味のないものをさも意味があるように見せて、「昔と一緒なんだから安心しろ」と吹聴しているのが気持ち悪いだけです。こいつ、「一緒」とか言っているけれど全然一緒じゃないからだまされないでね、ということです。
Posted by buu* at 2011年04月29日 21:14
失敗学のすすめの畑村先生でも見たらアラビア数字の人が言うように、データが意味ないし悪意を感じる数字だとおっしゃるのではないかと想像してます、それに、そもそもわれわれ市民である貧民にわかるようにしてほしい、おとなしく奴隷みたいにしておれ、円の対外価値を維持するためにはおとなしく人質になれって感じ
Posted by hasira at 2011年04月29日 21:43
> 失敗学のすすめの畑村先生でも見たらアラビア数字の人が言うように、データが意味ないし悪意を感じる数字だとおっしゃるのではないかと想像してます、それに、そもそもわれわれ市民である貧民にわかるようにしてほしい、おとなしく奴隷みたいにしておれ、円の対外価値を維持するためにはおとなしく人質になれって感じ

だから、こんな記事を書くような記者も(幸いにして記名記事)、こんな記事を載せる新聞社も、信用がならんのです。
Posted by buu* at 2011年04月29日 21:47
〉意味のないものをさも意味があるように見せて、「昔と一緒なんだから安心しろ」と吹聴しているのが・・

”意味のないものを意味があるように見せて”でなく、意味がなかろうと仮に意味があろうとも、
"一緒ではないもの一緒”といっているのが頭にくるということですよね、意味があったら、なお悪質か。
Posted by 3 at 2011年04月29日 21:52
まず、「放射性物質(放射能)の量は事故前の数万倍に上る。」は異常な事なのに、それでも「大丈夫ですよ〜」と、素人目には分かりにくいグラフを提示して煙にまこうとしている…
という事が良くわかりました。
有り難うございます。
結局、国民の健康より社会システムと経済優先思考なのですかね。
Posted by あきこ at 2011年04月30日 23:18
> 結局、国民の健康より社会システムと経済優先思考なのですかね。

まさにそのとおりではないでしょうか。
Posted by buu* at 2011年04月30日 23:20
3月分だけで1960年代の総量に匹敵するほど放射能が降ったようですね。
2桁違う。
きっと5月からは0ベクレルが10年続いて平均で1960年代と同水準になるに違いない(笑)

東京都健康安全研究センターのソースを見ると3月の合計は6558ベクレル/平方メートルでした。
Posted by 60's at 2011年05月01日 21:02
> 3月分だけで1960年代の総量に匹敵するほど放射能が降ったようですね。

3日間で一年分だったんじゃなかったかな?つまり、120倍。

> きっと5月からは0ベクレルが10年続いて平均で1960年代と同水準になるに違いない(笑)

何もないと良いんですが。

> 東京都健康安全研究センターのソースを見ると3月の合計は6558ベクレル/平方メートルでした。

お、そうですか。ありがとうございます。
Posted by buu* at 2011年05月02日 01:32
ご参考まで)
グラフの元データの気象研究所と東京都健康安全研究センターのソースです。
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/f-past_data.html
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ge/2009Artifi_Radio_report/Chapter1.html
ここに無い3/18より前の値が気になる。
Posted by 60's at 2011年05月02日 20:30
私たちは、福島第一以外でも、テレビのニュースの
グラフにも騙されてきた愚かな国民ですから。

福島第一からの拡散予測のグラフも同様の対数表示でしたが、
それを理解していた人が多かったとは…。

「国民をばかにするのも大概にしておけよ?」なら、
その拡散予測の対数表示を理解せず、大騒ぎした人は…。

ttp://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1302031557
> 放射性物質拡散予測、またはシミュレーションの解釈を間違えるとデマのもと

政府の肩を持つつもりではありませんが、無闇に煽って
交通事故などが多発し, その犠牲者が出たのであれば、
ある意味正しかったとも考えられます。
大部分のマスコミの騒ぎっぷりは異常に見えました。

ttp://blog.livedoor.jp/funs/archives/51970528.html
> 【中国】放射能に塩が効くというデマで塩6トン
> 買い占めた男「返品したいがどうにもならない・・」と途方にくれる
ttp://sankei.jp.msn.com/world/news/110317/chn11031718060005-n1.htm
> 中国で“塩買い占め騒動” 海水汚染の風評広がる

日本でも、オイルショックも知っている世代が買占めに走ったり、
イソジンを飲んだり、プレミアム○ライトとかあったり。

Posted by 科学的にはどちらの表示も正しいです at 2011年05月14日 01:03
> 「かなり感覚的に計算したら、30年後には毎年500人がんで死ぬ勘定」
> 100ミリシーベルト被爆するとがんになる可能性が10%アップ、
> 10ミリシーベルトでも、影響は見られる、

