2011年04月30日

小佐古参与の告発から垣間見えるダメな政治家による政治主導の恐怖

NHKは油断しているとときどきグッジョブなパンチを繰り出すので侮れない。小佐古官房参与の辞任会見資料の全文です。

NHK「かぶん」ブログ「官房参与が辞任・記者会見資料を全文掲載します

もう、ポイント満載なので全部読んで、という感じだけれど、例によって「えー、面倒だよ」という人(でも、そういう人は政府にコロッとダマされるわけで、何度も痛い目にあっているはず。手間を惜しむのは良くないよ。どうせ連休中なんでしょ?)のために以下、ポイント。

原子力災害対策は法律や原子力防災指針、原子力防災マニュアルにその手順、対策が定められており、それに則って進めるのが基本であるにも関わらず、今回の原子力災害に対して、官邸および行政機関は、そのことを軽視して、その場かぎりで「臨機応変な対応」を行い、事態収束を遅らせているように見える。
 
原子力安全委員会は、原子力災害対策において、技術的な指導・助言の中核をなすべき組織であるが、法に基づく手順遂行、放射線防護の基本に基づく判断に随分欠けた所があるように見受けられた。

住民の放射線被ばく線量(既に被ばくしたもの、これから被曝すると予測されるもの)は、緊急時迅速放射能予測ネットワークシステム(SPEEDI)によりなされるべきものでありますが、それが法令等に定められている手順どおりに運用されていない

公衆の被ばくの状況もSPEEDIにより迅速に評価できるようになっているが、その結果も迅速に公表されていない

甲状腺の被ばくによる等価線量、とりわけ小児の甲状腺の等価線量については、その数値を20、30km圏の近傍のみならず、福島県全域、茨城県、栃木県、群馬県、他の関東、東北の全域にわたって、隠さず迅速に公開すべきであるが、現状なされていない。

文部科学省所管の日本原子力研究開発機構によるWSPEEDIシステム(数10kmから数1000kmの広域をカバーできるシステム)のデータを隠さず開示し、福島県、茨城県、栃木県、群馬県のみならず、関東、東北全域の、公衆の甲状腺等価線量、並びに実効線量を隠さず国民に開示すべきであるが、現状なされていない。

文部科学省においても、放射線規制室および放射線審議会における判断と指示には法手順を軽視しているのではと思わせるものがある

「モグラたたき」的、場当たり的な政策決定のプロセスを官邸と行政機関がとっているように見える。

放射線審議会での決定事項をふまえないこの行政上の手続き無視は、根本からただす必要がある。500mSvより低いからいい等の理由から極めて短時間にメールで審議、強引にものを決めるやり方には大きな疑問を感じる。重ねて、この種の何年も議論になった重要事項をその決定事項とは違う趣旨で、「妥当」と判断するのもおかしいと思う。放射線審議会での決定事項をまったく無視したこの決定方法は、誰がそのような方法をとりそのように決定したのかを含めて、明らかにされるべきである。

行政側の都合だけで国際的にも非常識な数値で強引に決めていくのはよろしくないし、そのような決定は国際的にも非難されることになるが、それをやっている。

福島県の小学校等の校庭利用の線量基準が年間20mSvの被曝を基礎として導出、誘導され、毎時3.8μSvと決定され、文部科学省から通達が出されているが、これらの学校では、通常の授業を行おうとしているわけで、その状態は、通常の放射線防護基準に近いもの(年間1mSv,特殊な例でも年間5mSv)で運用すべきで、警戒期ではあるにしても、緊急時(2,3日あるいはせいぜい1,2週間くらい)に運用すべき数値をこの時期に使用するのは、全くの間違いである。警戒期であることを周知の上、特別な措置をとれば、数カ月間は最大、年間10mSvの使用も不可能ではないが、通常は避けるべきと考える。

国際原子力機関(IAEA)の調査団が訪日し、4回の調査報告会等が行われているが、そのまとめの報告会開催の情報は、外務省から官邸に連絡が入っていなかった。これは、国際関係軽視、IAEA軽視である。

核物質計量管理、核査察や核物質防護の観点からもIAEAと連携強化を図る必要があるが、官邸および行政機関は気付いておらず、原子力外交の機能不全ともいえる。


いや、良いね。何が良いって、「政治主導に見えるようにしたい」菅内閣の実情が垣間見えること。菅直人君の言う「政治主導」っていうのは、政治家が勝手に決めたやり方で進める、「政治家が正義だ」政治なんだね。それで、法律とか、国際関係とか無視して、「よーし、これでやっちゃおう」って。しばらくするとそれじゃマズかったということがわかるわけで、慌てて「修正っ!修正〜」の号令(笑)。銀英伝でラインハルトに馬鹿にされ、ヤンに「やれやれ」と呆れられちゃう自由惑星同盟の皆さんにそっくりです。

小佐古さんは「たとえば」ってことで代表事例を挙げているけれど、たとえばなんて出し惜しみしないで、もう全部洗いだしていただきたい。国会に呼んでぜーんぶ告発してもらおうよ。

特に僕が気になっていたのは「いつまで非常時なんだよ!」ということで、その点で「2、3日あるいはせいぜい1、2週間ぐらい」と提示してもらったのは非常にナイス。今のままじゃ、2年後も非常時とか言い出しかねないからね。言葉は定義が重要。そこをなぁなぁにしないのが良い官僚なんだけれど、「政治主導に見えるようにしたい」菅内閣はそういうセンスがないからね。

それで、菅直人君のコメント。

「場当たり的ではない」=辞任の小佐古氏に反論―菅首相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110430-00000040-jij-pol

さて、「場当たり的」という言葉の定義から始めましょうか(笑)。

#でも、その前に小学校だけはなんとかした方が良い。

この記事へのトラックバックURL