これは、ICRPの結果からも異なるのでは?
後、100ミリシーベルトを一瞬で浴びるのか、/時, /日, /月, /年などでも
異なるのでは?
後、今の放射線量が、今後続くとは考えられません。

ttp://blog.livedoor.jp/buu2/archives/51245009.html

> 1.放射線には、バスケットボールのようなα線(大きい)、
> パチンコ玉のようなβ線(小さい)、そして光と
> 同じ種類のγ線があります。

これらと、中性子線です。

> 4.放射線はどこから出てくる?
> →放射性物質から出てきます。原子炉には放射性物質
> がたくさんあります。

食べ物からも、宇宙からも、自然からも、温泉からも
放射線は出ます。福島第一に関係なく、確か、人間の
体からも出ているはずです。
後、この時期、毎年, 中国から日本全土に黄砂が降ってますね。
黄砂とともに、以前の核実験による放射性物質が…。

Posted by 科学的にはどちらの表示も正しいです at 2011年05月14日 01:04
> 私たちは、福島第一以外でも、テレビのニュースの
> グラフにも騙されてきた愚かな国民ですから。

知ってます。

> 福島第一からの拡散予測のグラフも同様の対数表示でしたが、
> それを理解していた人が多かったとは…。

本件とは全然関係ありません。
Posted by buu* at 2011年05月14日 03:16
> これは、ICRPの結果からも異なるのでは?

どちらが正しいか、結論が出ていないということです。

> 後、100ミリシーベルトを一瞬で浴びるのか、/時, /日, /月, /年などでも
> 異なるのでは?

この話はあくまでも低線量被曝の話です。

> 後、今の放射線量が、今後続くとは考えられません。

残っているのはセシウムですから、確かに30年後は半分になっていますね。

> > 1.放射線には、バスケットボールのようなα線(大きい)、
> > パチンコ玉のようなβ線(小さい)、そして光と
> > 同じ種類のγ線があります。
>
> これらと、中性子線です。

話を簡単にしているだけで、本筋とは関係ありません。

> > 4.放射線はどこから出てくる?
> > →放射性物質から出てきます。原子炉には放射性物質
> > がたくさんあります。

だから?

> 食べ物からも、宇宙からも、自然からも、温泉からも
> 放射線は出ます。福島第一に関係なく、確か、人間の
> 体からも出ているはずです。

もちろん。だから何?

ここでは、「福島原発からのエクストラな放射線の話をしています。
Posted by buu* at 2011年05月14日 03:20
> 残っているのはセシウムですから、確かに30年後は
> 半分になっていますね。

半減期による低下に加え、自然浄化による低下もあるので、
半分「以下」でしょう。
もうすぐ梅雨に入ります(放射性セシウムは水溶性の模様)。
長崎や広島(これらは高濃縮ウランの被害ですが)も
他と変わらなくなったのは事実ですし。


> 「福島原発からのエクストラな放射線の話

> 話を簡単にしているだけで、本筋とは関係ありません。

ttp://www.tamagoya.ne.jp/potechi/1999/19991222.htm
> 中性子線に至っては、それすら透過してしまいます。
> したがって放射線被曝で問題になるのが、さえぎる事の
> できない中性子線です。

> > これは、ICRPの結果からも異なるのでは?

> どちらが正しいか、結論が出ていないということです。

しきい値説でなくても、ICRP勧告とは違ってます。
100mSv/年はあくまでも低線量被曝の話でしょう。
不安を煽る?のではなく、話が放射線防護に関して言うべきでしょう。
放射性ヨウ素も放射性セシウムもベータ崩壊によりベータ線を
出すので、中性子線は出ません(福島第一正門前では残念ながら
事故後検出された様ですが)。

> だから?

> 「最先端似非(?)科学

よく分かりませんでした。
科学とは、議論する分野と考えます。
Posted by 科学的にはどちらの表示も正しいです at 2011年05月14日 12:33
> 半減期による低下に加え、自然浄化による低下もあるので、
> 半分「以下」でしょう。

それはそうですね。

> もうすぐ梅雨に入ります(放射性セシウムは水溶性の模様)。
> 長崎や広島(これらは高濃縮ウランの被害ですが)も
> 他と変わらなくなったのは事実ですし。

データはどこですか?

> ttp://www.tamagoya.ne.jp/potechi/1999/19991222.htm
> > 中性子線に至っては、それすら透過してしまいます。
> > したがって放射線被曝で問題になるのが、さえぎる事の
> > できない中性子線です。

あのー、僕、これでも東工大の大学院を出ているんですけど(笑)。

> しきい値説でなくても、ICRP勧告とは違ってます。

だから、そういう説もある、というだけのことです。欧州に行けばもっと厳しい規制があります。例えばドイツとか。

> 100mSv/年はあくまでも低線量被曝の話でしょう。

は?意味不明。

> 不安を煽る?のではなく、話が放射線防護に関して言うべきでしょう。

不安を煽っているのではないですよ。注意を促しているんです。別にそれに従う必要はありません。

> 放射性ヨウ素も放射性セシウムもベータ崩壊によりベータ線を
> 出すので、中性子線は出ません(福島第一正門前では残念ながら
> 事故後検出された様ですが)。

だからなんですか?

> > 「最先端似非(?)科学
>
> よく分かりませんでした。
> 科学とは、議論する分野と考えます。

違います。あと、僕は自分の背景、身分を明確にしない人と議論する気はありません。あなた、誰?どんな知識があるんですか?ちなみに僕についてはこちらをどうぞ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%83%E6%9C%A8%E4%B8%80%E6%9C%97
Posted by buu* at 2011年05月14日 12:40